なんくるのひとりごと

日々の想いを言葉にしてみたい

朝の風景

2013-08-27 16:03:56 | 日記
ジリジリと朝から陽射しが強い。園庭では日除けネットの下やガジマルの木陰で園児たちが遊ぶ。いつもの光景。
木登りをしているのはゆり組の女の子。
男の子達はといえば、ままごとに興じている四人組を見つけた。

私は近寄り聞いた。「さてさて君たち木登りはできるかな」と。ところが聞かぬふりを決め込む四人。
どうも苦手な顔つきである。
そこで、
「木登りの時間ですよ~」と、やや強引に誘った。

「いやだよ」「嫌いだから木登りは・・・」「怖いもん」それぞれに木登りはイヤだの言葉である。
「いやなんだ」「でもねー、できないから頑張るだよ。何度もやれば怖い気持ちがなくなるよ~」と
わたしは半ば強引にガジマルへと流れをつくった。

「やって見よう」と「やってみよう」もう一度プッシュ。
あさひ君が「いいよーと乗ってきた。
レオも「わかった」と走ってガジマルの方へ。

ところが、こうくんは本当に困ったような表情だ。
でも何とか木の下まではやってきた。「こう怖い?」とわたし。こう君答えず靴を脱ぐ。
こわばった顔のままで一番低い枝までは登った。てっぺんから声がするので見上げていたら、こう君がもう降りてきた。
その表情が硬い。「どうした?やっぱり怖かった?」と、声をかけたが逃げるように
ガジマルを後にした。そして鉄棒の方へ。
「ねーこうくんどうしたんだろう」と誰にともいうと「こうは上まで登れないって」と、じょう君が代弁。

見ればこう君、鉄棒に背中を向けて空を仰いだり俯いたり。
何か自分の心の中で葛藤と闘っている様子が見える。
4才なりにプライドもあるのだろうか。
「もっと高い枝まで登りたい」「でも怖い」
きっとそのような思いが交差しているのかもしれない。

私はこう君のそばに行き手をにぎった。
その瞬間、彼は我慢の糸がとぎれたようにしゃくりあげて泣き出した。
「大丈夫泣かないでいいんだよー」「登れる所まで頑張ったんだからこう君、「できるところまではやったんだからねー」
「それで良いんだよ~」「怖いのによく頑張ったね~」

「でもさ、もう一回挑戦してみたら?そしたらさ、だんだん怖くなくなるんだよ」「みんな最初は怖かったとおもうよー」

こう君は私の手を握り返しながらガジマルに近づいた。
木の上から担任が名前を呼んだ。「先生がいるから大丈夫。登っておいで」

しゃくりあげながらも、かかんに挑戦するこう君。
気の上からじょう君がアドバイスを送る。
それを受けて頷きながら掴みやすい小枝や足場を確保。
さゆちゃんからのエール。
「うんとさ、さゆもさー初めは怖かったよ」と木登り得意なさゆの゛ことばに勇気百倍。
「じょう君もはじめは怖かったんだよねー」と担任も助け船。

一つ一つの言葉を胸に刻みながら、初めての高さ、二段目の枝に腰を下ろすこう君。が、私を見た。
私はやったねと。

さて、木登りは降りるのがまた大変なことでして・・・。
技が必要なのだ。目では見えないので、足で気の肌をまさぐり足場を確保しなければならないからだ。
「そうそう、この枝に足を乗せて、体重をかける。安定したら前進を乗せて降りる~。
的確な声かけを受けながら、登っては降りる。降りては登る。
何度か繰り返した。
誉められて泣き顔はもう消えていた。

「どう?まだ怖い?」と聞いたら、素直に「うん」と答る。

「さっきよりは怖くない?」と聞いた。
「うん」と答えながら、少し誇らしい顔を見せてくれた。

まだまだ楽しい!にはほど遠い気はするが、泣くほどの怖さからは解放されたらしい。
「今日はこれで終わりにしようか?」と、いい終わらないうちに「うん」と首を縦に振り友達の和の中へと消えた。

また明日も誘って見よう。
3日も繰り返せば誘われなくても木登り好きになれるかも。

こう君よく頑張ったね。他の友達も優しかったね。ありがとう。さぬも励ましてくれてありがとう。