国王のスピーチが終わると、
王女のお付きが呼びに来たので、
彼女との話しはそれまでで終わった
その後の事を思うと、あっけない初対面であった
そして、二週間ほど経ったので、
学業が気になり「帰りたい」とモハメッドに言うと
「私も帰って、卒業できるように頑張りたい」
との事で、帰国する事になった
再び、プライベートジェット機に警護人を詰め込んで
羽田に戻った
少し冷たい初秋の雨がしとしと降っていた
父を下宿まで送った車は、その足でモハメッドを大使館に連れて行った
「今度は大使館外には住まない」というのが、国王との約束であった
これで一段落で、モハメッドとは疎遠になるな、と思った父の予想通り
中間試験も有った事も影響して、その後しばらくはお互いに音信が無かった
試験も終わり、学園祭が来た
友人たちとブラブラ見て歩いていると
また、警護人の一人が近付いて来て
「王子が会いたがっています、すみませんが、そこまでお願いします」
と恐縮して言った
最初の時とは違い、父も今では、
王子のみならず国王の信頼を得た客人として、処遇されていると感じた
モハメッドは微笑んで「やあ、しばらくですね」と
車の中から声を掛けた
「ちょっとしたことが有って、外を自由に歩く事が許されません」
と申し訳なさそうで悲しそうに言った
「君の下宿に行っても良いですか?」
「もちろん、ノー・プロブレム」
と答えて、同乗して向かった
(続く)