「弁天池」が見下ろせるところまで来て
「わぁー、綺麗!」とエミ王女が叫んで、ぐるっと見回そうと左を見ると
10メーターほど先に男が一人立って、こちらを見ていた
「健一!」と小声で言って、後ろを振り返った
「すわっ」と二三メーター駆け上がって、エミの視線の方向を見た
「お前、吉雄じゃないのか?」と健一は叫んだ
「おお、そうだっ」と相手は答えた
「お前、大阪じゃなかったのか?」
「うん、ちょっと帰って来たっ」
「そうか、しばらくだな」
「おおっ」
「二三日、家にいるから、遊びに来いよ」
「おおっ、もしかしたらなっ」
と、いうことでその場は別れた
家に戻ってから、その話しを母親の真佐にすると
「何か、大阪での事業が失敗して、大きな借金が出来て、逃げ回っているらしい、と聞いているよ」との事だった
ともあれ、弁天池で清々しい風景を暫く眺めていると
「遅くなりました、済みません!」と言いながら、ちよが女警護人を連れて戻って来た
「シンは大丈夫ですか?」
「はい、大事には到っていません」
というらしいヤリトリが二人の間で自国語で交わされた
このピクニックの出来事は後で尾を引く事になる…
(続く)