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思いつくままに…

田舎暮し(3)

2012年12月29日 | どうして?

「弁天池」が見下ろせるところまで来て

「わぁー、綺麗!」とエミ王女が叫んで、ぐるっと見回そうと左を見ると

10メーターほど先に男が一人立って、こちらを見ていた

「健一!」と小声で言って、後ろを振り返った

「すわっ」と二三メーター駆け上がって、エミの視線の方向を見た

「お前、吉雄じゃないのか?」と健一は叫んだ

「おお、そうだっ」と相手は答えた

「お前、大阪じゃなかったのか?」

「うん、ちょっと帰って来たっ」

「そうか、しばらくだな」

「おおっ」

「二三日、家にいるから、遊びに来いよ」

「おおっ、もしかしたらなっ」

と、いうことでその場は別れた


家に戻ってから、その話しを母親の真佐にすると

「何か、大阪での事業が失敗して、大きな借金が出来て、逃げ回っているらしい、と聞いているよ」との事だった


ともあれ、弁天池で清々しい風景を暫く眺めていると

「遅くなりました、済みません!」と言いながら、ちよが女警護人を連れて戻って来た

「シンは大丈夫ですか?」

「はい、大事には到っていません」

というらしいヤリトリが二人の間で自国語で交わされた


このピクニックの出来事は後で尾を引く事になる…

(続く)
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「かすみの間」

2012年12月26日 | 感激しました

「高半」の玄関前で、

中に入って見たい…が、と逡巡していると

宿の人らしい人が車から降りて来たので、聞くと「有料で見れます」との事で、フロントで五百円を払って「資料館」に入った

「雪国」を書いた「かすみの間」が保存されていた

池部良/岸恵子が主演した「雪国」がロケされたとの事で、先日偶々見た映画をもう一度見たくなった

と、思ったら、同じフロアーで夕方から二回ビデオ上映されていた、行き届いた事だ

「駒子」のモデルとなった芸者の写真やエピソードも見た

「雪国」関連の資料だけではなく、夥しい数の書籍が開架されていた

一週間ほど泊まっても飽きない心配りだ

入場を誘う掲示は無かったが敢えて聞いてみて良かった、寒い雪の中を30-40分歩いて来た甲斐が有った

帰りに礼を言って「今度は泊まりに来ます」と言うと

「是非どうぞ!」と送り出された

本当に、ゆっくりと泊まりに来よう…
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田舎暮し(2)

2012年12月23日 | 反省します

秋晴れの好天に誘われて、エミ王女が「ピクニックをしたい」と言い出した

警護人二人は勿論反対した

エミは健一に「ねえお願い!」と迫った

広い高橋本家とはいえ、やはり外に出たがる気持ちを察して、逆に健一からも警護人に頼んだ

仕様が無く、急遽弁当を作らせて、ちよを伴って裏山の頂上近くに在る「弁天池」に行く事になった


麓の畑の中の細い畦道を通った
エミはかって自分の母と歩いた時に見た同じ風景を思い出しているようであった

そこから見た裏山は紅葉の真っ盛りで美しかった

自国では見れないその風景に警護人二人も息をのんだ

そのまま楽しんでいられれば問題が無かったが…

三十分ほど歩いて緩やかな登り坂に掛かったところで、男警護人のシンが手に触った笹を何気なく引きちぎったら、二三匹のハチが飛んだ
うるさいと、その笹で追い払うと、さらに数匹が加わった
さらに払うと、今度は十匹ほどが加わった
いつの間にか、ブゥーンと唸り出したと思ったら
何か叫んでシンがのけ反った

その声に驚いて、ちよが近付いた
「クマンバチ!」だ、と叫んで
「放っといてはいけない!」と健一に訴えた

しかたなく、ちよが先導して村の医者に見せる事にした
女警護人がシンを支えて同行した

大した事ではなかろうと思ったエミははしゃいで坂道を上り続けた
「ちよがついているから大丈夫だろう」と思った健一もそれを追い掛けた…

(続く)
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「髷」

2012年12月18日 | そう思います

今は自分の髪で髷を結う人は力士以外は余りいない

これまでに見聞きしたところによると

男の髷はお侍と町人で先ず違ったようだ

侍は月代を綺麗に手入れして、周辺部を上に引き絞って元結いで留めていた
いざと言う時に、その月代の素肌に兜を置く
髪が有っては兜が滑って役に立たない
つまり、常に有事に備えている姿勢だった

その必要の無い立場の侍は月代の手入れをしなくても済んだ
そこで、むさ苦しくなる
いわゆる貧乏浪人だ

町人の男は上に引き絞らず、周りをゆるく落としていた
ちょん髷を少し曲げて粋ぶっていた

女の髷は更に複雑に分かれたようだ
武家と町人、既婚と未婚、使用人と下女、大人と子供、等によって異なった
そして、櫛、笄、簪、等の使用の有無、その質の上下の違いが有った

それでも、外見でその人の身分立場が判った
逆に言うと、そのように偽装する事が容易だった

今では、仕事着の違いは有るが、それ以外は自由だ
最もセンスの善し悪し、
質の上下による金持ち風かどうかの違いは有る

それにしても、時代劇が好きな自分は
江戸時代の、身分立場によって違う服装とヘアスタイルの違いは好きだ
最も、それが似合う役者が居ての事だが…
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田舎暮し

2012年12月15日 | ありがたい!

翌日、遅い朝食を取りながら、昨夜の大宴会の話しに花が咲いた

村の主立った人々がほとんど集まった宴会だった

結果として、友好都市契約が出来上がったようなものだった

お互いに歌も踊りも出し合い、共に歌って踊った

モハメッドも、エミも、警護の皆も、ここのところ続いて起きた不祥事を忘れた一時だった

そんなこんなを思い出しながら楽しい朝食をゆっくり取ってから、モハメッド一行は何度も礼を言って、再会を約して、帰京した

もう少し居たいというエミ王女の我がままを許して、警護の者二人とベンツを一台残した

そんな事も有って、私の父、健一も取り敢えず残った

父の父母は喜んだ、一挙に寂しくならずに済んだ


余り目立っては危ないと最初は思ったが、この小さな村では、一両日中に知らない者はいなくなった
それが返って、外来者に対する防備になった

村は通り抜けの出来ない行き止まりである為、通過する者はいないし、観光地でもないので目的を持たずに入り込む者もいない
一旦誰かが入ると、村人から高橋本家に通報が入る防備体制だ

加えて、二人の警護人がエミ王女に付いており、内一人は女警護人なので身の回りを近くで固めた

そして、警護以外の用事は高橋家の下女のちよが務めた


そんな体制が自然と出来て、数日過ぎた頃だった…


(続く)
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