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最近、夜眠れなくて・・・って精神的なものではないのですが。
2月の半ば頃からあまり働いていないから、体も疲れないし朝起きるのも遅いから
お布団に入って2秒で即死ってな感じで寝付くことがなくなった。
お布団の中でごろごろ、もんもんしているうちに、えいやって起き出して
クローゼットの奥の奥のほうに仕舞い込んでいた本をさぐりだしたら
けっこう忘れているもので、今回は辻仁成の文庫本を発見。
「冷静と情熱のあいだ」がけっこう気に入って、それから辻さんにしばらくはまったんだっけ。
それにしても、こちらの「オープンハウス」、読み始めてもどんなお話だったか
まったくよみがえってこない。
クローゼットの奥で埃をかぶっていたぐらいなので新鮮味を感じるわけもなく
ちょっと違和感を感じながらページをくくる。
以下、本書の簡単なまとめ。
『オープンハウス』『グッバイ ジェントルランド』『バチーダ ジフェレンチ』
の短編3部構成で、最初のふたつは続き物。
最初の2作の主人公トモノリは、20代でカード破産しエンリケという犬と共に
売れないモデル・ミツワの家に居候している。
エンリケは鳴き声を出すと電流が流れるという首輪をつけられていて
もはやワンワン吠えることもなく、吠えるという犬の特性を奪われたエンリケは
犬らしい忠実さも失ってしまった感じ。
トモノリはトモノリでカード破産して以来、何かが壊れてしまったようで、
これまで通り会社に勤めて社会と関わって生きていくということができない。
ミツワに拾われたのをいいことに、ミツワ家に居候し、自発的に家事一切と
エンリケの世話をしているが、居候という立場上とても弱く、
男らしさというものを失ってしまったよう。
トモノリとエンリケは共に「らしさ」を失うというもの悲しい共通点を持つが、
2作目の最後でエンリケはちょっと「犬らしさ」を取り戻すきっかけをつかむ。
そのきっかけというのは、トモノリが「男らしさ(人間らしさかな?)」を
失う元となったものというのが、またちょっと寂しい。
エンリケが「らしさ」を取り戻すのを遠目に見ているトモノリに
いつかこのような日は来るのだろうか。
3作目は結婚三年目にして離婚したユイコが主人公。離婚してからというもの
影の薄い元夫ユキタケのことばかり思い出しては、あれこれ思い悩むユイコ。
そのせいか結婚していたときは治まっていた持病のじんましんが、
まるで花が開くように体のあちこちに出て、ユイコを悩ませる。
体の痒みと心の疼きの連動が物語全体のリズムを作り出している感じ。
最後はユキタケのウジウジを完全に振り切り前進するユイコ。
がんばれっ!と夜中に声援を送りたくなった。