ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

グリム童話集

2010-10-09 23:17:32 | エッセイ
  白水社から出ている「ベストセレクション初版グリム童話集」(1998年)を読んだ。四巻本の全集から、「初版でしか読めない話など三十六話を選び、翻訳したもの」とのこと。
 河合隼雄か中沢新一あたりの本で、実は、かなり残酷、ということは読んでいたが、実際、そうだった。
 「灰かぶり」(シンデレラ)では、義理の姉たちは、王子様の持ってきた金の靴に足が合わないと、かかとを削ったり、足のつま先を切り取ったりして、靴の中を血だらけにする。灰かぶり自身は、もちろん、すっきりと靴がはけて、めでたしめでたしとなるのだが。「白雪姫」では、お妃は、継母ではなく実母だ。「青髭」という話では、「小さな金の鍵」の部屋の「壁にはぐるりと死んだ女の人がぶらさがっている」し。
 いやはや、童話というには残酷すぎる。実に簡単に人が死ぬ。(簡単に生き返りもするが。)
 現在、われわれが絵本とかディズニーのアニメなどで親しんだ世界とはかなり違うようだ。
 しかし、おどろおどろした心理描写はほとんどなく、淡々と書かれてあることもあり、読むほうも素直に淡々と読める。というよりも、全体を通してとても面白い。興味深く読み進めた。
 ドイツという国は不思議なところがあると常々思っている。イタリアの明るく華やかな歴史とか、フランスの明晰判明なシンプルさ、合理主義と違い、何か深く暗いロマンティックなものがある。ロマンティックといっても甘ったるいロマンスではない。どこか謎めいた魅力がある。どの話にもほとんど必ず出てくる深く暗い森。何日かかっても出てこられない森。しかし、どこか豊かな森。永遠の中世を引きずった国。
 単純明快で歴史のないアメリカとは対極にある国だ。
 もちろん、イタリア、フランスも行ってみたいが、ドイツもまた是非一度は訪れたい。単なる旅行というだけでなく、どこかに、怖いもの見たさのような興味もある。ヘンゼルとグレーテルが迷い込み、赤ずきんが通った森も、ほんの入り口だけ足を踏み入れてみたい。


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