ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

季節に桜が咲く

2016-04-11 13:25:03 | 2015年4月以降の詩

季節に桜が咲く

なにごとの不思議もない

列島の南から北まで

前線を成して順々に咲き始め

順々に満開となる

 

今年は暖かいらしく

4月の始めというべきうちに

ほころび始めたと言う間もなく

あっという間に咲いてしまった

高台の私の家からも

教会の丘や

病院の前や

公園の中や

川沿いの斜面に

ほぼ満開の桜が咲き乱れるさまが

手に取れるように

見える

 

だが今日は花冷えでもあり

ほんの少しの間

小雪がちらつく

でもこの庭は

南向きの斜面で日差しを享けて暖かい

暖かいけれどもときおり小雪がちらつく

干しだした洗濯物を急いで取り込み

縁側に掛け直し

 

花びらのように舞う雪

少しだけ

雪のように舞う花びらには時季が早く

花びらのように舞う雪

あっというまに消えて

暗い雲が流されて

明るい春の陽射しが復活する

もとのように明るい陽のさす春の庭

満開と成りつつある桜があちらこちらに見渡せる

 

少しだけ濃い桜色の桜があり

ほんとうに淡い桜色の桜があり

まだほとんどが膨らんだ蕾のままの桜もあり

だからすべてが単一の染井吉野ではないのだろうが

いつのまにかいっときに咲き出し咲き始め

 

明治になる前は

この桜の光景は

そんなにありふれた風景ではなかったに違いない

吉野の山里だとかほんとうに限られた場所での

特権的な眺望であったに違いない

いまは日本のどの場所でも

近代に形成された日本の風景が

あたかも古代からの日本の原風景のように存在してしまっている

多数を占める単一の品種が

(今ふうに言えば大量のクローンが)

列島の南から北まで

順々に順々に

蕾を膨らませ

花を咲かせ

花びらを散らしていく

 

これは確かに美しい日本の風景である

この街も確かに日本国の中の街である


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