ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

UTAFU(歌ふ) 霧笛133号から

2020-04-19 12:40:50 | 2015年4月以降の詩
木製の窓枠に置いた深い緑の硝子の
コルセットを着けた昔の貴婦人のスカートのような容れ物
真鍮の金具の吹き口
北向きの曇り硝子の窓の曇り空の明るさを受けて
腰のあたり絵画であれば白の絵具を塗る白く反射した部分があり
直接の光を受けない部分は緑色透明な縦の縞のむこうに
真鍮の金具の下半を透明けさせて
見せる
手にとって(口をつけるかのように)霧を吹き出す
湿った水分を吹き出し
(喉の奥を湿らすかのように)
歌ふ

   ※
すべてを無くしすべてを手に入れ
港の店で歌ふTango
   ※

東の道の果ての
カモメが舞う内湾のコーヒーショップ
古ぼけたジュークボックス
昔あったかのような光景
港を見下ろす独り掛けのソファの女が振り向きざま
男を見つめ
男は黙って髪に手を触れる

   ※
視線を拒まぬあなたのすべて
巻きスカートの継ぎ目の甘い闇……
   ※

深い緑の硝子の容器
真鍮の金具の吹き口
曇り硝子の窓の明るさを受けて
真鍮の金具の下半を透明けさせて
手にとって霧を吹き出し
髪を濡らす
女の
舌を濡らす
冬の曇り空の生気のない光を浴びて
ほとんど無声音で歌ふ
歌はないように歌ふ

   ※
視線を拒まぬあなたのすべて
巻きスカートの継ぎ目の甘い闇……
   ※
すべてを無くしすべてを手に入れ
失ってなお追い求める道化の夢……


※坂本龍一と大貫妙子の曲、詞の「Tango」と、同じく、ただしこちらは今井美樹が歌っている「ふたりの果て」に、窓辺に置かれたアンティークな霧吹きと気仙沼湾の内湾を絡ませて遊んでみた。こんな内湾は如何だろう?


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