ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

赤い薔薇 霧笛131号から

2019-10-22 23:08:21 | 2015年4月以降の詩

赤い薔薇は赤い

赤い薔薇が赤いのは自明のこと

そんなことを言っても何の意味もない

 

白い薔薇は白い

真夜中の薄明りのなかでも

白い薔薇は白い

密閉された灯りのない地下室でも

白い薔薇は白い

それもまた自明のこと

しかし

ひとつも灯りのない密室で

白い薔薇は白くは見えない

もっとも濃い緑の葉も茎ももちろん花も見えず

薔薇の存在そのものを知ることができない

手を伸ばした時に

それと知れず棘に触れ赤い血を流し

葉と花の柔らかな感触とともに

薔薇と知ることはある

 

痛みを伴う感覚

 

真夜中の薄明りのなかで

白い薔薇は白く

赤い薔薇は黒い

真っ黒な花が

記憶をたどって

真っ赤な花弁だった

と想い出すことはできる

ほんとうは赤いのだ

と語ることはできる

これは赤い薔薇だ

と伝えることはできる

 

チクリと刺す棘の感触を

想い出すことはできる


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