赤い薔薇は赤い
赤い薔薇が赤いのは自明のこと
そんなことを言っても何の意味もない
白い薔薇は白い
真夜中の薄明りのなかでも
白い薔薇は白い
密閉された灯りのない地下室でも
白い薔薇は白い
それもまた自明のこと
しかし
ひとつも灯りのない密室で
白い薔薇は白くは見えない
もっとも濃い緑の葉も茎ももちろん花も見えず
薔薇の存在そのものを知ることができない
手を伸ばした時に
それと知れず棘に触れ赤い血を流し
葉と花の柔らかな感触とともに
薔薇と知ることはある
痛みを伴う感覚
真夜中の薄明りのなかで
白い薔薇は白く
赤い薔薇は黒い
真っ黒な花が
記憶をたどって
真っ赤な花弁だった
と想い出すことはできる
ほんとうは赤いのだ
と語ることはできる
これは赤い薔薇だ
と伝えることはできる
チクリと刺す棘の感触を
想い出すことはできる
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます