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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

ネオニコの空中散布のない長野市側は昆虫の天国。千曲市側は死の山(妻女山里山通信)

2015-07-26 | アウトドア・ネイチャーフォト
 まず、千曲市の天城山(てしろやま)へ続く林道へ。昨年までは普通に昆虫が見られた林道ですが、今年は何もいません。正確に言うと、クロメマトイとヤブ蚊は異常に多いのです。足元にはたまにキマワリが見られる程度。スミナガシは2013年に姿を消し、今年はオオムラサキもいません。あんなに大量発生したカメムシさえいません。農薬散布後度々山に入っていますが、長野市の職員は度々見かけますが、千曲市の職員など一度も見たことがありません。その程度の低レベルの自治体なのでしょうか。散布後に生態系の調査はするべきでしょう。ちなみに妻女山山系の林道は、長野市側からでないと登れません。

 いつも昆虫がたくさん訪れていたコナラの樹液バーの経年変化の様子です。ほぼ同じ日時です。空中散布の薬剤の種類が、有機リン系からネオニコチノイド系に変わったのは、2012年からだと思うのですが、4年目にして昆虫がほぼ全滅しました。写真は全て同じコナラで、昨年までは写真のような昆虫が見られたのですが、今年は何もいません。その前には、まずゼフィルス(6~9月に羽化するシジミチョウの仲間)が姿を消しました。

 上のカットは、8月3日の同じ樹液バー。なんと、希少なチャイロスズメバチが20匹あまり集まっていました。車を降りるとすぐに威嚇されたので戻り、接近して車内から撮影。二匹ほどが車内の私を見つけてウィンドーガラスにへばりついたり体当たりをしたり。かなり攻撃的です。なぜ彼らだけがいるのか、どこから来たのか謎です。考えられるのは、最強のオオスズメバチがいなくなって、長野市側のチャイロスズメバチがやってきたということ。しかし、他に全く昆虫がいないというのは極めて異常な状態です。
 右は、長野市側に600mほど下りたところで発見したルリボシカミキリ。以前は左の樹液バー近くでも見られたのですが。2年前から見ていません。

 妻女山里山デザイン・プロジェクトの仲間でもある蝶の研究家のTさんによると、ネオニコの散布時期がゼフィルスにとっては最悪とのこと。6月中旬というとゼフが羽化して産卵を開始する時期とピッタリ重なるのです。特に羽化の早いウラゴマダラシジミ・オオミドリシジミ・アカシジミ・ウラナミアカシジミには、相当大きなダメージがあると。おそらくあと1~2年続ければ、妻女山山系のゼフはメデタク全滅するでしょうと言っています。Tさんは、「長野県は生物保護にうるさい! 特に採集行為には新聞含めて犯罪的な見方としていますが、生息地破壊による絶滅行為は大歓迎の様です。」と、皮肉交じりに言っていました。
 彼は千曲市生萱のハヤシミドリを調べてみたそうですが、それまで採りたくなくなるほど卵が多数あった場所で、今年はほとんど見つけられなかったということです。おそらく千曲市土口から生萱、倉科の山域では同じ状態になっていると考えられます。山裾には畑もたくさんあります。市では覆いをかけろと言っていますが、畑中を覆うなどできるはずもありません。ネオニコは水溶性で洗っても落ちません。そんなものを食べていたら、必ず病気になります。この山域の山菜やキノコももうだめでしょう。松茸もネオニコ散布をしたら、毒キノコです。食べられません。市は、一週間山に入るなと言っていますが、広報は千曲市のみ。長野市民は知りません。妻女山から鞍骨城跡は人気のハイキングコース。妻女山から天城山林道、唐崎城跡は、マウンテンバイクの人気コース。恐らく何人かが知らずに入ったことでしょう。
 経年変化で、ある種の昆虫が増減することはありますが、今年の写真のように全部が姿を消すというのは、極めて異常事態。散布したところだけでなく、していないはずの天城山林道のゼフィルスや甲虫も全滅状態です。千曲市側は死の山です。
千曲市による薬剤空中散布のお知らせ

 前回は、ネオニコ散布のない長野市茶臼山のレポを書きましたが、同じ妻女山山系で尾根を挟んで反対側のネオニコ散布のない長野市側はどうだろうと、炎天下の中歩いてみました。中腹から千曲川の流れ。中央遠くにそびえるのは中野市の高社山。手前にMウェーブとホワイトリング。右手前には松代SAが見えます。
 すぐに気づいたのは、セミの鳴き声の多さ。足元からは虫の音があちこちから。ミヤマフキバッタがあちこちから飛び出します。死の山になってしまった千曲市側とはえらい違いです。以前は、市境にある尾根上の陣場平には無数のミヤマフキバッタが見られたのですが、今年は何もいません。

 ヤマハギが咲き始めました。マルバハギも咲いていました。これらにもゼフが集まります。中はネムノキの残花。ほとんどの花は朽ちて咲き終わっていました。右はセリ科シシウド属のシラネセンキュウの小花。

 タケニグサの花粉を食べるシロテンハナムグリがたくさんいました。アオカナブンもたくさん飛び回っていました。中は、ヤマハギの葉につかまって交尾中のシオヤアブ。オスの腹端には白い毛の束があります。葉や小枝の上でハエやアブ、チョウなどを待ちかまえ、襲って体液を吸い取るアブ。時には自分より大きな昆虫も襲います。ゼフィルスの天敵のひとつ。これもたくさんいました。
 どこからか勢い良く飛んできて葉にぶら下がったのは、スズメガ科のトビイロスズメ。翅を広げると10センチ以上あります。ステルス戦闘機の様な形の翅ですが、高速で飛ぶことができる蛾です。幼虫の食草は、マメ科の植物で、ヤマフジ、クズ、ハギ、ハリエンジュなど。中国の山東省などでは食用にするそうです。頭を落として肉から内蔵を取って肉団子にするとか。どんな味なんでしょうね。

 ベッコウハゴロモ。セミやカメムシの仲間で、体長は10ミリほど。翅が透けていますが、仲間のスケバハゴロモは、もっと透けていて綺麗です。リンクは不思議な形をしたスケバハゴロモの幼虫。成虫はクズ、ヤマノイモ、ウツギ、ミカンなどの茎から汁を吸い、灯火にもやって来ます。
 中はシオカラトンボのオス。腹部第8節膨らみがないので未熟なオスでしょう。成熟すると青白い色になります。リンク先は、シオカラトンボの交尾
 右は、ヒヨドリバナに留まるミヤマフキバッタ(アオフキバッタ)。退化した小さな翅が特徴。旧盆の頃に、林道の砂地に腹部を差し込んで産卵する光景が見られます。

 オニグルミの実。秋に実を採って食べると美味しいのですが、割って実を取り出すのがけっこう面倒です。中は、ウリカエデの翼果(翅果)。翼のような形状なので、落果すると風に乗って遠くまで飛びます。右は、エビガライチゴの果実。酸味が強く美味しい。以前はこれが2m異常に繁茂して夏の林道を塞いでいたのですが、現在は、オオブタクサ、オオアレチノギク、ヨウシュヤマゴボウなどの帰化植物が大繁殖し、少なくなりました。それはそれで困ったものです。

 千曲市側では絶滅したゼフィルスが何頭も舞っていました。ツバメジジミのオス。かなり大きなゼフも飛んでいたのですが同定できませんでした(後でウラギンシジミと判明)。他にはコミスジやモンキチョウも。茶臼山で紹介したミナミヒメヒラタアブも。シロヨメナには、ミツバチ科のヤマトツヤハナバチも。オオムラサキのメスが、悠々と舞っていました。
 戻って椎茸のホダ木の点検に行くと、ルリボシカミキリのオスとメスがいました。メスの方は青の色が濃く、非常に綺麗です。日本を代表する甲虫です。

 妻女山駐車場から松代の城下町と背後にそびえる奇妙山。結局、ネオニコ散布をしていない長野市側は、昆虫も多く健全であることが分かりました。死んでしまった千曲市側とは全く異なる世界が、尾根の反対側にあるのです。いかにネオニコチノイド系農薬が恐ろしいものか、はっきりと分かります。
 以前は有機リン系の農薬を散布していたのですが、危険と分かったので、安全性の高いエコワン3フロアブル(ネオニコチノイド系)に替えたと行政はいうのです。しかし、このネオニコチノイド系農薬というのは、ベトナム戦争で使われたベトちゃんドクちゃんを生んだモンサントの枯れ葉剤と成分が同様のものです。蜂が全滅し発癌性があり(蜂の大量死と関係がある事を、金沢大学が突き止めました)、脳発達障害、流産、自閉症、注意欠陥多動性障害、うつ病、ぜんそく、アトピー性皮膚炎、化学物質過敏症、癌などを引き起こすといわれています。欧州では危険なために発売禁止になっている国もあるのですが、日本は野放しどころかホームセンターはもちろん、なんと100円ショップでも同タイプである神経毒のグリホサート系除草剤が売られているのです。製造元の住友化学会長が経団連会長だから? ホームセンターにあるラウンドアップや草退治は、まさにそれ。こんなものを空中散布するなど、狂気の沙汰です。
 危険極まりないネオニコチノイド系農薬については、ブログのひとつ前と2つ前の記事をご覧ください。

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◉必見!新農薬ネオニコチノイドが脅かすミツバチ・生態系・人間(要保存のPDFファイル)
【要保存】浸透性農薬「ネオニコチノイド系殺虫剤」が生態系と人体に与える影響について
ネオニコチノイド殺虫剤の特徴「神経障害症状(手指の震え、うつろな眼、注意力散漫、うつ病のような症状、
協調運動障害、記憶障害、暴力行動、自殺、心電図の異常)、それから、免疫症状(アレルギー症状の悪化、ヘルペスや他のウィルスに対する抵抗力の低下)など

ネオニコチノイド系農薬は、ラウンドアップだけではない。こんなにも色々な果樹や野菜で使用。あなたも毎日食べている
殺虫剤の一覧と代表的な商品名 :害虫だけに効いて、人間には無害などというのは嘘。日本の残留基準は極めて高い

汚染にさらされる農村』散布後、1週間過ぎごろ、保育園児や小学生の子どもが鼻血を出していたとか、大人でも強い頭痛があったなどの症状を訴える人がある

天敵を利用して、マツノマダラカミキリを駆除しようという研究長野県の例野鳥利用した松くい虫被害の防除。ネオニコ農毒の空中散布だけは、絶対に止めさせなければならない。これはあなたの近くの里山でも行われているかもしれない。あなたが使っているかもしれない殺虫剤やペットのノミ取りにも使われている。決して無縁のものではない。チェックを!

林野庁の、森林の放射能汚染に関するレポート。これは読んでおいた方がいい。杉はセシウムを溜めやすい
 基本的に高汚染された森林の除染は不可能だと分かる。

【追記】千曲市は、2016年の空中散布を中止することを決めたと信毎Webに載っていました。評価できる嬉しい決定ですが、ネオニコチノイド農薬は、非常に残留性が高く、水溶性で植物や地面に深く浸透し、その影響は何年も続きます。ほぼ絶滅してしまった十数種類いたゼフィルスを始め昆虫たちが復活するのには相当の年数がかかるものと思われます。赤松林への散布は土壌汚染を引き起こすため松茸菌を弱らせ、結果として松茸も出なくなり、共生関係にある赤松も弱ります。千曲市は中止ですが、坂城町は実施するという愚挙。村上義清も泣いていることでしょう。

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本の概要は、こちらの記事を御覧ください
 まだネオニコ散布がなく自然が豊かだった斎場山や鞍骨山のオオムラサキやスミナガシ、ルリボシカミキリなど、貴重な昆虫のマクロ写真も載っています。

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4 コメント

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経団連の会長 (tara)
2015-08-02 01:00:52
はじめまして、こんばんはー。FBでシェアされてたので拝読させていただきました。
農薬の空中散布の実態、悲しいものがありますね。経団連の会長は現在東レの会長さんが就任されているみたいです。商品は十分ふきゅうされてしまってますけど・・・
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ネオニコ (モリモリキッズ)
2015-08-03 08:43:36
全くです。空中散布は生存権、基本的人権の侵害です。さらに稲のカメムシ駆除や家庭の殺虫剤、猫のノミ取りなど、知らないうちに生活の中にあふれていて、みな知らずに使っているのは本当に恐ろしい事態だと思います。
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お願い (さいとうかずのり)
2016-08-27 22:18:56
松枯れ対策に農薬散布してる「四賀地区」に住むものです。当地で散布反対運動していますが、なかなか理解されません。千曲市も、今年から散布を中止しました。できれば、散布中止後の山の様子を調査いただけたらと思います。今後の散布中止の活動の参考になりそうな気がします。多くの「散布推進」の方々に見ていただきたいと思います。
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少し復活しました (モリモリキッズ)
2016-08-28 09:32:08
中止へ持ち込むポイントは二つあります。
まずネオニコ農薬がベトナム戦争の枯れ葉剤と同成分で猛毒であること。
もうひとつは、松枯れ病に全く効果がないこと。それどころか生態系を壊し、土壌汚染のため松茸菌が弱り松枯れ病を促進する恐れがあること。
実際、何年散布しても全く効果が出ていませんね。知り合いの大学の先生も、森林組合の人もあれは無駄と言い切っています。森林組合がやっているように伐採してビニールをかけて燻蒸が最もダメージが少なく効果的かもしれません。とにかく松茸業者や住民を味方につけることが肝要です。
今年中止の千曲市の山の状態は、ブログの6月以降の記事を御覧ください。以前ほどではありませんが、少し戻ってきました。
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