goo blog サービス終了のお知らせ 

心療内科 新(あらた)クリニックのブログ

最新の精神医学に関するトピックスやクリニックの情報などを紹介します

年2回の投与で治療可能な統合失調症治療薬が米国FDAに承認

2021年09月04日 | 抗精神病薬
9月1日付で、Johnson & Johnsonの開発した半年に1回の投与で統合失調症の治療が可能な続効性注射剤のInvega HafyeraがアメリカのFDAに認可されました。

治験の第3相試験では、同薬剤を投与された患者の93%が再発なしで1年間を過ごすことができています。

現在、日本では1ヶ月に1回投与のゼプリオンと3ヶ月に1回投与のゼプリオンTRI の使用が可能となっていますが、半年に1回の注射のみで統合失調症の維持療法が可能になれば、さらに統合失調症患者さんの維持治療に対する心理的・身体的負担は軽減され、QOLの向上が期待されます。

日本でも同薬剤の開発・発売が期待されます。

(院長 森)

抗精神病薬クロルプロマジンが新型コロナウイルス複製阻害

2020年12月11日 | 抗精神病薬
フランスのSainte Anne病院で、医療従事者の新型コロナウイルス感染の発症や重症化が精神科病棟の患者より多いことが見出されました。

同病院の研究者はこれまでの研究で抗ウイルス作用が示されている統合失調症薬クロルプロマジンの新型コロナウイルス複製阻害作用を細胞実験で確認し、COVID-19入院患者40人を募る予備試験(pilot study)が早速計画されています。

クロルプロマジンはSainte Anne病院にとって大変ゆかりのある薬で、1952年に同病院の研究者が見つけた世界初の統合失調症治療薬です。最近ではあまり使用される頻度の少ない薬剤ではありますが、このような恩恵があるとは意外でした。

同薬剤が新型コロナウイルスの治療や収束に役立つことを期待しております。

(院長 森)

ゼプリオンTRI発売

2020年11月19日 | 抗精神病薬
11月18日に、1回の注射で効果が3ヶ月間持続するという持効性抗精神病剤、ゼプリオンTRIが発売されました。これは統合失調症の治療薬の一つで、これまでは1ヶ月しか効果が持続せず、同薬剤を使用している患者さんは毎月、注射を受ける必要がありましたが、病状の安定している患者さんは、今後は3ヶ月に1回の注射のみでよくなります! 

統合失調症の患者さんは、お薬の内服をやめてしまうとほぼ全員、再発してしまうため、継続的な治療が必要となりますが、うっかり飲み忘れてしまい病状が悪化してしまう方も少なくないのが現状です。中には、毎日の内服が煩わしかったり、自分自身が病気である自覚が乏しく、段々、お薬を飲まなくなったりする患者さんもおられます。

そのような現状で、今回の3ヶ月に1回だけの注射製剤の登場は、患者さんにとって大きな恩恵になることと期待されます。海外ではすでに同注射剤は発売されており、アメリカでは今月の2日に、1回の注射で半年間も効果が持続するゼプリオンの6ヶ月製剤をJohnson & Johnson がFDAに承認申請しています。

他にも、認知機能の改善を目的とした統合失調症治療薬(GlyT1阻害剤;BI 425809)なども開発されつつあり、今後、統合失調症患者さんのさらなる症状の改善やQOLの向上が期待されます。

クロザリル通院医療機関の登録完了

2018年08月31日 | 抗精神病薬

本日より、やっと当院にてクロザリル(商品名;クロザピン)が処方できるようになりました!本年の3月から登録申請の準備を開始し、半年かかりましたが、様々な審査を経てやっと認可に至りました。長崎県内の精神科クリニックでクロザピンが処方できるのは、さんクリニックについで当院が2軒目となります。なお、九州全体でもクロザピンがクリニックで処方可能なのは、現時点ではさんクリニックと当院のみのようです。

クロザピンは統合失調症治療薬のひとつですが、現時点でどの他の薬剤よりも治療効果が断トツで高く、保険診療上、治療抵抗性統合失調症への適応が認められています。しかし、クロザピンの流通・処方は厳しく管理されている現状があります。特に日本は他国と比べて規制が厳しいようです。なぜかというと、クロザピンは非常に効果が高い反面、「無顆粒球症」という致命的な副作用が時に現れるからです。

無顆粒球症になると白血球(好中球)が著しく減少し、免疫力が低下することで様々な感染症に罹患してしまい、未治療のままだと死に至ります。国内の臨床試験での無顆粒球症の発現率は2.6%でした。ただし、クロザピンが2009年7月に日本で発売されて以来、無顆粒球症による死亡者は国内では今のところ1名も出ておりません。皆様、どうぞご安心ください。

つまり、クロザピンは安全性を万全に確保するために、クロザリル適正使用委員会という第三者委員会(医療専門家を含めた有識者から構成)により「クロザリル患者モニタリングサービス(CPMS)」が運用されているため、安全にクロザピンを使用することが可能となっております。

ただ、当院でクロザピンの処方が可能となったといえども、新規でクロザピンを処方する際には必ず精神科病院での入院が必要とされています。入院中にクロザピンを開始後、効果が認められ、忍容性に問題がなければ、一定の期間を経て外来通院が可能となります。なお、現在、長崎県内でクロザピンの処方が可能な精神科病院は8ヶ所あります。

これまでは、上記のいずれかの病院で当院の患者さんにクロザピンを導入してもらい、改善したとしても当院に戻ってくることができず、その病院に通院するしかありませんでした。これは、患者さんにとっては不便なことですので、患者さんが元の地域に戻ってこられるように、今回のクロザリル通院医療機関の申請に至った次第です。

日本ではあまりにもクロザピンの流通・処方の規制が厳しく、治療抵抗性統合失調症患者の数%しかクロザピンでの治療を受けることができていないという現状があります。この背景のひとつに、地域のクリニックでクロザピンが使えないという現状が挙げられるかと思います。クロザピンは適正な使用により安全に使用することが可能な薬剤ですので、より多くの難治性の統合失調症患者さんに導入され、ひとりでも多くの患者さんがクロザピンの恩恵を受けられる一助になれればと思っています。

 


レキサルティ

2018年07月22日 | 抗精神病薬

本年の4月18日に、大塚製薬から新しい統合失調症治療薬が発売されました。当初は「エビリファイの後継薬」と位置づけられていましたが、この3ヶ月で実際に使用してみると、エビリファイとは全く異なる薬剤であることが分かりました。

結論から言うと、レキサルティはこれまでに発売されてきた新規(非定型)抗精神病薬と比べて、少なくとも同等の効果を持ちながらも(ただしクロザピンは除く)、副作用がほとんどないという特筆すべき特徴を持つ薬剤です。

非定型抗精神病薬は1996年にリスパダールを皮切りに次々と開発され、従来の定型抗精神病薬と比較して副作用が少ないことを売りに発売されてきましたが、それでも実際には用量を増やすと手や体が震えたり、よだれが出たり、月経が不順になったり止まったり、ソワソワしたり(アカシジア)、眠気が強くでたり逆に眠れなくなったり、食欲が増進して体重が増えたり、口の中が乾いたり、便秘になったりするなど、副作用面で様々な問題を抱えておりました。

しかし、レキサルティは上記の副作用を含めて、ほとんど副作用の発現がありません。発売前の治験のデータでは、副作用の発現率はプラセボ(偽薬)と同等であったことが報告されておりましたが、最初は「本当かなぁ」とやや眉唾に思っていました。が、この3ヶ月で約30名の統合失調症の患者さんに使用してみたところ、効果はしっかりと発揮しつつも、副作用が出たのは3人のみでした。副作用と言っても重篤なものはなく、今のところ出現したものは頻尿と軽度のアカシジア、倦怠感の3つだけです。

最初、眉唾と疑ってしまい、大塚製薬には謝らないといけませんね、大変失礼いたしました。よって、現時点ではレキサルティは新規(非定型)抗精神病薬の完成形と言っても過言ではないかと思います。今後は、効果はクロザピンと同等以上、副作用の発現はレキサルティと同等以下の抗精神病薬の開発が待たれます。もしそのような薬剤が開発されたら、それは統合失調症の理想的な治療薬になることでしょう。


ビプレッソ発売

2017年11月28日 | 抗精神病薬

クエチアピンの徐放製剤である“ビプレッソ”が本年の10月27日に新発売されました。従来のクエチアピンは速放錠で半減期が短く、1日に2~3回の内服が必要でしたが、ビプレッソは1日1回、寝る前の投与のみとなります。

ビプレッソの適応症は、「双極性障害におけるうつ症状の改善」となります。クエチアピン速放錠の適応症は統合失調症のみでしたが、ビプレッソの発売により、双極性障害のうつ症状への治療オプションが増え、治療者としては大変有難いです。というのも、双極性障害のうつ症状の改善はなかなか難しく、これまでに本邦にて正式に双極性障害のうつ症状に適応を持っていた薬剤はジプレキサのみでした。

ただ、ジプレキサはある程度の効果が期待できる反面、長期的にみると食欲増進に伴う体重増加が少なからずあり得ますので、なかなか使いづらいというのが本音でした。クエチアピンにも体重増加の副作用はありはしますが、ジプレキサ程ではありません。

今後も双極性障害におけるうつ症状の治療薬のさらなる開発が待たれます。


シクレスト舌下錠

2016年06月25日 | 抗精神病薬

先月26日に日本で久々に統合失調症の新薬が発売されました。海外ではすでに2009年にFDA(米国食品医薬品局)が統合失調症と双極Ⅰ型障害の躁病・混合エピソードの治療薬として認可して、販売されています。

効果面での特徴は、他の抗精神病薬と比較して特に統合失調症の陰性症状を改善することが期待されています。2009年7月にシクレストの販売元のSchering-Plough社は、陰性症状が優勢の統合失調症患者の試験においてシクレストがオランザピン(商品名;ジプレキサ)を上回る陰性症状軽減作用を示したと報告しています。他にも、セロトニン2C受容体やセロトニン7受容体拮抗作用による気分の改善作用や認知機能の改善作用が期待されます。

副作用の面では、ジプレキサでみられるような食欲過多・体重増加が少なく、また糖代謝異常や脂質代謝異常、高プロラクチン血症、アカシジアなどの錐体外路症状が少ないというメリットがあります。添付文書上は1日2回内服するよう記載されていますが、シクレストはどちらかというと鎮静系の抗精神病薬であるため、朝から内服すると眠気のため日常生活に支障がでることがあります。また、抗精神病薬としては初の舌下錠ですが、内服後に苦みや口の中が痺れる感覚が生じることがあります。ただし、苦みや痺れは基本的には20分~30分でほとんど治まります。私も実薬を発売前に試しに1錠、寝る前に飲んでみましたが、眠気と口の中の苦み、痺れがでました。苦みと痺れはしばらくしてなくなりましたが、眠気はしばらく続いたので、そのまま朝まで眠りました。朝にはもう眠気は残っておらず、大丈夫でした。

当院では現在、十数例の患者さんにシクレストを処方していますが、朝に内服して眠気が強い方には、1日1回寝る前に内服するようお伝えしております。1日1回寝る前(10mg)内服と1日2回(1回5mg)内服の効果と副作用を調べた試験が実はあり(J Clin Psychiatry. July, 2015)、その結果は1日1回寝る前(10mg)内服の方が副作用による脱落が少なく、かつ効果もやや高いことが報告されています。

例えば、リスペリドン(商品名;リスパダール)も、添付文書上は1日2回内服と記載されていますが、このお薬もやはり眠気の副作用があり、今では1日1回寝る前に処方されることも多くなっております。「眠気」は不眠に対しては効果として働きますので、シクレストの内服方法を工夫することで、このお薬をうまく活用したいですね


エビリファイが双極性障害の躁状態に対する適応追加

2012年02月08日 | 抗精神病薬

今年の1月に抗精神病薬のエビリファイが、双極性障害(躁うつ病)における躁状態の改善に対して適応追加が承認されました。エビリファイは鎮静が少ないことが特徴的な抗精神病薬ですが、双極性障害の躁状態にも効果があるとのことです。主な副作用は不眠やアカシジア(ソワソワして、落ち着かなくなる)で、2割~3割にみられるようです。なので、投与初期には眠剤など、他の薬剤との併用が必要になるかもしれません。


ジプレキサ

2011年06月17日 | 抗精神病薬

統合失調症のお薬の一つに、ジプレキサというお薬があります。今年の6月で発売10周年となりました。私が研修医1年目の6月に新発売されたお薬です。当時、多剤が投与されていた治療抵抗性の統合失調症の患者さんにジプレキサを使用したところ、最終的にお薬をジプレキサ1剤にすることができ、約20年ぶりに自宅への退院が可能となった患者さんのことが思い出されます。


このように、ジプレキサは統合失調症に高い効果を期待できる薬剤の一つです。ただ、10人に2人くらいの割合で、食欲増進→体重増加がみられ、中止せざるをえないこともあります。