以前、本ブログでも紹介したことがありますが、うつ病に対する有望な新薬として期待されていた「rapastinel」が、アメリカの3つの第3相試験いずれにおいても主要項目を達成できず、失敗に終わった旨が本年3月に報告されました。
rapastinelは第2相試験では、1回の静脈注射後1日で速やかに抗うつ効果が得られることが示され、FDAより画期的治療薬(既存治療を超える大幅な改善を示す可能性が示される薬剤)にも指定されておりましたが、今回は残念な結果に終わりました。
同じく画期的治療薬として開発が進められ、つい先日FDAに承認されたエスケタミン点鼻薬「spravato」とは明暗が分かれました。
rapastinelもspravatoも、ともにNMDA受容体という部位に作用する点では類似していますが、やはりその先の細かな作用機序に違いがあるのでしょう。
近年、新たなアルツハイマー病治療候補薬が第3相試験でことごとく失敗しているように、治験は最後の最後まで分からないものだと改めて感じさせられました。やはり新薬の開発は難しく、一筋縄ではいかないものです。
なお、今回の治験の失敗で、rapastinelを開発していたAllergan社の今年の四半期決算では、なんと24億ドル超(約2600億円)の赤字(純損失)となったとのことです...。同社は他にもNMDA受容体に作用する新薬(NRX-1074やAGN-241751など)を開発中であり、今後の動向が注目されます。