心療内科 新(あらた)クリニックのブログ

最新の精神医学に関するトピックスやクリニックの情報などを紹介します

リチウム治療による認知症発症のリスク低下

2016年02月27日 | 気分安定薬

双極性障害の治療に用いられる気分安定薬の一つであるリチウムについて、本ブログでも過去にとりあげたことがありますが、今回、新たな知見が報告されました。

「双極性障害の治療でリチウムを1年間継続して内服した場合、リチウムを内服していなかった場合と比較して有意に認知症発症のリスクが低下した」とBR J PSYCHIATRY(2015)から発表されました。本研究では50歳以上の双極性障害患者41,931名が参加した大規模な調査で、信頼性の高い研究と言えそうです。

リチウムは日本うつ病学会が作成している双極性治療ガイドラインにおいて、うつ病エピソード、躁病エピソード、維持療法のいずれにおいても推奨される治療薬として挙げられております。また、リチウムには自殺予防効果もあることが示唆されており、古くからある薬剤ではありますが、当院では今現在もリチウムを双極性障害の第一選択薬の一つとして使用しております。ただし、副作用の一つに甲状腺への影響があり得ますので、元々、甲状腺疾患がある方には別のお薬で治療を開始する必要があります。


「睡眠薬を内服するとボケる?」という都市伝説

2016年02月03日 | 不眠症

2月3日にNEJM Journal Watchが、睡眠薬の内服と認知症発症に関する研究結果を発表しました。結論からお伝えすると、「睡眠薬を飲んでいても、それが原因でボケることはない」とのことです。ご安心ください。

3400人の高齢者を対象に7年間調査した結果、ベンゾジアゼピン系睡眠薬を継続的に内服していても、内服していない人々と比べて認知症になる確率は変わらないことが明らかにされました。以前から高齢の患者さんやそのご家族から「睡眠薬を飲んでいるとボケるんじゃないですか?」と尋ねられることが少なからずありましたが、そのような根拠はないため私は否定してきました。今回の調査でそれがきちんと裏付けられ、一安心です

ただし、睡眠薬の種類によっては一時的な健忘が起こったりふらついたりすることがあるため、最近ではなるべくそのような副作用の少ない非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬から処方するようにしております。