心療内科 新(あらた)クリニックのブログ

最新の精神医学に関するトピックスやクリニックの情報などを紹介します

第100回長崎精神神経科集談会

2013年11月25日 | ブログ

昨日、長崎市内で第100回長崎精神神経科集談会が開催されました。記念講演①では、札幌医大の神経精神科教授の齊藤 利和教授が「アルコールと脳科学」の演題でご講演されました。齊藤先生は、「アルコールは最悪の抗うつ薬」と話されておりました。どういうことかというと、「不安や抑うつは飲酒で一時的にはおさまるけれと、翌日には二日酔いという形で、さらに不安・抑うつは悪くなる」ということでした。さらには、うつ病の患者さんがせっかく抗うつ薬で治療していても、飲酒を続けていると抗うつ薬が効きにくくなる、とのことでした。また、アルコール依存症の約3割はうつ病を併発していると報告されていました。

私も普段からうつ病や不眠症の患者さんには、「飲酒はうつや不眠を悪くするので、飲酒は極力控えるように」と指導しております。お酒が好きな方には耳が痛いかもしれませんが、うつ病でない方も、飲みすぎにはくれぐれも注意してください。いつの間にかアルコール多飲が、アルコール依存症やうつ病につながる可能性があります


パニック障害について

2013年11月13日 | ブログ

パニック障害は、「パニック発作」、「予期不安」、「広場恐怖」などいろいろな症状のために、それまでの生活をスムーズに送るのが難しくなってしまう病気です。パニック障害は100人に1人はかかるといわれており、誰でもかかるおそれのある病気です。パニック障害は、気のせいでありません。

パニック障害では、思いがけない時に突然、動悸や息切れ、不安を伴うパニック発作が生じます。そしてパニック発作が繰り返されるうちに、「また発作が起こるのでは?」と発作が生じることに対する予期不安や、発作が生じる状況に対する恐怖を感じるようになり、毎日の生活に支障をきたすようになってしまいます。進行すると、うつ病・うつ状態になってしまうおそれもあります。このような不安や恐怖は「考えすぎ」や「心配性」など気持ちの持ち方や性格の問題と思われがちです。しかしそうではなく、パニック障害は脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリン)のバランスが崩れて生じることが分かっており、医学的な治療で回復が可能な疾患です

パニック発作は、パニック障害の中心となる症状です。突然、激しい不安と動悸や息切れ、過呼吸、窒息感、胸の痛み、吐気、ふらつき、めまい、発汗、体の震えなどのさまざまな体の症状が繰り返し現れます。発作が起こると、「このまま死んでしまうかもしれない」という不安に駆られることもありますが、実際にはパニック発作で死ぬことはなく、10分程度で激しい症状は治まります。パニック発作のきっかけとなる生活上の出来事としては、カフェインの摂取や寝不足、徹夜、風邪、夏の高温・多湿などがあります。

パニック発作を経験すると、以前に発作を経験した状況や場所を恐ろしく感じるようになってしまいます。これを「広場恐怖」と呼びます。広場恐怖を感じると、それらの状況を避けるようになってしまいますので、生活の活動範囲が狭くなり、毎日の生活が妨げられてしまいます。具体的には、公共の乗り物(バスや電車など)や高速道路の運転、美容室、歯科、会議、人混みなどを避けるようになっていきます。これを「回避行動」と呼びます。

治療は薬物治療と認知行動療法があります。薬物治療では、主に脳内のセロトニンを調整するお薬を使用します(SSRI)。認知行動療法とは、予期不安や広場恐怖を感じる状況に慣れて、回避行動を克服していく治療法です。お薬でパニック発作が治まってきたら、避けていた状況に徐々に直面して慣れていくことで予期不安や広場恐怖を改善させ、パニック障害を克服していきます。