病気やけがなどで障害が生じた際に、生活を支えるために支給される制度として、「障害年金」というものがあります。精神障害に関しては、統合失調症や双極性障害などの精神病、あるいは知的障害などで一般就労が困難な場合に、障害年金の支給対象となります。ただし、受給の前提条件として公的年金に加入しており、一定の保険料納付要件を満たしている必要があります。国民年金の場合は1級と2級があり、厚生年金と共済年金の場合は1級と2級に加え、3級があります。
当院では、上記の状態に該当する患者さんには私の方から適切な時期を見計らって、障害年金の申請をお勧めしております。
先日、障害年金を申請予定の患者さんで、「障害年金申請を社労士に依頼しました」という方がいらっしゃいました。私は思わず、「エッ?」と絶句してしまいました。噂には、「障害年金の申請を食い物にしている社会保険労務士がいる」と聞いたことはありましたが、実際に社労士に依頼した患者さんは、当院では初めてでした。契約内容を聞くと、「着手金が10,000円で、成功報酬は年金額の3か月分」とのこと。それを聞いて、今度は怒りが沸いてきました。例えば、もし障害年金2級が認定された場合、2級の支給月額は約65,000円(障害基礎年金の場合)ですので、3か月分と言えば195,000円です。なんと法外なことか。社労士に障害年金申請の依頼をしても、診断書を書くのは医師であり、社労士がすることと言えば申請に必要な書類を取り寄せたり、医師が作成した書類等を役所に提出する程度で、たいした労務ではありません。
私は、即刻、その患者さんに、その社労士との契約を解約するようアドバイスしました(すでに支払った着手金の10,000円は戻ってきませんが...)。障害年金の申請手続きは社労士に依頼しなくても、必ず患者さん本人のみで行うことが可能です。もし患者さんご本人で分からないことがあれば、当院ではあらゆる援助を行っております。もちろん、その援助は無料です。例えば、当院では私が直接、年金事務所に電話で問い合わせをしたり、それでも埒が明かない場合には、患者さんに同行して年金事務所に赴いたこともあります。そして、言うまでもなく成功報酬などを徴収することもありません。
本来ならば、障害年金申請に係る費用は医師の診断書作成料のみです。診断書作成料は各医療機関で異なりますが、当院では1枚6,000円で診断書の作成を行っております。要するに、通常であれば6,000円で済むことが、社労士に依頼するとなんと約20万円(2級が認定された場合)も掛かるということです。つまりは、6,000円の30倍以上の額が必要になる、ということです。障害年金を必要とする精神障害者は、一般就労が困難でお金がなくて経済的に困窮しているからこそ障害年金を申請するわけなのに、その患者さんから申請代行だけで20万円も取るなんで、とんでもないことです。これは、一種の“貧困ビジネス”と言っても過言ではないでしょう。
繰り返しになりますが、障害年金申請を社労士に依頼する必要は全くありません。当院では責任を持って、私が障害年金の申請を受理してもらえるまで無償で援助を行っております。皆様、くれぐれも気をつけて下さい。