心療内科 新(あらた)クリニックのブログ

最新の精神医学に関するトピックスやクリニックの情報などを紹介します

長崎市介護認定調査員「現任研修会」の講師

2014年02月20日 | ブログ

本日、長崎市からの依頼で、長崎市介護認定調査員対象の「現任研修会」の講義を行ってきました。内容は、“精神行動障害等の調査項目について”でした。高齢者の方が何らかの障害を持ち、介護認定を受ける際に、市から調査員が来て、「身体機能」や「生活機能」、「認知機能」、「精神・行動障害」などを調査します。「身体機能」や「生活機能」は比較的、画一的に評価できるのですが、「精神・行動障害」は急に起こったり日内変動があったりするため、評価に難渋することがあります。本日は主に、この「精神・行動障害」と「認知機能」についてお話させて頂きました。

皆さまお忙しい中、計約100名の方にご参加頂きました。講義の時間が2時間と割と長かったので、資料も多めに用意していきましたが、皆さま熱心にお聞き頂きました。微力ながら、お役に立てたら幸いです。ちなみに、長崎市の介護認定調査員の方は、皆、看護師資格をお持ちとのことでした。看護師不足が叫ばれている中、これはなかなかすごいことです。制度上は看護師資格以外の方でも介護認定調査員になれるのですが(理学療法士や社会福祉士、看護福祉士、精神保健福祉士等)、長崎市では、「調査中にもし調査対象者の具合が悪くなって、何らかの医療的ケアが必要となる場合」などを想定して、看護師のみを介護認定調査員として採用しているとのことでした。頼もしい限りです


サトラレ

2014年02月01日 | ブログ

皆さんは、「サトラレ」という漫画作品をご存知でしょうか?。「サトラレ」とは、あらゆる思考が思念波となって周囲に伝播してしまう症状を示す架空の病名で、主人公は生来、その「サトラレ」を罹っています。本人は、最初は「自分の考えが周囲に伝わっている」ことに気づいていないのですが、そのことを本人が知ると、全ての思考を周囲に知られる苦痛から精神崩壊をきたしてしまうため、サトラレ対策委員会という組織が「サトラレ本人に自分がサトラレだと知られないようにサトラレ達を保護している」、というのが物語の概要です。笑いあり涙ありの、心打たれるなかなか秀逸な作品です(ただ、「サトラレneo2」で掲載がやや中途半端な形で終わってしまったのは残念でしたが...)。

さて、実は実際に「自分の考えが周りに伝わっている」という症状を持つ病気があります。それが、精神科の代表疾患の一つである「統合失調症」です。この症状を“思考伝播(考想伝播)”と呼びます。これは統合失調症に特異的な症状で、“自我意識の障害(自己と他者を区別することの障害)”の一つです。自我意識の障害には他にも、

・考想察知(思考察知):自分の考えが他人に見抜かれてしまう

・考想奪取(思考奪取):自分の考えを抜き取られる

・思考吹入:他者に考えを吹き込まれる

があり、いずれも統合失調症に特異的な症状です。もし患者さんがこれらの症状を訴えた場合は、ほぼ間違いなく統合失調症と言っても過言ではありません。

さて、イギリスにBryan Charnley(1949年生まれ)という統合失調症を持つ画家がいましたが、彼は1991年から一連の自画像を描き始めました。その中で、“思考伝播”を描いた自画像があります。

Bryan1

Bryan2

 

これらの絵から、“自我意識の障害”がいかに本人とって苦しい症状であるかが伝わってきます。残念ながら、この自画像の連作は、彼の自殺で終わりました…