当院の臨床心理士が12月22日に東京で行われた対人関係療法の研修会(実践応用編)に参加してきました(講師;水島 広子先生)。今後も研鑽を積み、当院における心理療法をさらに充実させていきたいと思っております。
11月22日付で、パキシルが心的外傷後ストレス障害(PTSD)の効能・効果で厚生労働省より承認を取得しました。パキシルは脳内のセロトニンを調整する、SSRIという部類の薬の一種です。しかしながら、PTSDに対するSSRIの寛解率は38%~41%と報告されており、私の経験上もPTSDの中核症状である侵入性想起(フラッシュバック、悪夢)にはそれほど効果はないように感じています。一方、EMDRで治療を行った時の寛解率は77%~100%と報告されており、侵入性想起にも効果が高く、効果が現れるのも早いです。
また、SSRIでPTSD症状が治まったとしても、PTSDの薬物療法治療ガイドライン(日本トラウマティック・ストレス学会発案)では、再発防止のために維持療法として1年間、薬物治療を継続することが推奨されており、長期にわたる治療が必要となります。一方、EMDRで治療をおこなった場合は、個人差はありますが、1回~5回ほどのセッションでPTSDを完治させることが可能です。他の治療法としては、長期暴露療法という心理療法がありますが、これは週1回、計15回を要する治療法で、EMDRと同様に高い治療効果を有しています。ただし、長期暴露療法では毎日1~2時間のホームワークを要するのに対して、EMDRにはそのようなホームワークはなく、EMDRは長期暴露療法と比較して、1/3の期間で治療効果が得られるという利点があります。
以上のようなことより、国内外の様々なPTSD治療ガイドラインでは、治療の第一選択は薬物療法ではなく、EMDRや長期暴露療法が第一に推奨されています。当院ではPTSDの患者さんには、長期暴露用法よりも侵襲性の少ないEMDRをまず第一に行っております。PTSDにうつ病を併発している患者さんには、必要に応じてEMDRに補完的にSSRIを投与することはあります。