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心療内科 新(あらた)クリニックのブログ

最新の精神医学に関するトピックスやクリニックの情報などを紹介します

オレキシン受容体拮抗薬

2014年10月30日 | 不眠症

今年の11月末頃に、これまでになかった全く新しい作用機序の不眠症治療薬がいよいよ発売開始されます。これまでの睡眠薬は、一般的にはGABAA受容体作動薬(=ベンゾジザゼピン系睡眠薬)でした。GABAA受容体作動薬は脳全体の働きを抑制することで睡眠を促し、眠りにつかせるというものです。GABAA受容体作動薬の副作用としては、筋弛緩作用(体の力が抜ける)や健忘(夜中に起きて自分のしたことを覚えていない、など)、翌日への眠気の持越し、反跳性不眠(睡眠薬の内服を突然やめると、服用前より強い不眠が現れるようになること)などが起こることがあります。

今回発売されるのは、“オレキシン受容体拮抗薬”に分類される睡眠薬です。先日、本ブログで紹介したとおり、オレキシンは1998年に日本人グループが世界で初めて発見した脳内生理活性物質です。そして今回、世界で初めて、日本よりオレキシン受容体拮抗薬の発売が開始されます。その商品名の名は、ベルソムラです。なかなか聞きなれない、覚えづらいお薬名ですが、この名の由来は、“ベル”はフランス語で“美しい”、“ソム”は英語で“睡眠”という意味らしいです。つまり、“美しい睡眠”という意味です。そして、“ラ”ですが...、ラの由来は不明とのことでした(販売元の製薬会社のスタッフ談)。

作用機序ですが、従来のGABAA受容体作動薬とは全く異なり、ベルソムラはオレキシンが受容体に結合するのをブロックし、覚醒を抑制することで脳を覚醒状態から睡眠状態に移行させ、本来の睡眠をもたらします。

特徴としては、

・入眠作用および睡眠時間の持続効果の両方を有する

・筋弛緩作用がない

・記憶への影響がない(健忘がない)

・翌日への持ちこしがない

反跳性不眠がない

と言われています。睡眠薬としては、これまでの眠剤と比較すると理想的な睡眠薬と言えそうです。オレキシンは日本人が発見した物質ですし、まだ実際には患者さんには使ったことはないのでその効果は未知数ですが、期待を持って発売開始を待っているところです

 


ブログ引っ越しのお知らせ

2014年10月26日 | ブログ

本日より、これまで利用していたOCNブログからgooブログへ引っ越すことになりました。これは、OCNが11月30日にブログのサービスを終了することに伴うものです。そして、「今後はgooブログへの引っ越し、利用をお願いします」とのことで、gooブログを利用することになりました。

さて、gooブログですが、OCNブログと比べるとなにやらトップページがいそがしく、私としてはシンプルなOCNブログの方が好みでした...。しかし、そうはいっても致し方ないので、今後ともご愛読のほど、よろしくお願いいたします


オレキシン

2014年10月25日 | ブログ

皆さんは“オレキシン”という物質を知っていますか?

オレキシンとは、1998年に日本人研究グループ(柳沢正史博士ら)によって発見された、覚醒を調節する脳内生理活性物質です。以前、このブログでも取り上げたことのある“ナルコレプシー”という過眠症の原因は、このオレキシンの神経細胞の変性だということが後に判明しています。この物質の発見により、柳沢博士は現在、ノーベル賞受賞者候補に挙がっています

この発見に遡り、柳沢博士は1988年に“エンドセリン”という強力な血管収縮作用を有するペプチドを発見しています(ペプチドとは、決まった順番で様々なアミノ酸がつながってできた分子の系統群のことです)。この発見も画期的で、エンドセリンは薬理学の教科書にも載っており、医学部では必ずエンドセリンについて学びます。しかし、オレキシンは発見が比較的最近であったため、私が医学部生の時はまだ教科書には載っていませんでした(もちろん、今では載っていますよ)。

さて、今週の水曜(10月22日)に、柳沢博士の講演会が長崎市内で開催されました。演題は「睡眠・覚醒の謎に挑む」という壮大なタイトルで、内容も大変興味深いものでした。オレキシンや睡眠・覚醒に関する自身の研究などについてお話されました。睡眠は、当然、みな毎日とるものですが、実はまだまだその実体については分かっていないことが多いのです。人間は10日~2週間断眠すると、死んでしまうそうです

そして、

①なぜ眠らなければならないのか?

②眠気の実体とは何か?

ということは、現代の神経科学最大のブラックボックスの1つだと言っておりました。

実は、11月に“オレキシン受容体拮抗薬”という、これまでとは全く作用機序の異なる不眠症治療薬が発売開始される予定です。これについては、また後日ふれたいと思います。