心療内科 新(あらた)クリニックのブログ

最新の精神医学に関するトピックスやクリニックの情報などを紹介します

2015年の精神科領域における10大トピックス

2015年12月31日 | ブログ

12月28日に今年の精神科領域における10大トピックスをNEJM Journal Watchが発表しました。NEJM Journal Watch Online はMassachusetts Medical Society が1987年にスタートした医学ジャーナルウェブサイトで、各領域の主要な海外雑誌に発表された最新論文の中から最も重要な情報が選ばれ、その領域の第一線で活躍する医師チームにより簡潔に要点がまとめられ、論評されています。

今回選ばれた10大トピックスの一つに、統合失調症の発症リスクが高い若者(13~25歳)の精神病発症リスクがオメガ3脂肪酸の投与で下がることを示した調査結果が選ばれました。オメガ3脂肪酸については本ブログでも過去にとりあげたことがありますが、主に魚の油に含まれるEPAやDHAのことを“オメガ3脂肪酸”といいます。本研究では700mgのEPAと480mgのDHAを含んだ魚油を統合失調症の発症リスクが高い若者に毎日12週間投与したところ、その後7年間の追跡調査の結果、精神病の発症リスクが下がったことが報告されています。

実は魚油(フィッシュオイル)は中性脂肪を下げる作用が医学的に証明されており、医薬品としても発売されています。EPA製剤としては“エパデール”、EPA+DHA製剤としては“ロトリガ”という薬が処方薬として上市されています。また、魚油は悪玉コレステロール値(LDL-C)を下げ、善玉コレステロール値(HDL-C)を上げることも分かっており、これらの作用が動脈硬化を防ぎ、心筋梗塞や脳梗塞の予防が期待されます。

この他に、精神科領域においてはうつ病の改善や予防に効果的との報告があります。魚油はよほど大量摂取しない限りは出血のリスクが上昇することもなく、重篤な有害事象や副作用は報告されていません。このように、魚油はこころとからだ両面の健康増進に寄与することが期待されます

今年のブログは、これで終了とさせて頂きます。今年も拝読頂きまして、ありがとうございました。それでは、皆様どうぞ良い年をお迎えください

 

 


ワークショップ参加報告

2015年12月31日 | 専門外来

12月20日に、よこはま発達クリニックにて行われた「自閉症スペクトラムワークショップ(発展講座)」に私が参加してきました(講師;内山 登紀夫先生など)。内山先生は日本の自閉症臨床の第一人者のお一人で、よこはま発達クリニックの院長です。

今回は主に成人の自閉症スペクトラムに関して、その合併症や二次障害、鑑別診断、発達歴の問診、ビデオを見ながらの直接所見ついて学びました。今後も研鑽を積み、当院における専門外来をさらに充実させていきたいと思っております。


長崎県かかりつけ医と精神科医のうつ病ネットワーク第2回北部地区講演会

2015年12月02日 | ブログ

11月30日に表記の講演会が長崎市内で開催されました。僭越ながら、「うつ病の診断・治療」の演題名で私が特別講演の演者を務めさせて頂きました。本会はうつ病患者さんの治療について、かかりつけ医(内科などの身体科)の医師と専門の精神科医が連携してうつ病治療に取り組む目的で今年から始まった企画で、今回は第2回目の会合でした。

うつ病の患者さんは最初に様々な身体症状を呈することが多く、そのため大半の患者さんは実は最初に内科などの身体科を受診することがこれまでの調査で分かっております。また、うつ病の患者数は近年、ますます増加しており、うつ病治療のニーズは年々高まっております。そのため、最初に受診したかかりつけの内科などでうつ病の治療を開始してもらえるようになることが望まれます。そして、かかりつけ医でうつ病の治療を開始したものの、うつ病の症状が改善しなかったり、他の精神障害の可能性が疑われる場合などには、精神科医に紹介してもらうことが望まれます。

本講演会にはこのような主旨のもと市内の身体科の先生と精神科医が集まり、うつ病の理解を深めたり連携のタイミングなどを話し合ったりしました。

特別講演では、

・うつ病の特徴(だれでもかかり得る病気で、気の持ちようや性格の問題ではなく、治療可能な病気であること、など)

・うつ病の診断に有用なスクリーニングツール(PHQ-9, 躁病エピソード・スクリーニングテスト)の紹介

・うつ病治療の基本(休養・環境調整、薬物療法、精神療法の3つが中心)

・小精神療法の紹介

・うつ病治療薬の説明(SSRI・SNRI・NaSSAのいずれかが第一選択薬として推奨される)

・抗うつ薬の使い分け

・使用を控えた方が望ましい抗不安薬・睡眠導入剤の説明(デパス・ハルシオン;依存性が高く、禁断症状が生じたり、耐性がつき内服量が増えていくため)

・抗うつ薬変更のタイミング(効果がない場合は、治療開始2週間後に薬の変更を検討する)

・抗うつ薬の減量・中止のタイミング(初発の場合は、寛解後4~9カ月の継続治療が必要、再発した場合には2年間の維持療法が必要)

についてお話いたしました。ご多忙の中、多くの先生方にお集まり頂き、有意義な会合であったと思います。微力ながら、身体科の先生方と連携・協力しながら地域のうつ病治療のお役に立てればと思っております。