12月28日に今年の精神科領域における10大トピックスをNEJM Journal Watchが発表しました。NEJM Journal Watch Online はMassachusetts Medical Society が1987年にスタートした医学ジャーナルウェブサイトで、各領域の主要な海外雑誌に発表された最新論文の中から最も重要な情報が選ばれ、その領域の第一線で活躍する医師チームにより簡潔に要点がまとめられ、論評されています。
今回選ばれた10大トピックスの一つに、統合失調症の発症リスクが高い若者(13~25歳)の精神病発症リスクがオメガ3脂肪酸の投与で下がることを示した調査結果が選ばれました。オメガ3脂肪酸については本ブログでも過去にとりあげたことがありますが、主に魚の油に含まれるEPAやDHAのことを“オメガ3脂肪酸”といいます。本研究では700mgのEPAと480mgのDHAを含んだ魚油を統合失調症の発症リスクが高い若者に毎日12週間投与したところ、その後7年間の追跡調査の結果、精神病の発症リスクが下がったことが報告されています。
実は魚油(フィッシュオイル)は中性脂肪を下げる作用が医学的に証明されており、医薬品としても発売されています。EPA製剤としては“エパデール”、EPA+DHA製剤としては“ロトリガ”という薬が処方薬として上市されています。また、魚油は悪玉コレステロール値(LDL-C)を下げ、善玉コレステロール値(HDL-C)を上げることも分かっており、これらの作用が動脈硬化を防ぎ、心筋梗塞や脳梗塞の予防が期待されます。
この他に、精神科領域においてはうつ病の改善や予防に効果的との報告があります。魚油はよほど大量摂取しない限りは出血のリスクが上昇することもなく、重篤な有害事象や副作用は報告されていません。このように、魚油はこころとからだ両面の健康増進に寄与することが期待されます。
今年のブログは、これで終了とさせて頂きます。今年も拝読頂きまして、ありがとうございました。それでは、皆様どうぞ良い年をお迎えください。