心療内科 新(あらた)クリニックのブログ

最新の精神医学に関するトピックスやクリニックの情報などを紹介します

晴天の霹靂;テトラミド10mg錠の自主回収・出荷停止の衝撃!

2020年02月22日 | 抗うつ薬
製薬企業のMSDは、2月17日より四環系抗うつ薬のテトラミド錠10mgの自主回収を開始しました。理由は、安定性モニタリングで、2つの製造番号の製品について溶出性が承認規格に適合しないことが判明したためです。あわせて、出荷停止も行うことが決定されました。

溶出性の遅れにより、「吸収に遅れが生じ、効果発現が遅延する可能性を否定できない」とのことですが、効果の発現が多少遅延したとしても、患者さんに大きな不利益が生じるとは考えにくいです。現に、MSDも「重篤な健康被害の恐れはまずない」 と表明しており、今回の自主回収・出荷停止には疑問を感じざるを得ません。

というのも、過去に本ブログでも取り上げたことがあるように(https://blog.goo.ne.jp/mori8701/e/104482fd616fe986948f66beba4ac30f)、テトラミドは非常に優れた薬剤であり、当院の主力商品で、最も処方の多いお薬のひとつだからです。 

テトラミドには30mg錠もあり、こちらは特に問題はないため引き続き供給されるものの、10mg錠の出荷停止に伴い、出荷制限が行われます。そのため、テトラミドの今後の処方に大きな影響が出るのは必至で、非常に困っています...。

一番にご迷惑をかけてしまうのは現在、テトラミドで良い調子を保っている患者さんの皆様です。正直、テトラミドに代わるお薬はないため、どのような対策を立てるか、頭を抱えています😕

今回のMSDの責任は非常に重く、事の重大さを真摯に受け止め、一日も早くテトラミド10mg錠の出荷を再開してほしいです😟

インターネット・ゲーム依存の診断・治療等に関する研修 修了

2020年02月02日 | ブログ
1月30日~31日に久里浜医療センターにて開催されました「インターネット・ゲーム依存の診断・治療等に関する研修」に参加してきました。

久里浜医療センターは、日本でいち早く、2011年7月よりネット依存治療研究部門を開設し治療を開始しております。久里浜医療センターでは、医師の診察から始まり、心理士によるカウンセリング、薬物治療、ネット依存デイケア(集団認知行動療法を含む)、入院治療、ネット依存家族会、ネット依存家族ワークショップ、治療キャンプ(8泊9日, 集団認知行動療法を含む)といった、非常に充実した様々な治療プログラムを用意しており、日本で最先端のネットやスマホ、ゲーム依存に対する治療体制を備えておりました。

今回の2日間の研修では、上記について各担当者(医師、心理士、精神保健福祉士、看護師)から詳しくご講義頂き、集団認知行動療法についてはグループに分かれての実習もあり、実践的で大変実りのある研修会でした。

依存対象は年々変化しているとのことで、2019~2020年はフォートナイト、レインボー6、APEX、バンドリ、ストプリへの依存度が高くなってきており、中でも、フォートナイトが依存度が一番高く、特に深刻化しているとのことでした。課金の問題も深刻で、子供にもかかわらず、100万~200万円使ってしまうケースもあるとのことでした。

様々な対処法の説明がありましたが、フィルタリングや機能制限はあまり効果はなく、治療の基本方針は「本人が自分の意思で行動を変えていくように援助する」ことで、治療目標は「減ネット使用」とのことです。

ネット・ゲーム依存は、背景に発達障害(特にADHD)や精神障害が併存していることも少なくなく、そのような場合には薬物療法を併用する方が治療効果が高いとのことで、積極的な薬物治療の検討も推奨されていました。

ただ、ネット・ゲーム依存の治療には時間を要するとのことで、一喜一憂せずに、時間をかけて粘り強く関わっていく必要があるとのことでした。

外来治療でコントロールができない場合や、問題行動(暴れる、暴力を振るうなど)も含めた治療が必要な場合には、入院治療が有効とのことです。入院中はすべてのデジタル機器の使用を不可とし、デジタルデトックスを行う、とのことでした。

当院でも、ネットやゲーム依存の相談件数は確実に増えてきており、今後、当院でもネットやスマホ、ゲーム依存に対する治療体制を整えていきます。まずは当院でできる治療プログラムを作成し、今年の4月頃からネット・ゲーム依存の専門外来を開設できるよう、鋭意、準備を進めていきます。