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心療内科 新(あらた)クリニックのブログ

最新の精神医学に関するトピックスやクリニックの情報などを紹介します

テトラミドの出荷再開のお知らせ

2020年09月15日 | 抗うつ薬
本年の2月17日にテトラミド10mg錠が製薬企業のMSDにより自主回収され、その後さらには同薬剤の30mgも出荷が制限されておりました。そのため、処方薬の変更を余儀なくされた患者さんが多数いらっしゃり、多大なご迷惑をお掛けしている状態が続いておりました。

この度、9月18日よりテトラミド10mgの出荷の再開および30mgの出荷制限が解除となるお知らせをいただきました。つきましては、今後は再びテトラミドを通常通りに処方できるようになります。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

(院長 森)

FDAがエスケタミンをうつ病に伴う希死念慮/自殺企図の治療薬として承認

2020年08月25日 | 抗うつ薬
8月4日に米国FDAは、うつ病に伴う希死念慮/自殺企図の治療薬としてエスケタミン点鼻薬(SPRAVATO)を承認しました。これまでにうつ病の自殺関連症状に対して効果が立証された治療薬は存在しなかったため、これは非常に画期的なことであり、精神医学において大きな進歩と言えるでしょう。

なお、他の精神障害の治療薬ではリチウム(対象疾患;双極性障害)とクロザピン(対象疾患;統合失調症)に自殺予防効果があることが知られています。

日本でも自殺者が一人でも減るように、同薬剤の開発・承認が期待されます。

(院長 森)

晴天の霹靂;テトラミド10mg錠の自主回収・出荷停止の衝撃!

2020年02月22日 | 抗うつ薬
製薬企業のMSDは、2月17日より四環系抗うつ薬のテトラミド錠10mgの自主回収を開始しました。理由は、安定性モニタリングで、2つの製造番号の製品について溶出性が承認規格に適合しないことが判明したためです。あわせて、出荷停止も行うことが決定されました。

溶出性の遅れにより、「吸収に遅れが生じ、効果発現が遅延する可能性を否定できない」とのことですが、効果の発現が多少遅延したとしても、患者さんに大きな不利益が生じるとは考えにくいです。現に、MSDも「重篤な健康被害の恐れはまずない」 と表明しており、今回の自主回収・出荷停止には疑問を感じざるを得ません。

というのも、過去に本ブログでも取り上げたことがあるように(https://blog.goo.ne.jp/mori8701/e/104482fd616fe986948f66beba4ac30f)、テトラミドは非常に優れた薬剤であり、当院の主力商品で、最も処方の多いお薬のひとつだからです。 

テトラミドには30mg錠もあり、こちらは特に問題はないため引き続き供給されるものの、10mg錠の出荷停止に伴い、出荷制限が行われます。そのため、テトラミドの今後の処方に大きな影響が出るのは必至で、非常に困っています...。

一番にご迷惑をかけてしまうのは現在、テトラミドで良い調子を保っている患者さんの皆様です。正直、テトラミドに代わるお薬はないため、どのような対策を立てるか、頭を抱えています😕

今回のMSDの責任は非常に重く、事の重大さを真摯に受け止め、一日も早くテトラミド10mg錠の出荷を再開してほしいです😟

エスケタミン点鼻薬をFDAが承認!

2019年05月22日 | 抗うつ薬

以前にも本ブログで取り上げたことのある抗うつ薬エスケタミン(https://blog.goo.ne.jp/mori8701/s/%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3)が、米国の食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)にて本年の3月5日にうつ病治療薬として正式に承認されました!この抗うつ剤の開発・上市は、うつ病治療の歴史において数十年ぶりの大きな進歩と言えます。

というのも、本薬剤はこれまでの抗うつ薬の作用機序とは一線を画し、最短で2回の投与でうつ症状の著明な改善が得られるからです。しかも本薬剤の対象疾患は、他の抗うつ薬に反応しない「治療抵抗性うつ病」なのです!また、これまでの他の薬と比べて即効性がある点でも注目されています。本薬剤は点鼻薬で、既存の経口抗うつ薬と併用する形で投与されます。

アメリカでは長期試験も行われており、エスケタミンのうつ病再発予防効果も確認されています。

今後、日本でも本薬剤の開発・上市が大いに期待されます!


静注する産後うつ病薬ZULRESSOをFDAが承認

2019年03月31日 | 抗うつ薬

今月の19日に、産後うつ病の静脈注射治療薬ZULRESSO (brexanolone)が米国FDAにより承認されました。開発に成功したSage Therapeutics社は本年6月中の発売を見込んでいます。

産後うつ病は、最重度の場合には子供と無理心中してしまうこともあるため、本薬剤の開発成功はビッグニュースと言えます。

ただし、本薬剤の有害事象としてひどい眠気や突然の意識消失の恐れがあるため、同薬剤の点滴中はずっとパルスオキシメトリの使用(血中の酸素量測定)が必要とされます。また、点滴中は家族などに赤ちゃんを預ける必要があります。

ZULRESSOの投与は1度きりですが、ロイター通信によると1回の治療の定価は34,000ドルとのことです。

ZULRESSOの成分brexanoloneは人に生来備わるアロプレグナノロンと化学的に同一で、GABAA受容体からの電流を強め、神経に働きかけることが分かっています。

本邦でも承認が期待されますが、まだはっきりとした開発の動向は不詳です。分かり次第、本ブログに掲載したいと思っております。

 


抗うつ薬最新ランキング

2018年03月14日 | 抗うつ薬

今年の2月にLancetという権威のある医学雑誌に、抗うつ薬の効果と忍容性に関する論文が掲載されました。本論文では21種類の抗うつ薬が比較されて、順位づけされています。今回の研究では急性期のうつ病が対象疾患となっております。

効果の面での上位5位には、

1.アミトリプチロン(商品名;トリプタノール. 三環系抗うつ薬)

2.ミルタザピン(商品名;リフレックス/レメロン. NaSSA)

3.デュロキセチン(商品名;サインバルタ. SNRI)

4.ベンラファキシン(商品名;イフェクサーSR. SNRI)

5.パロキセチン(商品名;パキシル. SSRI)

の薬剤がランクインしておりました。

実は、1~4まではセロトニンとノルアドレナリンの両方に作用するお薬です。1のトリプタノールは確かに良く効くことで昔から有名ではありますが、古いタイプの抗うつ薬で、便秘や口渇、眠気など副作用も強いため、最近ではうつ病治療の第一選択薬にはなりにくいのが現状です。

なお、当院で使用頻度の高い抗うつ薬TOP3はミルタザピン、デュロキセチン、ベンラファキシンで、この3剤で現在使用中の全抗うつ薬の過半数を占めております。私自身も普段、うつ病の治療を行っていて、セロトニンとノルアドレナリンの両方に作用する抗うつ薬(SNRIやNaSSA)の方がセロトニンのみに作用する抗うつ薬(SSRI)よりもより効果が高いと実感しておりましたが、今回の報告はそれを裏付けてくれる結果となりました


不安障害に対する抗うつ薬での治療期間

2017年09月22日 | 抗うつ薬

BMJ(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル;イギリス医師会雑誌)の今月号に、不安障害に対する抗うつ薬での治療期間に関する論文が掲載されていました。SSRIやSNRIは様々な不安障害にも効果を有しますが、抗うつ薬にて改善後、少なくとも1年間は薬物治療を継続しないと再発率が有意に高まることが報告されています。また、抗うつ薬をやめるとより早く再発するという結果も示されています。今回の研究では5200人の患者が1年間に渡り、調査されています。

抗うつ薬を1年間続けたグループはその間の再発率は16%でしたが、偽薬のグループの再発率は36%で、再発率に2倍以上の差が認められました。なお、今回の調査対象となった不安障害は、全般性不安障害と社交不安障害、パニック障害、強迫性障害、PTSDでした。これらの不安障害に対しては、薬物療法だけでは効果は往々にして不十分ですので、認知行動療法やEMDRが推奨されます

 


児童・思春期の精神疾患への薬物治療の効果

2017年09月07日 | 抗うつ薬

今回もNEJM Journal Watchからの話題です。8月31日付の記事で、「児童・思春期の精神疾患に対するSSRIやSNRIでの治療効果は、統計学的にプラセボよりも幾分、上回る」と報じられました。これは、18歳以下の6800人を対象とし、メタ解析した結果です。対象疾患はうつ病と不安障害と強迫性障害の3つで、SSRIやSNRIは、うつ病に対してよりも不安障害に対してより効果的であったことも分かっております。

しかしながら、これは以前から指摘されていることではありますが、成人に比べると希死念慮などの重篤な副作用の出現頻度が高いことも同時に指摘されており、薬物治療を行う際にはリスクとベネフィットを十分に考慮した上での慎重な使用が望まれます。

論説委員は最後に、「児童・思春期のこの3疾患に対しては心理的介入も薬物療法も効果はほぼ同等であり、理想には及んでおらず、中でも特にうつ病は理想に及んでいない。よって、さらに効果的な治療法が明らかにされることが望まれる」と結んでおります。

確かに、児童・思春期のケースでは、家族背景や思春期心性などを十分に考慮した上での治療が必要となるため、心理療法にしても薬物療法にしても、様々な工夫や配慮が求められます。今後も研鑽を積み、少しでも皆様のお役に立てるよう努めて参りたいと思っております。


イフェクサーSR

2016年04月03日 | 抗うつ薬

昨年12月8日に、SNRIに分類される“イフェクサーSR”という抗うつ薬が本邦において上市されました。実は海外ではスイスで1993年に発売が開始されており、2008年の世界医薬品売上高ランキングでは抗うつ薬のなかでは一位でした。海外ではトップシェアを誇っていた抗うつ薬がやっと日本でも遅ればせながら使えるようになったわけですが、果たしてその効果とは…。

結論から言うと、これまでに日本で発売されている抗うつ薬のなかでは一番効果があり、かつ副作用も少なく、非常に優れた抗うつ薬と言えます。当院ではすでに80名近い患者さんに使用しておりますが、効果の発現が早く、抗うつ効果も高く、かつ副作用も少ないと三拍子揃った抗うつ薬といえます。SSRIやSNRIは一般的に嘔気・嘔吐による副作用での脱落が多いのですが、当院ではこれまでに嘔吐した方はおらず、嘔気による副作用の中止は一例しかありません。イフェクサーは徐放性カプセルとなっており、カプセルが溶けて少しずつ薬が血中に放出されるため、概して副作用が少ないと推定されます。

また、イフェクサーは不安に対する効果も高く、海外ではパニック障害や社交不安障害、全般性不安障害にも適応を取得しております。残念ながら日本における適応症は現時点ではうつ病のみですが、パニック障害や社交不安障害、全般性不安障害はしばしばうつ病と併発するため、そのような症例にはイフェクサーを用いることができます。

遅れてやってきた主役ですが、今後はうつ病治療における第一選択薬になっていくことが予想されます。

ただし、イフェクサーにもデメリットはあります。それは、薬価が高いということと、75mgのカプセルの大きさが比較的大きく、患者さんの中には「飲みにくい」という声があることです。


レクサプロ

2015年11月25日 | 抗うつ薬

SSRIのひとつであるレクサプロが、11月20日に社交不安障害に対する効能・効果が追加承認されました。これで、日本においては社交不安障害に適応を持つ薬剤はデプロメール/ルボックス、パキシルに続き、3剤目となりました。レクサプロは眠気等少なく、他の2剤と比較して忍容面で優れていますので、今後は社交不安障害の薬物治療の第一選択薬になり得る薬剤として期待しております

ただし、先日のブログの記事で述べたように、社交不安障害は薬物療法だけで完治させるのは困難ですので、薬物療法に加えて認知行動療法を組み合わせて治療を行うのが理想と言えるでしょう。