心療内科 新(あらた)クリニックのブログ

最新の精神医学に関するトピックスやクリニックの情報などを紹介します

小児・青年期への抗うつ薬投与について

2013年04月28日 | 抗うつ薬

厚生労働省が3月29日に、抗うつ薬の「効能・効果に関連する使用上の注意」の改訂を指示しました。内容としては、SSRI(ジェイゾロフト、デプロメール・ルボックス、レクサプロ)、SNRI(サインバルタ、トレドミン)、NaSSA(リフレックス・レメロン)の6剤に関して、「小児への投与は慎重に検討する」ということです。ただし、レクサプロ錠では12歳未満、他の5剤は18歳未満に対する注意事項となっております。SSRIの一つであるパキシルに関しては、18歳未満患者に対し今回と同様の対応をすでに取っておりましたので、今回の改訂対象には入っておりません。

この背景には、海外でのプラセボ対照臨床試験で有効性が確認できないとの結果が報告されたことを受けております。このような結果になった要因として、プラセボ(偽薬)効果が実薬との差がほとんど出ないほど高かったことがあげられます。ただし、6剤中レクサプロの1剤のみ、12歳~17歳で有効性を示すデータが報告されており、アメリカでは12~17歳のうつ病の治療薬として承認されています。

また、うつ病ではありませんが、強迫性障害の治療薬として、デプロメール・ルボックスは8歳以上の小児・青年期に対してアメリカ、ドイツ、イギリス、フランスにおいて適応を取得しています。

なお、日本うつ病学会と日本児童青年精神医学会が共同で発表した声明では、小児患者では「さまざまな重症度のものが含まれており、なかには心理的介入のみでは不十分なケースもあり、現に薬物療法の有効なケースも認められます。そのような場合は、薬物療法あるいは薬物療法と心理療法の併用を考慮すべきです」と指摘しております。同時に、SSRIなどの抗うつ薬を「積極的に選択するだけの合理的な根拠はありません。年齢により治療反応性が異なることを踏まえ、慎重に薬物療法を実施することが求めらます」と指摘しています。

つまり今回の改訂は、小児・青年期のうつ病治療に対して抗うつ薬の使用を否定するものではないけれど、まずは心理社会的支援や心理療法を実施し、うつ症状の程度に応じて、抗うつ薬を使用するかどうかを個々のケースに応じて慎重に検討する必要がある、ということでしょう。

実際に、私の臨床経験からも、18歳未満でもうつ症状が強い場合には抗うつ薬を使わざるを得ないケースがあり、実際に奏功することも少なからずあります。小児に限ったことではありませんが、薬剤を投与する際には、メリット(作用)とデメリット(副作用)を十分に検討することが求められます。

 


EMDRに対するWHO(2013)の見解

2013年04月18日 | 専門外来

世界保健機関(WHO)が、EMDRについて公式的にコメントを公表いたしました。

“Trauma-focused CBT and EMDR therapy are recommended for children, adolescents and adults with PTSD.  “Like CBT with a trauma focus, EMDR therapy aims to reduce subjective distress and strengthen adaptive cognitions related to the traumatic event. Unlike CBT with a trauma focus, EMDR therapy involves treatment that is conducted without detailed descriptions of the event, without direct challenging of beliefs, and without extended  exposure.”

主要な部分を訳すと、「EMDRは認知行動療法(CBT)と同様に、児童思春期、成人のPTSDの治療に推奨される。...CBTとは異なり、EMDRはトラウマ体験の詳細を語る必要はなく、直接的に認知を変容させたり、トラウマ体験に暴露させることなく治療が可能である」と記されています。つまり、CBTと同様の効果を持ちながらも、PTSD治療における患者の精神的負担はEMDRの方が少ないことが示唆されています

EMDRは、これまでにもすでにコクランライブラリーや世界各国のPTSD治療ガイドラインにおいて第一選択治療法のひとつとして推奨されてきましたが、今回、WHOも公式的にEMDRがPTSDの治療に推奨されると認めた形です。

当院では私と臨床心理士の二人が日本EMDR学会主催の公式トレーニングを受け、日本EMDR学会の治療者リストにも記載されております。PTSDは時にうつ病なども二次的に併発するため、時と場合に応じて薬物療法も並行して行う必要がありますが、EMDRは特に単回性のPTSDには高い治療効果を発揮します。


院長に就任いたしました

2013年04月01日 | プロフィール

4月1日付で、松本名誉院長の後任として、心療内科新クリニック院長に就任いたしました。これまで以上に責任感をひしひしと感じております。


今回4月から院外処方になったり、レセコンを他メーカーへ新しくしたりしたため、最初はバタバタして患者さんにご迷惑をおかけすることがあるかもしれません。大変申し訳ございませんが、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。


「新クリニックを受診してよかった」と思って頂けるよう、スタッフ一同努力いたしますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。