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建築を旅する

安井曾太郎展

2005-07-18 22:34:04 | Weblog
連休最終日、海の日。
上野から特急スーパーひたち号で一路水戸へ。
約1時間で到着。
夏本番。
目的は、茨城県立近代美術館の安井曾太郎展。

茨城県立近代美術館は、水戸市千波湖のほとりに位置し、素敵な立地。
横山大観など茨城ゆかりの作家の作品を収蔵。
吉村順三氏の設計であり、コルビジェ風のスロープや、印象的な石の扱い、デコな感じの装飾を含め、氏の代表作の一つである。
http://www.modernart.museum.ibk.ed.jp/

近代日本絵画の巨匠、安井曾太郎。
安井氏のこれだけ大規模な回顧展はあまり無かったので、少し遠いが足を伸ばした。
十代の頃の作品から、18歳で渡欧してからの作品の変遷、また葛藤の中から産まれた安井流の表現、そして絶筆の美しく明るい作品まで、時代を追って観ていける良い機会であった。
ともかくも、有名な「金蓉」や「外房風景」など、実物の絵をじっくり鑑賞した。
当然ながら、若くして独学で巧すぎる絵を描いており、非常に基本がしっかりしていて、なおかつ晩年、苦労して自分自身の少し崩したような表現手法を確立している。
年齢を重ねるごとにシンプルかつオリジナリティのある生き生きとした画風になっている。
肖像画を依頼される事が多かった様で、大学教授、政治家、学者等様々な人物像を独自の解釈で描いている。
実際に見える世界を画面としての美しさに振って歪めてみたり、ずらしてみたり。
デザイナー的な発想もあり興味深い。
動き回る孫をそのままに躍動的な筆遣いで描いた「孫」や、美しい女性を独自のタッチで描き新境地を開いた、名作「座像」「婦人像」などは印象的であった。
「外房風景」もなんとも惹かれる。波の泡立ちや、民家の屋根に当たる強いけれどまったりとした日の光や、コントラストのある黒い木のシルエット。ごっつい絵だと思った。
絶筆となる「秋の城山」。
安井が最後に見た物は、美しく透明感のある秋の城山であった。
抜ける様な空と暖かい日差し。絵に出てくる黄色やオレンジ、パープルの彩度は純粋に美しく、彼の境涯を物語るようであった。シーレのオレンジの様な、すごく美しい絵。
因に、この絵は年末助け合いのチャリティ-に出す予定で、風邪を引いた中、無理を押して野外で描き続けたため、無理がたたって、12月14日に亡くなってしまう。
セザンヌに影響を受け、明治、大正、昭和と激動を生き抜いた、安井氏。
美しい死に様であった。

写真は非常に魅力的な肖像画の傑作「玉蟲先生像」

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