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建築を旅する

耕木杜の完成見学会

2011-12-19 15:14:13 | Weblog
先日、大工をやっている友人に誘われて、茨城に出来た家のオープンハウスに行って来た。

耕木杜という、大工の阿保昭則さんが代表の会社が作った家。

阿保さんは、削ろう会でうす削り日本一に輝く、有名な名工。
阿保さんの本を随分前に読んで以来、ファンであったし、この人の影響で住まい塾に参加するようにもなった。
実は、本文中にピーターズントーが好きという行があり、なんか非常に共感したのが大きかったのかも知れない。

ともかく、腕のいい大工というだけではなく、いい家を設計される。


外から見たところ。まだ、植栽などは出来ておらず、モルタルのアプローチだけがある。

シンプルな切妻。エントランスはたたきが盛り上がった様に、一段上がっている。
樋は無く、直接雨だれが地面に落ちる仕様。雨だれは、足下の玉砂利に落ちる。
エントランスが一段上がっているのは、雨だれの跳ね返りを防ぐためかもしれない。

外装の仕上げは、リシン掻き落し。


エントランスは、開放的で、カウンターの様な場所があり、ショップの様。


一階のリビングダイニング。
一番、心地いい場所。
光がきれいにまわり、落ち着いて居れるあたたかな空間だ。

床材はカバ桜。けっこう動きのある木目の入った場所を使っている。
壁面と天井面は漆喰。
家具は、阿保さんのオリジナルらしく、楢材かな。

椅子も阿保さん作で、木の座面だけれども、長く座っても疲れない。
座面が通常の椅子よりも奥行きをもっていて、それが奏功しているのかもしれない。

全体的に、奇をてらわずに、シンプルで心地のいい空間。
そして、よく見ると、非常にレベルの高い施工精度があった。
腕のいい大工さんでないと、成り立たないだろうなという部分も多々在り。
特に、巾木を使わずに、床と壁面の木部がぴったり合っている箇所など、美しかった。
これは、下地が非常に平滑に、誤差無く作られていないと難しいとのことで、すごい。

一般的には、見切り材など、施工側の要望で出て来ているものも建築にはあり、それを必要かどうか見極めて、極力減らしているらしい。見切り材がないということは、精度が求められるということ。

当日、現地で阿保さんと色々とお話をした時にそのようなお話だった。
過剰なデザインや、設計側の押しつけの様な意匠は不要で、なるべく、普通にシンプルに、必要なものを必要なだけ作りながら、本質的なデザインを求めていく設計手法をとっているらしい。
大工さんの家だけれど、木部が意匠的には意外と少ないのも特徴で、モダンな雰囲気である。

設計する時には、『嫌な場所を作らない』ことを旨とされているとのこと。
ご自身が大工であり、隅々まで空間を知悉しているからそれを反映させるとの事だった。
実際、おざなりな場所は無く、重い空気の雰囲気の場所もなかった。なるほど。

それから、阿保さんが、『家は、人が生まれて最初に影響を受ける環境である』とお話されていたことが印象的だった。
赤ちゃんが、うまれて最初に目にし、手に触れて影響を受けつつ育つのが『家』であり、それがどういう素材なのか、どのような空間なのかが問題で、現在のハウスメーカーなどの家は、例えば、フローリングも樹脂で固めたカチカチのものであったり、印刷された木目をつかった偽物だったりすることが当たり前になっている。
赤ちゃんがハイハイをする素材が、そんないい加減な、何者かも判らないもので良いはずが無いと。

阿保さんは、木材には仕上げをしない。
無垢の素材をそのまま生かして、肌触りや呼吸を大切にしている。


楢材のテーブルは、仕上げをしないので、一年で1.5センチも拡縮するらしい。
それをいなす仕組みを考えて、構造に取り入れているので、壊れたりはしないとのこと。
木がきしむ音で、季節を感じると話されていた。

色々と、考えさせられる部分があり、自分も同じ方向性で設計に携わりたいと思った。


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