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建築を旅する

前川國男邸

2008-11-17 18:11:54 | Weblog
先日、小金井にある、東京江戸たてもの園に行ってきた。
ちょっと小雨まじりの寒い日であったけれど、これくらいが秋の風情でちょうどいい。
近頃ちょっと気候がおかしいから、寒いっていうのは嬉しくもある。

最近読んでいる、大工さんが書いた本があって、その中に参考にした家ということで、有名な前川國男の自邸があった。
今住んでいる吉祥寺近辺からすぐなのに、なぜかじっくり見ていなかったので、訪問することに。
江戸東京たてもの園は、江戸時代から昭和初期までの、27棟の復元建造物が建ち並んでおり、見応えがある。
小金井公園の中でもあり、都心であることを忘れる樹齢を経た大きな木々が取り囲む環境のいい場所である。


有名なファサードが表かと思っていたら、実はあれは裏側で、こちらが表。
裏庭は設計時は崖だったらしく、目線を気にせず大きな開口を作れたらしい。
なんだか武蔵野の田舎屋って風情であるが、モチーフは伊勢神宮であることで有名。5寸勾配の大屋根。


表札もあり、本当に自邸だ。

中に入ると、こちらも有名な非常にモダンで気持ちのいい吹き抜け空間となっている。

二階の床を支える木が微妙に斜めにしてある為、軽快な感じがする。
二階は半分が内部に、半分が外部に突き出た形になっていて、これも興味深い意匠。
白の漆喰の余白と木の焦茶のバランスがきれい。
家具や絵もいい。
当日は、イサムノグチのペンダントライトが修理中で裸電球がそのままお目見え。

案内の方によると、この建物の建設時に建築統制規制の為30坪制限を受けており、それで吹き抜けになったらしい。
レーモンドの民芸趣味とコルビジェの空間意識が融合していると言われると、まさにそんな感じがする。
ディテールは非常に丁寧に作ってあるが、いろいろと施行中に舵取りをした箇所もあるらしく、面白い。
その辺は、案内の方が詳しく説明して下さる。

この前川邸はガラス戸の内側に木戸があり、その内側に雪見障子が入っているという珍しい作り。
当時はガラスが高価なもので、しかも大きなガラスというのは珍しかったみたいで、雨戸を閉めた状態でも大きなガラスを外に向けて誇示できる様になっているとか。
障子の開き方も雪見障子の部分と、横引きの障子の部分が組合わさっていたり。


書斎は、シックな光で、シンプルながら知的な空間となっている。
置いてある電話やテレビがしびれます。
壁の版画は棟方志功作。


バストイレがすっごいおしゃれ。便座の蓋が黒い木っていうのがかっこいい。


それほど大きくない建物だけれど、これぞ巨匠の仕事という、存在感とオリジナリティ、そして美しさがある。
ほんと、こういう存在感のある建物が作れるっていうのは凄い。


戦時中の建物で、材料が無かった為なのか、メインの柱は電柱を使ったものである。
棟持柱的な柱がすっくと立つ、シンメトリーで美しいシルエット。
実物を見て、写真よりよいなと思った建築でした。