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建築を旅する

世界最古の木

2012-10-31 11:54:31 | Weblog
ブリッスルコーンパイン。
日本銘イガゴヨウマツ。
樹齢が4800年。古代エジプト時代から生きている樹木の王様だ。

ナショナルジオグラフィックを見てたら飛び出して来た。


人間文明の盛衰を眺めて何を思うのだろうか。


宇宙、自然、人間、神秘の世界だ。

宇宙の事を考えていると、ふと、建築はピラミッドぐらいしか対峙できないんじゃないかなと思った。

古代の人々は優れた感受性の持ち主だったに違いないな。



ヘニングラーセン

2012-10-25 11:32:18 | Weblog
今年の高松宮殿下記念世界文化賞は、デンマークの建築家、ヘニング・ラーセン。

ヘニング・ラーセン。
正直、それほど知っていた訳ではないのだけれど、作品はちらほら昔から見た事があった。

最近では、アーティストのオラファーエリアソンとの共作、レイキャビィークのホール『Harpa』が良くて、実は、オラファーエリアソンとして注目していた建築だった。


Harpa きらめくファサードが素敵。


昨日、恒例の講演会があって赤坂の鹿島へ。

今回はヘニングラーセン氏が高齢の為、体調不良で来日できず、代わりに40年来のパートナーのトロールズ・トロールゼン氏ら、数名のスタッフが来られていた。

第一部は、映画『ヘニング・ラーセン 光と空間の回廊』
第二部は、対談『ヘニング・ラーセン建築』を語る。 トロールズ・トロールゼン氏+馬場璋造氏

建築評論家の馬場璋造氏は毎年コーディネーターで入られている。
本当に、様々な場所でよくお会いし、お話をさせて頂く機会がある。素敵な方である。


ヘニング・ラーセンは1959年に事務所を開設し、いまや210名程のスタッフがいるらしい。
自分もそう思ったんだけど、デンマークの丹下健三的な存在とのこと。
アイスランド、シリア、サウジアラビアに支所があり、中近東の仕事が多いそうだ。

やはり若き日のサウジアラビア・デンマーク大使館や、サウジアラビアの外務省の仕事が繋がっているんだろう。


第一部の映画では、ヘニングラーセンが自身の作品を振り返りながら、建築論を語る、美しい映像の絵巻であった。
中東での仕事の光の扱いが難しかったと。北欧の光の考え方と真逆であるし、開口部には非常に時間をかけたそうだ。如何に光を効果的に遮断し、コントロールするか。
完成した作品は、穏やかに光が充満する、陰影の美しい石のたてものとなっていた。

昔は、アルネヤコブセンの事務所に在籍していたそうで、その後は、ヨーンウッツォンの事務所にもいた。
シドニーのオペラハウスで有名なヨーンウッツォンの事は非常に憧れがあったようで、特に誉め讃えていた。
最後に会った日の事を楽しそうに語る姿が印象的だった。


ヘニングラーセン自体は、穏やかな老人といった感じで、今は、床を白く塗って光の反射がきもちいい、お気に入りの自宅で猫に囲まれて生活している。

宇宙の存在、生き生きとした生命力を常に意識している。
開口部が重要、厚みでなく、その大きさ。
交流の場が建築には必要。
ガラスの魅力を感じる。時に写り込み、時に透けている不思議な存在であり、物質である。
光へ向け上昇するエレベーターを重要視している。

建築家は、批判精神、物事を整理をし、感受性を鋭敏に保つ事が重要だ。

などなど、多くの心に残る言葉を語っている。

最後に、コペンハーゲンのオペラハウスの事を話していた。

この物件のクライアントが芸術の領域に意見をし、自身のエゴの為に権力を行使する事に落胆しているとのことだった。
アメリエンボー宮殿に運河を挟んで対峙するこの建物は、地下5階、地上9階、総面積が41000平米。
500億円ともいわれる総工費で作られたビックプロジェクト。
そこには、1人の建築家ではとうてい抗えない、ハードパワーが渦巻いていたようだ。

形状は、ジャンヌーベルのルツェルン文化会議センターに非常によく似ている。

この写真がルツェルン文化会議センター。シルエットは酷似。

クライアントは、先に完成していた、それと同じ物を求めていたのかもしれない。
そこが、ヘニングラーセンを落胆させた部分なのだろう。

第二部のトロールズ・トロールゼン氏と馬場璋造氏のトークセッション。
異国でのコンペが多いが、気をつける事は何かという質問では、心をオープンに異国の文化をあらゆる手段をもって学んでいくということだった。常に0からのスタートで、毎回、新たにチャレンジすると。
実際にその国を歩き、実際に見て感じて知る。
直感的にも、科学的にも、人類学的にもあらゆる方向からアプローチする。
部外者であるからこそ、出来る事があり、開ける事があるそうだ。

オフィスはオープンオフィスで、移動式。意識的に、あまり固定的な場所で作業をしないようにしている。
これは、デンマークスタイルだそうだ。


ともかく、様々な事が感じられた二時間であった。


帰宅前に、一緒に行ったイタリア帰りの友人らとイタリアンを食す。
モツの蜂の巣部分のトマト煮が特に旨かった。





シープジャパン

2012-10-24 10:44:58 | Weblog
北海道ガーデンショーでヤギに色々と親しんだこともあり、『山羊の遊びの庭』の顛末を寄稿しませんか?と誘って頂いた。
十勝千年の森の山羊担当の方に声かけしてもらったのだけど、いつも彼が寄稿しているが、今回はお願いしたいとのこと。

その雑誌は、『シープジャパン』

かなり、マニアックな季刊誌で、社団法人 畜産技術協会というところが出している『ひつじ』の専門誌。
一般の書店で売られている物ではなく、専門家向けの年間購読のみの販売。
羊の交配から綿羊の使い方、はてはマトンの味噌焼きまで、幅広く羊に関わる記事が掲載されている。

最後に、ちょこっと『山羊コーナー』という紙面がある。そこに寄稿させてもらった。


作業工程などを順を追って書いていくと、山羊との激闘の日々が思い出されてきた。
いろいろあったなあ。

ともかく、忘れないうちに文章に出来たので、とてもいい機会を頂きました。ありがとうございました。


これが、『シープジャパン』だ。

北海道ガーデンショー閉幕

2012-10-10 15:51:01 | Weblog
北海道ガーデンショーが10月8日、閉幕した。

最後に観ておきたくて、会場である十勝千年の森へ。





いつ観ても美しく、秋の訪れを感じるダンピアソンのメドウガーデン。


とにかく、山羊の居る柵の中に、ロールベイルという山羊の餌で庭を作るという事がそもそも矛盾していて、面白いというところから始まった。
しかし、実際に作るとなると思った通り山羊の破壊力の前に一時は屈服しそうになった。

けれど、現地で様々トライし、色んな方々の協力を頂きながら、なんとかたどり着いた回答は、とても素敵で、ほれぼれするものだった。


10月8日、最終日。現地入りすると、最後はハロウィンのイベントであった。





山羊の遊びの庭は、風雨にも夏の暑さにも、なんといっても山羊と羊のアタックにも耐え、どうにかその姿を土俵際ぎりぎりで保ってくれた。



最終日を終え、山羊も人も居なくなった会場は、役目を終えたロールベイルが夕日に佇んでいた。


闘いを終えた戦士の様に凛々しくもあり、枯れたその姿は美しかった。


様々な方にお世話になった。
コンペ作家と運営との間に立って様々わがままを聞いてもらった、ガーデナーのTさん、何も知らない自分たちに山羊の生態を教えてくれた、山羊の担当のS氏、そして、なんと言っても一緒に木を切り、土を運び、泥まみれになって作業してくれた地元のボランティアのAさんには感謝してもしきれない。
本当に、Aさんが居なかったら完成もおぼつかなかっただろう。

あらためて、関わって頂いた全ての方、共に闘ったコンペ作家の皆さん、そして、十勝の自然と、やんちゃ坊主の山羊達に感謝!


それから、最後に、喧嘩ばっかりで色々迷惑もかけすんません、コンペの協同制作者のM君に最大の感謝を。




刻みの現場-2

2012-10-02 15:32:17 | Weblog
つづいて、道具類についての説明。

こちらは、非常に道具にこだわっていらっしゃる様子。
銘工の作った仕事道具を見せてもらう。


この両刃鋸は、川越の中屋滝次郎正義の銘らしい。
調べてみると、150年以上の歴史が在り、今は五代目の伊藤守さんが、今も手仕事で制作されている。
『鋸の”焼き入れ”は普通の刃物と違い、両面を焼き入れた後、水ではなく、油に戻すのだそうです。油に戻す方が鋸の本来の柔軟性が出せるためです。』
ということが書いてあった。
なるほど、すごそうだ。

当時(数十年前)で、この両刃鋸一本で、10万円以上したそうだ。

あと、もう一つの鋸は『ガガリ鋸』といって、木材を縦に切る鋸らしい。
youtubeに、ガガリ鋸で挽く様子がある。この柄の部分の角度が挽くのに良さそうだ。


鑿(のみ)。右端のは、長年使って研いでいるうちにチビけてきたとのこと。
そういう形の鑿かと思った。


突鑿 (つきのみ)両手で柄を握って突くように使う。


こちらは、玄翁。柄の部分はカマツカ(鎌柄)の木。
別名・ウシコロシ(牛殺し)と呼ばれる。バラ科の落葉低木。

「鎌柄」は、材を鎌の柄などに用いることから。
「牛殺し」は、この木の材がねばり強いため曲げて牛の鼻木とすることから。らしい。
因みに柄の部分は自分で作るそうだ。
柄だけを持ってみると、ずしりと重い。アイアンウッドみたいだ。相当密で硬そう。


ずらりと並んだ鉋たち。左から、坊主面鉋、底取鉋、二枚脇取鉋、際鉋、外丸鉋、面取鉋-自由角面。


使い込まれた平鉋の底を真っ平らに調整する方法。裏に挽粉なんかの粉をさっとつけて、板の上で撫でると、凹凸がわかりやすいらしい。そこを、立鉋で平にする。
前後に板を置いて横から歪みがないか目視で確認。目が一番正確だと話されていた。


最後に、おまけ。たまにこんな性格の曲がった木もあるって例。
こんな木に当たったら大変だな。

見学会終了後に、海鮮バーベキューをご馳走してもらった。
親方は、日本酒のエキスパートらしく、貴重なお酒も出してもらって。
自分は車で飲めなかったのが、非常に残念。
次回、芋掘りやるらしいから、その時は電車だなと思いつつ、薪で炊き上げた新潟の旨い米をかきこんだ。