ad

建築を旅する

越後妻有-3

2009-08-27 18:19:05 | Weblog
越後妻有 二日目。

宿泊は津南町。

前の日から、町中に見かけるひまわりのディスプレイ。
あちこちに画用紙なんかで手づくりしたひまわりが商店のガラス戸なんかに貼ってある。
で、聞いてみると、津南町ひまわり広場っていうのがちょうど見所で、一面ひまわり畑とのこと。

薄曇りの中、車を走らせると、広い広い畑の中にそれはあった。


アンダルシアのひまわりもこんな感じだろうか。曇ってんなあ。


ひまわり迷路を巡り、堪能したところで、一路、松之山エリアへ。



今回の目的の一つだった。

世界のボルタンスキー!


この学校の中でやってる。隣に体育館もあり、廃校だ。


この感じ、いいっすわ、非常に越後妻有。

初めは真っ暗で、目が慣れる迄はよく見えない。
鈍い電球の光が微妙にふらふらと揺れている。
生温い風に、香ばしい様な、藁の匂い。

ゴトゴトゴトゴトいってるのは、どうやら古い扇風機の音だ。


ここの体育館内だけは、あまりに暗くって、写真撮れず。ネットで拾った物だとこんな感じ。


長い渡り廊下。
遠くから、バイン、バイン、バインっと地響きの様な音がしている。

廊下の奥、階段を昇ると、奥の教室が、心拍音に合わせ明滅している。
まるで、人が居なくなった学校全体に、生命が宿っているよう。
非常に、生々しく、有機的で、濃密な空気が漂う。



電球に誘われ、更に進むと、また違った光景に出会う。




更に昇ると一転、美しく白い世界。





はあ、非常に感動的な世界であった。

これだけでも、来た甲斐があったよ。

久しぶりに最高のインスタレーション。





越後妻有-2

2009-08-21 17:46:06 | Weblog
イ・ジェヒョ 『0121-1110=109061』

丸太を組み合わせ、丸く削りだした様な造形。
丸太のカット部分のラインが奇麗に出ているが、その形状は意外な感じがする。





蔡國強 『ドラゴン現代美術館』

6年前に見たかったけれど、時間切れで見れなかった作品。
山林の中にある。美術館と言うけれど、登釜の様な感じ。
中には、前日までの大雨で水がたまっていた。


表現だと思うけれど、周りの植物が真っ黒になっていた。
炭化している感じに。登釜に火を入れたときのエネルギーを感じる。


レンガ組の竃入り口。



金九漢 『かささぎたちの家』

下山途中に、集落の中にある、不思議な造形の家。
これは、なんと、陶器の家らしく、家ごとすっぽり窯に覆われて、一ヶ月間焼いて制作したらしい。
すごい。


色んな動物がいた。これは亀。

ねころがり亀。


近くにあった、民家。
不思議なL字型の平面と思われる、茅葺きの家。
所々補修されてたり、改造されていて、興味深い。

いやされる風景。


越後妻有-1

2009-08-21 16:44:23 | Weblog
越後妻有アートトリエンナーレ。

3年に一度やってくる、世界最大級の国際アートフェスティバル。

越後妻有という、米どころ、棚田、田園風景からわき上がった様な、かなりレベルの高いエネルギッシュなフェスとなっている。
6年前に初めて行ったときもそう思ったけれど、豪雪地帯だからなのか、点在する家々や納屋なんかも、とてもインスピレーションを与えてくれるというか、不思議な存在感のある建物が多く、起伏の激しい棚田の風景も、なんかしらの舞台の様で、なかなかいい場所で開催しているなと感じる。

1991年のクリストのアンブレラ・プロジェクト、茨城で開催されたとき、まだ10代だったけれど、非常に感銘を受けたのを覚えている。田園風景の中に、青い大傘がぞろりと並ぶ感じは、ショッキングだった。内容は全然覚えていないけれど、クリストが学校に来て講演会があったので、参加した。越後妻有って、その系譜の様な感じだろうか。

越後妻有のアートも、不思議な調和と違和感が、より越後の輪郭をはっきりと見せてくれる様な気がした。

ともかく、夏場にやってくれるので、都会の熱波を離れ、非常に心地いい、古き良き夏休みを堪能できて素晴らしい。

以前はなかなかスケジュール的に回れなかった、津南エリアから回ってみた。


滝沢達史 やまもじプロジェクト。


冬場はスキー場となる山の中腹に、大きな『山』の文字を1万人の布で描くというもの。
一番上の麦わら屋根の小屋辺りで、布に墨なんかで文字や絵を描く。
それを、自身の好む適当な箇所に、連結、結び、完了する。
書き初め的に、『希望』『愛情』などと書かれたものや、結構、絵馬的なノリで、健康になれます様に、受験を成就しますように。こういうのは、人間、なぜか願いを書いてしまうもんだな。
当然、絵などを描いてあるのもあった。




下から見た『山』。この頃はまだ、山の下辺りはポチポチだったけど、今やしっかりと『山』に成っている模様。



本間純 『森』

地元住民から集めた約一万本の、使い古し、ちびた鉛筆を森に見立てて。
それにしても、一万という数字は、なんか意味があるのかな。


こういう納屋というか、小屋が随所にある越後妻有。
ドーム型は雪に都合がいいのだろうな。非常に目につくナイスな造形。

西雅秋 『Bed for the Cold』

ちょっと気づきにくいけれど、池の中に丸い輪っかが浮いている。微妙に風で動くらしい。


古民家プロジェクト

2009-08-11 10:57:36 | Weblog
以前から民芸、その集大成たる民家には興味があった。
日本の伝統建築というと、やはり、信仰の対象から発した宗教建築が体系立てて語られる。
それはそれで興味深いし、学んでもいるのだけれど、やはり古民家はその奥深さに興味がある。

いわゆる生活の場所であり、生き死にの場である民家、日本人の濃い血液が流れ通った土着の建築は、その風土から発したが故に、自然に美しい。
自然の風雨から身を守るにしては、あまりに脆弱と思える、『草』『木』『土』などを駆使し、100年以上の命を紡ぐ建築。
それはそれは、学びたいものでございます。


で、そんな風に思っていたら、先月あたりに新潟の古民家を移築するという、仕事を頂く事になった。

これは、あるキックボクシング協会の会長さんのゲストハウスになるのだけれど、古民家の良さを無くさずに、なるべくそのまま移築をしたいというもので、その設計のお手伝いをする形。


越後妻有アートトリエンナーレにも先日行ってきたのだけれど、非常に感銘を受ける民家が多かった。
民家は、本当に日本の気候に合っていて、夏場でも非常に涼しく、雨が降る日も、長い庇が程よい距離感を保ちつつ、景色や風を楽しむ事ができる。
実際、近頃の建築は、ほとんど庇が無いものも多く、雨の日に窓も開けられない。


とにかく、非常に学ぶべき物の多そうな古民家プロジェクト、楽しみ。


大地の芸術祭の古民家再生『名ヶ山写真館』にて、気持ちのいい風と田園風景。

軽井沢 聖パウロカトリック教会(旧聖ポール教会)

2009-08-10 15:47:32 | Weblog
軽井沢、聖パウロカトリック教会(旧聖ポール教会 1934-35)に訪問。
レーモンドが設計した東欧風教会建築。




外部は、スロバキア地方の教会の伝統をそのまま取り入れたものである。


個性的な鐘楼。


屋根はこけら葺きで棟飾りも東欧風。


このステンドグラス風のガラスは、ノエミ夫人作か。


コンクリートの駆体は、火山岩による「ラバコンクリート」の打ち放し。



三沢氏の本には、『この建物にはレーモンドの考えた構造の直截的表現、材料の正直な扱い、そして地域の大工技術を巧みにその時代の建物にあわせて引きあげ、指導していたという実績が見られる』とある。

レーモンドはこのとき、日光の物件でも依頼した大工を軽井沢に住まわせて、作業させている。
これは、レーモンドにとって貴重な体験で、『大工が家族と共々風呂桶を含めた生活用の家財の一切を大八車に積んで運び、現場で寝起きして作業をすることが珍しい事であった』また、『日本の建築工事が生活習慣、職人気質によって左右されることをこの経験から学んだ』と三沢氏の書籍にもある。
結果として、「聖ポール教会」もその大工たちにつくらせる事になった。

このとき、敬虔なカトリック信者であるレーモンド夫妻は、報酬を求めず、奉仕という形で仕事をした。
ノエミ婦人は、切り紙をガラスに貼り、ステンドガラスの代わりとし、石彫の代わりにセメントで聖ポール像を作った。
ジョージ・ナカシマも関わっており、チャンセル等のデザインをしている。

今回、入場できず、窓からのぞく程度だったが、内部の無骨な鋏状トラス(シザーズトラス)は荒々しくも美しい。
栗材を手斧のなぐり仕上げにしているらしく、レーモンドが現場で指導して平鉄の金物を使い、それをボルトで締めたものである。

三沢氏は結ぶ。
『いずれにしても東洋に東欧のスタイルを輸入し、入口部分やコンクリート打放しの手法では、レーモンド独特の工法を生み出して融合させている。ここからも単にスタイルの取り入れだけではなく、ヒントを得て翻案し、それを次の機会に洗練させて独自のものにしてしまうという姿勢がよくわかるのである。』


因に下の写真は、ネットでひろった、スロバキアの教会である。


聖ニコラス主教教会

聖フランシス・アシス教会

レーモンドの出身地チェコに近いスロバキアの建築。
レーモンドならずとも、引き込まれる素敵なバナキュラーデザインである。