宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

運用を終えた系外惑星探査衛星“ケプラー”が珍しい超新星爆発の初期段階を観測

2018年12月24日 | 宇宙 space
太陽系の外にある惑星を探査しているのが、NASAの系外惑星探査衛星“ケプラー”です。

その“ケプラー”が今回観測していたのは惑星ではなく、遠くの銀河で発生した超新星爆発。

でも、この超新星爆発は他の同タイプとは異なっていたんですねー
“ケプラー”がとらえていたのは、爆発直後から急増光するという変わった性質でした。


爆発後急速に明るくなったIa型超新星

今年の2月のこと、NASAの系外惑星探査衛星“ケプラー”が、かに座の方向約1億7000万光年彼方の渦巻銀河“UGC 4780”に出現した超新星“SN 2018oh”の光を検出しました。

この現象をとらえたのは、地上の望遠鏡と連携して天球上の同じ方向を同時観測している時のこと。
観測は約半年間続けられたそうです。
○○○
上段は超新星“SN 2018oh”が出現する前、下段が出現した後。
右端の2つが“ケプラー”による観測画像。
分光観測の結果分かったのは、この天体が分類されたのはIa型超新星だということ。

ただ、典型的なIa型超新星は3週間ほどかけて明るくなり、その後徐々に暗くなっていくのですが、“SN 2018oh”の場合は違っていたんですねー
爆発後急速に明るさを増し、明るさのピークに達したのは数日後のことでした。

地上観測によるデータから、“SN 2018oh”の明るさが極大だった頃の光が明るく青かったことが分かり、高温の天体だったことが分かっています。


Ia型超新星発生のシナリオ

Ia型超新星発生のシナリオは長年の議論の的になっています。

これまでの観測から得られた証拠のほとんどが示しているのは、2つの白色矮星同士の合体によって発生したということ(Double Degenerate:DD説)。

一方、理論モデルから示されているのは、単独の白色矮星が伴星から多くの物質を引き込んで自身の重さを維持できなくなり、爆発を起こして衝撃波が発生するという別のシナリオの可能性でした(Single Degenerate:SD説)。

今回、一部の研究者が考えているのは、“SN 2018oh”がSD説通りの現象の一例だということ。

“SN 2018oh”で観測された明るさと熱は、白色矮星の爆発の衝撃波が伴星に衝突することで作り出された、非常に高温で明るいガス状の物質によるものだと考えています。

ただ、他の研究者は、その類まれな明るさと温度は、別のメカニズムによるものだと考えます。

Ia型超新星は爆発の間に放射性ニッケルを生成し、超新星爆発で生じる光の大部分は、この種の物質が放射性崩壊を起こす際に放射されます。
もし、大量のニッケルが爆発する物質の外層部に存在していれば、今回観測されたような急増光が生じると考えたからです。

Ia型超新星はどれも真の明るさが同じと考えられていて、見掛けの明るさと比較することで、その超新星が出現した銀河までの距離を測定することができます。

宇宙の加速膨張は、こうした観測研究から分かったことですが、宇宙の膨張をより正確に理解するためにも、Ia型超新星の性質や爆発メカニズムを詳細に調べる必要があるんですねー

“ケプラー”が見つけてくれた“SN 2018oh”は、最も近距離に出現した最も明るい超新星になります。
そう、系外惑星探査を主目的とした衛星“ケプラー”が見せてくれたのは、超新星の発見という一面でした。

残念ながら燃料切れのため、“ケプラー”の運用は今年の10月で終了しています。

でも“ケプラー”は、これまでの観測で膨大なデータを取得しているんですねー
このデータの解析を進めていけば、まだまだ新しい発見が出てくるのかもしれませんね。


こちらの記事もどうぞ
  超新星残骸に大量のニッケル… 究極的核融合プロセスの初証拠かも
    


最新の画像もっと見る

コメントを投稿