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温度の異なる3種類のガス成分で構成されていた? 銀河を包み込む球状の領域“ハロー”に予想外の発見

2020年02月02日 | 宇宙 space
天の川銀河を包み込む球状の領域“ハロー”。
ここに温度が異なる3つのガス成分が存在し、そのうちの1つはこれまでに考えられていたより10倍も高温であることがX線の観測で明らかになってきました。
さらに、太陽の元素比率に似ていると考えられてきた“ハロー”の元素比率も予測とは異なるようです。


“ハロー”を構成していたのは温度の異なる3種類のガス成分

銀河の周囲に存在しているのが、星やガス、ダークマターで構成されている巨大な球状構造“ハロー”です。
その“ハロー”は、銀河と銀河間空間とをつないでいて、銀河の進化に重要な役割を果たしていると考えられています。
銀河を取り巻く高温ガスの観測例(おとめ座の方向約9500万光年彼方の渦巻き銀河“NGC 5746”)。<br>
NASAのX線天文衛星“チャンドラ”の観測でとらえられた高温ガス(青)が銀河円盤の上下に広がっている。
銀河を取り巻く高温ガスの観測例(おとめ座の方向約9500万光年彼方の渦巻き銀河“NGC 5746”)。
NASAのX線天文衛星“チャンドラ”の観測でとらえられた高温ガス(青)が銀河円盤の上下に広がっている。
これまで、銀河の“ハロー”内には銀河の質量によって決まる、温度が単一の高温ガスが含まれていると考えられてきました。

でも、アメリカ・オハイオ州立大学のチームが行った研究によると、天の川銀河の“ハロー”が温度の異なる3種類のガス成分で構成されていることが明らかになるんですねー

そのうち最も高温のガスは、これまで考えられてきたよりも10倍も温度が高いことが、ヨーロッパ宇宙機関のX線天文衛星“XMMニュートン”による観測から分かってきます。

“ハロー”が温度の異なるガスで構成されていることが明らかになったのは、天の川銀河以外の銀河も含めて初めてのことでした。
“ハロー”の温度成分を示すイラスト。<br>
中心の濃い緑色の部分は天の川銀河を、その周囲のエメラルドグリーン・黄・緑はそれぞれ温度が異なるガス成分を表している。
“ハロー”の温度成分を示すイラスト。
中心の濃い緑色の部分は天の川銀河を、その周囲のエメラルドグリーン・黄・緑はそれぞれ温度が異なるガス成分を表している。
これまで考えられてきたのは、“ハロー”のガスの温度は1万~100万度の範囲だということ。
でも、天の川銀河の“ハロー”内のガスの中には、100万度に達するものもあることが明らかになります。

どのようにして“ハロー”内のガスがこれほどの高温になったのでしょうか?
まだ分かっていませんが、研究チームは天の川銀河の円盤構造から吹く風が原因だと考えています。


ガス成分の温度を決定する

今回の研究でチームが利用したのは、非常に活動が活発で強力なエネルギーを持つ遠方銀河の中心核“ブレーザー”からの光でした。

50億光年彼方の“ブレーザー”から届いたX線が天の川銀河の“ハロー”を通過すると、そのX線中に“ハロー”内のガスの特徴に関する情報が含まれます。

今回の研究では、この“ブレーザー”からの光を分析することで、特定の温度にしか見られない特徴を見つけることができ、ガスの温度が決定できたというわけです。

また、これまで天の川銀河の“ハロー”に含まれる元素の比率は、太陽の元素に似ていると考えられてきました。
でも、今回の研究により予想よりも鉄や酸素が少ないことが示されることになります。

今回発見された天の川銀河の“ハロー”の中の超高温ガス成分は過去に観測例がなく、これまでの分析で見落とされてきた可能性も考えられます。

このことは天の川銀河で観測される物質の量が理論予測よりもはるかに少ないという、“ミッシングバリオン問題”の理解につながる成果になるのかもしれません。
  宇宙は正体不明の“ダークマター”と“ダークエネルギー”で満たされていて、身近な物質である“バリオン(陽子や中性子などの粒子で構成された普通の物質)”は、宇宙の中にわずか5%しか存在しないことが分かってきている。その“バリオン”も、星や銀河、星間ガスなどとして観測されている量はおよそ半分で、残り半分はまだ見つかっていない。これが“ミッシング(行方不明の)バリオン問題”。

今回の研究結果は予想外のものになりました。
天の川銀河がどのように進化してきたかについて、まだまだ学ぶべきことが非常に多いということですね。


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