表面が3キロに及ぶ氷で覆われる木星の第2衛星エウロパでは、潮汐加熱によって内部に広大な海が存在する可能性が指摘されています。
衛星の軌道が円形でないとき、惑星から遠いときはほぼ球体の衛星も、接近するにしたがって惑星の重力で引っ張られ極端に言えば卵のような形になります。
そして惑星から遠ざかるとまた球体に戻っていく。
これを繰り返すことで発生した摩擦熱により衛星内部は熱せられることになります。
このような強い重力により、天体そのものが変形させられて熱を持つ現象を潮汐加熱といいます。
エウロパには、この潮汐加熱によって作られた地球の海水の2倍という大量の水をたたえた地下海が、氷の外殻の下に広がっているのではないかと考えられて、生命が存在する可能性も指摘されています。
今回の研究では、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ“NIRCam”によるエウロパの観測データを、2つの研究チームが分析。
その結果、表面の特定の地域に二酸化炭素(CO2)が集中して存在することを突き止めています。
このことが示しているのは、エウロパの地下海の水に炭素が含まれている可能性でした。
複雑な化合物の材料となる炭素は、地球の生命にとって非常に重要な元素のひとつ。
エウロパの地下海に生命が存在することを期待させる発見ですね。
これらの地域は、外核の一部が崩落したことで形成されたとみられる“カオス地形(chaos terrain)”として知られています。
エウロパ表面の約4分の1を覆うカオス地形は地質学的に若く、亀裂・尾根・流氷のようにブロック化した氷で構成されています。
また、カオス地形では、エウロパ表面から地下海へと酸素が運び込まれている可能性も指摘されるなど、エウロパの表面と地下海の間では物質が循環している可能性が考えられます。
“NIRCam”で検出された二酸化炭素について、隕石の衝突などによって外部から供給されたものではないことを分析結果が示していることから、両チームはエウロパ内部から比較的最近になって表面に供給されたものだと考えています。
そう、検出された二酸化炭素はエウロパの地下海に由来する可能性があるんですねー
二酸化炭素はエウロパの表面では安定せず、地質学的に若いカオス地形に集中して分布することから、宇宙望遠鏡科学研究所でも内部から最近供給されたと考えても矛盾しないとしています。
実は、エウロパの二酸化炭素そのものは過去にも検出されていました。
でも、それが地下海に由来するのか、それとも外部からもたらされた物質に由来するのかを、これまで判断できず…
今回の成果は、地下海の化学的性質を探る上で大きな一歩になりそうです。
一方、Villanuevaさんの研究チームでは、エウロパから噴出しているとみられる水蒸気のプルームを探しています。
残念ながら今回の観測データからは、その証拠は見つかりませんでした。
ただ、プルームは常に噴出しているとは限らないので、今回の観測ではたまたま検出されなかった可能性もあります。
ハッブル宇宙望遠鏡の後継機として2021年12月25日に打ち上げられ、地球から見て太陽とは反対側150万キロの位置にある太陽―地球間のラグランジュ点の1つの投入され、ヨーロッパ宇宙機関と共同で運用されています。
高い赤外線感度と高性能な分光器を持つジェームズウェッブ宇宙望遠鏡は、遠方の深宇宙だけでなく、見た目の移動速度が速い太陽系内の天体を追跡して詳細な観測が行えることも強みにしていて、今回の研究結果はその能力が活かされた好例になりました。
研究では、“NIRCam”の面分光ユニット(IFU)モードによるエウロパの観測データを分析。
このモードでは、直径3128kmのエウロパに対して320km×320kmの解像度でスペクトル(光の波長ごとの強度分布)が得られます。
これにより、エウロパ表面のどこにどのような物質が存在するのかを、特定することを可能にしています。
今回の両チームによる研究成果は、“JUICE”や“エウロパ・クリッパー”のミッションにも活かされるはず。
エウロパの地下海に生命は存在するのでしょうか?
“JUICE”や“エウロパ・クリッパー”が、新たな知見をもたらしてくれるかもしれませんね。
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衛星の軌道が円形でないとき、惑星から遠いときはほぼ球体の衛星も、接近するにしたがって惑星の重力で引っ張られ極端に言えば卵のような形になります。
そして惑星から遠ざかるとまた球体に戻っていく。
これを繰り返すことで発生した摩擦熱により衛星内部は熱せられることになります。
このような強い重力により、天体そのものが変形させられて熱を持つ現象を潮汐加熱といいます。
エウロパには、この潮汐加熱によって作られた地球の海水の2倍という大量の水をたたえた地下海が、氷の外殻の下に広がっているのではないかと考えられて、生命が存在する可能性も指摘されています。
今回の研究では、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ“NIRCam”によるエウロパの観測データを、2つの研究チームが分析。
その結果、表面の特定の地域に二酸化炭素(CO2)が集中して存在することを突き止めています。
このことが示しているのは、エウロパの地下海の水に炭素が含まれている可能性でした。
複雑な化合物の材料となる炭素は、地球の生命にとって非常に重要な元素のひとつ。
エウロパの地下海に生命が存在することを期待させる発見ですね。
この研究を進めているのは、NASAゴダード宇宙飛行センターのGeronimo Villanuevaさんと、コーネル大学のSamantha K. Trumboさん、それぞれを筆頭とする2つの研究チームです。
両チームの成果をまとめた論文はScienceに掲載されています。
両チームの成果をまとめた論文はScienceに掲載されています。
NASAの木星探査機“ジュノー”の可視光カメラ“JunoCam”で撮影された衛星エウロパ。(Credit: NASA/SwRI/MSSS/Thomas Appéré) |
二酸化炭素はエウロパの地下海に由来する
ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を運用する宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によると、二酸化炭素はエウロパ表面のタラ地域(Tara Regio)やポーイス地域(Powys Regio)に集中して分布していました。これらの地域は、外核の一部が崩落したことで形成されたとみられる“カオス地形(chaos terrain)”として知られています。
エウロパ表面の約4分の1を覆うカオス地形は地質学的に若く、亀裂・尾根・流氷のようにブロック化した氷で構成されています。
また、カオス地形では、エウロパ表面から地下海へと酸素が運び込まれている可能性も指摘されるなど、エウロパの表面と地下海の間では物質が循環している可能性が考えられます。
エウロパの表面を覆う外殻の断面を示した図。中央右側にカオス地形が描かれている。(Credit: NASA/JPL-Caltech) |
そう、検出された二酸化炭素はエウロパの地下海に由来する可能性があるんですねー
二酸化炭素はエウロパの表面では安定せず、地質学的に若いカオス地形に集中して分布することから、宇宙望遠鏡科学研究所でも内部から最近供給されたと考えても矛盾しないとしています。
実は、エウロパの二酸化炭素そのものは過去にも検出されていました。
でも、それが地下海に由来するのか、それとも外部からもたらされた物質に由来するのかを、これまで判断できず…
今回の成果は、地下海の化学的性質を探る上で大きな一歩になりそうです。
一方、Villanuevaさんの研究チームでは、エウロパから噴出しているとみられる水蒸気のプルームを探しています。
残念ながら今回の観測データからは、その証拠は見つかりませんでした。
ただ、プルームは常に噴出しているとは限らないので、今回の観測ではたまたま検出されなかった可能性もあります。
深宇宙だけじゃないジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の能力
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、NASAが中心となって開発した口径6.5メートルの赤外線観測用宇宙望遠鏡です。ハッブル宇宙望遠鏡の後継機として2021年12月25日に打ち上げられ、地球から見て太陽とは反対側150万キロの位置にある太陽―地球間のラグランジュ点の1つの投入され、ヨーロッパ宇宙機関と共同で運用されています。
高い赤外線感度と高性能な分光器を持つジェームズウェッブ宇宙望遠鏡は、遠方の深宇宙だけでなく、見た目の移動速度が速い太陽系内の天体を追跡して詳細な観測が行えることも強みにしていて、今回の研究結果はその能力が活かされた好例になりました。
研究では、“NIRCam”の面分光ユニット(IFU)モードによるエウロパの観測データを分析。
このモードでは、直径3128kmのエウロパに対して320km×320kmの解像度でスペクトル(光の波長ごとの強度分布)が得られます。
これにより、エウロパ表面のどこにどのような物質が存在するのかを、特定することを可能にしています。
今回の両チームによる研究成果は、“JUICE”や“エウロパ・クリッパー”のミッションにも活かされるはず。
エウロパの地下海に生命は存在するのでしょうか?
“JUICE”や“エウロパ・クリッパー”が、新たな知見をもたらしてくれるかもしれませんね。
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