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土星の環は数億年前に2つの衛星が衝突して作られた!? 衛星の軌道がある位置まで広がると衝突につながるようです

2023年11月29日 | 土星の探査
太陽系では木星に次いで2番目に大きな惑星が“土星”です。

この惑星最大の特徴は何といっても大きな環を持っていること。
ただ、この環は土星が形成された頃から存在するのではなく、地質学的には最近と言える数億年前に形成された可能性が近年の研究で指摘されています。

今回発表されたのは、この土星の環は2つの衛星が衝突したことで形成されたとする研究成果。
研究は、グラスゴー大学/オスロ大学のLuis Teodoroさんを筆頭とする研究チームが進めています。
2016年4月にNASAの土星探査機“カッシーニ”が撮影した土星。(Credit: NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)
2016年4月にNASAの土星探査機“カッシーニ”が撮影した土星。(Credit: NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)

衛星の軌道がある位置まで広がると衛星同士の衝突につながる

今回、研究チームが着目したのは、土星の環が衛星同士の衝突で生じた破片から形成された可能性でした。

研究では、衛星の大きさや衝突の仕方を変えた約200通りのシミュレーションを実施。
すると、2つの氷衛星の衝突によって生じた破片から環が形成されたり、新たな衛星が形成されたりする可能性があることが分かってきます。

土星の環は主に水の氷でできていて、岩は少ししか存在しないことが知られています。

研究に参加したダラム大学のVincent Ekeさんによると、氷衛星同士の衝突では衛星の中心部にある岩よりも、その周りにある氷の方が分散しやすいことから、土星の環が主に氷でできていることを上手く説明できる可能性があるそうです。
今回の研究で実施されたシミュレーションを紹介するNASAの動画。(Credit: NASA/Jacob Kegerreis/Luís Teodoro)
そもそも、長い間存在していた2つの衛星が数億年前に衝突したのは、太陽の重力によるわずかな影響が積み重なった結果、衛星の軌道が他の衛星と交差する楕円軌道に変化したからだと考えられています。

月が少しずつ地球から遠ざかっているように、土星の衛星も少しずつ土星から遠ざかっていて、衛星の軌道がある位置まで広がったときに、こうした衛星同士の衝突につながる変化が生じると予想されています。
月が地球から遠ざかるスピードは1年間に3.8センチ。でも、土星最大の衛星タイタンは年間11センチの割合で土星から遠ざかっている。
興味深いことに、現在では土星の衛星レア(直径1530キロ)が、まさにそのような位置で公転しています。

ところが、古くから存在する衛星であれば軌道が不安定になる影響を受けているはずなのに、レアの軌道はほぼ真円。
このことから、レアは古くから存在する衛星ではない可能性が指摘されています。
土星探査機“カッシーニ”の広角カメラで2009年11月21日に撮影された衛星レア。(Credit: NASA/JPL/Space Science Institute)
土星探査機“カッシーニ”の広角カメラで2009年11月21日に撮影された衛星レア。(Credit: NASA/JPL/Space Science Institute)
今回の研究では、土星の環がまだ新しいとする近年の研究と一致する結果にたどり着いています。
それでも、なお土星とその衛星にはいくつもの謎が残されています。

その一例として、衛星エンケラドス(直径500キロ)があります。

エンケラドスは氷の外郭の下に地下海が広がっている可能性があり、そこには生命が誕生している可能性が指摘されています。

仮に、土星の衛星の一部がまだ新しいとすれば、エンケラドスに生命が存在するとする研究にも関わってくるはずです。

今回の研究成果は、土星やその衛星をさらに深く理解することにつながると期待されています。
土星探査機“カッシーニ”の狭角カメラで2005年7月14日に撮影されたエンケラドス。紫外線、可視光線、赤外線のフィルターを使用して取得したデータを元に作成。(Credit: NASA/JPL/Space Science Institute)
土星探査機“カッシーニ”の狭角カメラで2005年7月14日に撮影されたエンケラドス。紫外線、可視光線、赤外線のフィルターを使用して取得したデータを元に作成。(Credit: NASA/JPL/Space Science Institute)


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