NASAにとって火星への着陸に成功した8機目の探査機“インサイト”。
運用を終えた“インサイト”の未解析データから、火星の自転がわずかに加速していることが明らかになりました。
また、火星の核の比率は地球よりもかなり大きいこと、核が自転だけでは説明できない形状をしていることも分かってきたようです。
でも、“インサイト”が4年にわたって取得した大量の観測データは、今でも研究者によって分析されているんですねー
今回の研究では、“インサイト”に搭載されている“自転・内部機構実験装置(Rotation and Interior Structure Experiment ; RISE)”のデータを解析しています。
“RISE”は、地球と電波を送受信することで火星の自転軸のふらつきを検出し、火星の内部構造についての情報を得る装置。
この“RISE”のデータから、火星の自転速度を精密に測定しようとしています。
“インサイト”のミッションでは、NASAが運用する“深宇宙ネットワーク(DSN)”のアンテナを使って“インサイト”に電波を送信しています。
“RISE”は、この電波を地球に送り返しますが、地球に戻ってくる電波は火星の運動によってドップラー効果を受け、周波数がわずかに変わることに。
この周波数の変化を測定することで、1年でわずか数十センチという探査機の位置のズレを検出し、火星の自転速度を精密に知ることができます。
研究チームでは、“インサイト”の最初の900日分のデータを解析。
すると、火星の自転周期が1年当たり約4ミリ秒ほど短くなっていることが明らかになります。
これは、火星の自転がわずかに加速していることを示していました。
火星の自転が、わずかに加速していることは分かりました。
でも、加速の度合いは非常に小さく、その原因は完全にはつかめていないんですねー
加速の原因として考えられるのは、極冠の氷が増えている、かつて火星表面にあった氷河が融けてなくなったことで火星の陸海が隆起している、などがありました。
フィギュアスケートの選手が腕を縮めるとスピンが速まるのと同じように、火星表面の質量分布が変われば自転は加速し得るというのが理由でした。
火星の内部は地球と同じように核とマントルに分かれていて、核の一部または全部が液体の状態だと考えられています。
火星の章動は、この液体の核が揺れ動くことで生じるので、章動を測定すると核のサイズを推定することができます。
研究チームの解析からは核の半径が約1835キロということが分かっています。
火星の核については、過去の探査機で観測された地震波のデータからも、2種類の推定値が得られていました。
地震波が火星の内部を伝わると、核とマントルの境界で反射されたり核の内部を通り抜けたりするので、やはり核の大きさを見積もることができるからです。
今回の推定値を含む3つの値をすべて考慮した核の半径は1790~1850キロ。
火星の半径は3390キロなので、火星の核の比率は地球よりもかなり大きいことになります。
さらに、章動の測定から示唆されているのは、火星の核が自転だけでは説明できない形状をしていることです。
これは、マントルの深部に密度のばらつきが存在することで、核の形が影響を受けているのかもしれません。
今回の研究成果は、“RISE”による歴史的な実験に、たくさんの時間とエネルギーを費やしたことによるものかもしれません。
NASAの低コストで効率の良いミッション“ディスカバリー”の候補に挙がっていた、3つの計画から選ばれたインサイト計画。
“インサイト”の運用は終了してしまいましたが、未解析のデータは大量に残されています。
これらのデータを用いたさらなる研究により、火星やそのほかの惑星の内部構造がより明らかになることが期待されます。
“RISE”のデータからも、火星について多くの知見が得られるかもしれませんね。
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運用を終えた“インサイト”の未解析データから、火星の自転がわずかに加速していることが明らかになりました。
また、火星の核の比率は地球よりもかなり大きいこと、核が自転だけでは説明できない形状をしていることも分かってきたようです。
火星の自転周期は1年当たり約4ミリ秒ほど短くなっている
2018年11月に火星に着陸したNASAの火星探査機“インサイト”は、太陽電池パネルに砂ぼこりが積もって発電量が下がり、2022年12月に運用を終えています。でも、“インサイト”が4年にわたって取得した大量の観測データは、今でも研究者によって分析されているんですねー
火星着陸から1211火星日(1火星日=約24時間40分)が経過した、2022年4月24日に撮影された“インサイト”の自撮り画像。機体や太陽電池パネルに大量に砂ぼこりが積もっている。これによって発電量が低下し、2022年12月に運用終了になった。 (Credit: NASA/JPL-Caltech) |
“RISE”は、地球と電波を送受信することで火星の自転軸のふらつきを検出し、火星の内部構造についての情報を得る装置。
この“RISE”のデータから、火星の自転速度を精密に測定しようとしています。
この研究は、ベルギー王立天文台のSébastien Le Maistreさんを中心とする研究チームが進めています。
“インサイト”のイラスト。矢印の位置に“RISE”のアンテナが装備されている。(Credit: NASA/JPL-Caltech) |
“RISE”は、この電波を地球に送り返しますが、地球に戻ってくる電波は火星の運動によってドップラー効果を受け、周波数がわずかに変わることに。
この周波数の変化を測定することで、1年でわずか数十センチという探査機の位置のズレを検出し、火星の自転速度を精密に知ることができます。
研究チームでは、“インサイト”の最初の900日分のデータを解析。
すると、火星の自転周期が1年当たり約4ミリ秒ほど短くなっていることが明らかになります。
これは、火星の自転がわずかに加速していることを示していました。
火星の自転が、わずかに加速していることは分かりました。
でも、加速の度合いは非常に小さく、その原因は完全にはつかめていないんですねー
加速の原因として考えられるのは、極冠の氷が増えている、かつて火星表面にあった氷河が融けてなくなったことで火星の陸海が隆起している、などがありました。
フィギュアスケートの選手が腕を縮めるとスピンが速まるのと同じように、火星表面の質量分布が変われば自転は加速し得るというのが理由でした。
自転だけでは説明できない火星の核の形状
“RISE”からは“章動”という火星の自転軸のふらつきのデータも得られています。火星の内部は地球と同じように核とマントルに分かれていて、核の一部または全部が液体の状態だと考えられています。
火星の章動は、この液体の核が揺れ動くことで生じるので、章動を測定すると核のサイズを推定することができます。
研究チームの解析からは核の半径が約1835キロということが分かっています。
火星の核については、過去の探査機で観測された地震波のデータからも、2種類の推定値が得られていました。
地震波が火星の内部を伝わると、核とマントルの境界で反射されたり核の内部を通り抜けたりするので、やはり核の大きさを見積もることができるからです。
今回の推定値を含む3つの値をすべて考慮した核の半径は1790~1850キロ。
火星の半径は3390キロなので、火星の核の比率は地球よりもかなり大きいことになります。
さらに、章動の測定から示唆されているのは、火星の核が自転だけでは説明できない形状をしていることです。
これは、マントルの深部に密度のばらつきが存在することで、核の形が影響を受けているのかもしれません。
今回の研究成果は、“RISE”による歴史的な実験に、たくさんの時間とエネルギーを費やしたことによるものかもしれません。
NASAの低コストで効率の良いミッション“ディスカバリー”の候補に挙がっていた、3つの計画から選ばれたインサイト計画。
“インサイト”の運用は終了してしまいましたが、未解析のデータは大量に残されています。
これらのデータを用いたさらなる研究により、火星やそのほかの惑星の内部構造がより明らかになることが期待されます。
“RISE”のデータからも、火星について多くの知見が得られるかもしれませんね。
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