goo blog サービス終了のお知らせ 

宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

太陽系外の岩石惑星に大気を初めて確認

2016年09月07日 | 地球外生命っているの? 第2の地球は?
今年の5月のこと、
地球からわずか40光年の距離にある超低温の暗い恒星トラピスト1の周りに、
3つの地球サイズの系外惑星が見つかりました。

以来、注目を集めてきたこれら3つの惑星“トラピスト1b、1c、1d”。
このうち2つについて、より詳細な事実が明らかになってきたようです。


ハビタブルゾーンにある岩石惑星

今回の研究では、ハッブル宇宙望遠鏡を使って、
2つの惑星トラピスト1bと1cが主星の前を横切るタイミングを観測。

すると、これらが地球のような岩石惑星で、
生命が存在できる可能性があることが明らかになります。

さらに、どちらの惑星も、地球や金星や火星の周りにあるような、
高密度の大気に包まれていることも分かったんですねー

そして、トラピスト1の周りを回る3つの惑星は、
ハビタブルゾーンに近い軌道を公転しているようでした。

  ハビタブルゾーンとは、生命が存在できる程度に主星から離れた領域。

そのうちトラピスト1bと1cは、主星から非常に近い軌道を公転していて、
常に同じ面を主星に向けているので、
表面のどこかに生命が存在するのに暑すぎも寒すぎもない場所があると考えられています。
トラピスト1の手前を通過する2つの惑星(イメージ図)。


千歳一遇のチャンス

トラピスト1bと1cの詳細な観測が緊急の課題になったのは、
惑星発見が発表された2日後のことでした。

計算によって、
2つの惑星が地球と主星トラピスト1の間を相次いで通過することが、
明らかになったんですねー

主星の手前を横切る惑星が主星の光をさえぎるトランジット現象を利用すれば、
1回の観測で2つの系外惑星の大気を観測できることになります。

外側の軌道を公転するトラピスト1cが先にトランジットを開始し、
その12分後に内側の軌道を公転するトラピスト1bのトランジットが開始。
こんなに小さい惑星の大気の観測が行われたのは、初めてのことだそうです。

2つの系外惑星を同時観測できる機会は数年に一度しか訪れないので、
研究チームは、この機会を逃したくなかったんですねー
急遽、ハッブル宇宙望遠鏡の利用を申し込んだそうです。

そして、この要請は受け入れられ、
トラピスト1惑星系に宇宙望遠鏡の鋭い眼が向けられることになります。


ガス惑星の可能性を否定

惑星が主星の前を通過するとき、
主星からの光は惑星の大気中を通り抜けてきます。

なので、この光の吸収パターンを分析して、
惑星を取り巻くガスの種類を知ることができたというわけです。

観測データが示していたのは、トラピスト1bと1cが、
木星のように水素を主成分とする厚い大気を持っている可能性が低いことでした。

たいして重要なことではないように思うかもしれませんが、
ガス惑星の可能性を否定出来たことには、いくつもの意味があります。

まずは、岩石惑星である可能性を示したことです。

当初の観測では、惑星の質量の範囲しか分からず直径は不明だったので、
惑星の組成と密度を推測するしかありませんでした。

今回の観測により厚い大気がないことが明らかになったことで、
高密度の岩石惑星である可能性が高まりました。


似ているのは地球か金星か?

惑星に大気があるとして、
具体的にどのような大気なのかは、まだ分かっていません。

そして、ガスや蒸気の成分は惑星の温度に大きな影響を及ぼします。

このことは、高密度の二酸化炭素の大気を持つ金星が、水星よりも太陽から遠いのに、
太陽系で最も高温の惑星になっていることを見れば分かりますね。

一部の科学者が考えているのは、
トラピスト1の惑星は地球よりは金星に近いということ。
金星をさらに超高音にしたような天体で、
太陽系にはないタイプの非常に興味深い惑星だそうです。

研究チームは、この惑星の大気の対部分が水蒸気である可能性を示唆しているのですが、
その場合は生命にとって致命的なことになります。

なぜなら主星であるトラピスト1が、
可視光ではなく近赤外線を主に放射しているからです。

水蒸気は近赤外線をよく吸収し、
温室効果ガスとして惑星を温めることになります。

なので、惑星の大気に大量の水蒸気が含まれている場合、
惑星は地球よりもかなり高温になってしまうんですねー


次の機会を待つ

トラピスト1の2つの惑星の居住可能性についての結論は、
まだ出ていません。

でも研究チームは、さらなる研究の価値があると確信し、
北半球の空でも超低温星の周りの惑星を探索したいと考えています。

その際に使いたいのが2018年に打ち上げが予定されている、
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡なんですねー

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はNASAの最大の宇宙望遠鏡で、
生命が居住できる可能性のある系外惑星を、より詳細に観測することができます。

超低温の恒星の周りの岩石惑星については、まだ何も分かっておらず、
半世紀前に金星の観測が始まった頃の状況によく似ているそうです。

当時は、金星が地球と同程度の大きさであることは分かっていましたが、
地球に似ているかどうかは分かっていませんでした。

結局、金星は地球とは似ても似つかない惑星でした。

トラピスト1の惑星系を再び観測できるようになるには、
あと数年待たないといけませんが、惑星はどこにも逃げないので、
気長に待つしかありませんね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 生命が存在しているのかも? “ケプラー62f”の居住可能な確率が高くなったようです。