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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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“はやぶさ2”の小惑星リュウグウ着陸はほんの少し、表面に数秒間接地してサンプルを採取するようです。

2019年02月16日 | 小惑星探査 はやぶさ2
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地球を出発して4年も航海を続けてきたJAXAの小惑星探査機“はやぶさ2”。
2月22日の朝8時頃に小惑星リュウグウに着陸することが決まったんですねー

岩の少ない地点に確実に着陸するため採用されたのは、先代“はやぶさ”とは違う誘導方法でした。
サンプルの採取は、表面に数秒間接地して行われるようです。


水や有機物が多く存在する小惑星の探査

2003年に打ち上げられ小惑星イトカワの探査を行い、そして2010年に地球へのサンプルリターンを成功させた探査機“はやぶさ”。

その“はやぶさ”の後継機として、2014年12月3日に種子島宇宙センターからH-IIAロケット26号機で打ち上げられた探査機が“はやぶさ2”です。

“はやぶさ2”のミッションは、搭載された観測機器を使って小惑星の探査を行い、砂などのサンプルを採取して地球に持ち帰ること。

観測データや、持ち帰ってきたサンプルを地球上で分析し、“はやぶさ”や他の小惑星・彗星探査機が得たデータと比較することで、太陽系の起源や進化、生命の原材料を探求することを目指しているんですねー

目的地のリュウグウと呼ばれる小惑星は、有機物や含水鉱物をより多く含んでいると考えられている“C型”という種類の小惑星です。
先代の“はやぶさ”が探査した“S型”小惑星イトカワと比べ、より始原的な天体になります。
  赤外線天文衛星“あかり”が実現した、探査に行かなくても小惑星に水が存在するかを知る方法
    


岩が少ない場所への安全な着陸方法

小惑星リュウグウへの第1回タッチダウン(TD1)に向けて、探査機の運用チームでは候補地を慎重に検討してきました。
それは、岩が多くあるリュウグウの表面に“はやぶさ2”を安全に着陸させるためでした。

1月の段階で絞られていた候補地は、リュウグウの赤道部分にある“L08-B1”と“L08-E1”という2つの地域。

そして、最終検討で決まったのが、10月の着陸リハーサルで投下したターゲットマーカーに近く、岩がより少ない“L08-E1”への着陸でした。
広さは“はやぶさ2”の太陽電池パネルの幅とほぼ同じ直径6メートルほどあるようです。
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“はやぶさ2”の着陸地点。
ピンクの正方形“L08”の中にある赤い四角形が最終的に決まった着陸地点“L08-E1”。
この狭い場所に確実に着陸するために用いられるのは、“ピンポイントタッチダウン”と呼ばれる誘導方法。
この方法は、すでにリュウグウ表面に投下済みのターゲットマーカーをカメラの視野内に捕捉し続けることで、マーカーから指定の距離・方向にシフトした場所へ着陸するというもの。

当初予定されていたのは、着陸のための降下中にターゲットマーカーを投下して、落ちていくターゲットマーカーをカメラの視野中心にとらえ続けることで、マーカーの真上に着陸するという方法でした。

これは初代“はやぶさ”と同じ誘導方法です。
でも、この方法だと誘導精度がターゲットマーカーの投下の精度で決まってしまうので、±数メートルという高い誘導精度を実現するのは難しいんですねー
そこで採用されたのが、“ピンポイントタッチダウン”でした。
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着陸地点付近の拡大図。
当初最有力候補とされていた“L08-B”(白い円)の中にある着陸候補地“L08-B1”(赤)と、
そのそばにある着陸候補地“L08-E1”(緑)。赤やピンクの楕円が着陸の妨げになり得る岩塊。
左下は地図と同じ縮尺で描かれた“はやぶさ2”の機体。
“TM”は10月25日に投下したターゲットマーカー。


着陸は2月22日の8時15分ころ

現在の計画では、“はやぶさ2”は2月21日8時32分に高度20キロのホームポジションから降下を始め、翌22日の8時15分にリュウグウに着陸。
表面に数秒間接地してサンプルを採取してから上昇します。
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着陸の約50分前から約7分後までは、機体の姿勢を地形に合わせて傾ける必要があります。
なので、この間は“はやぶさ2”の高利得アンテナ(HGA)は使えず、地球から探査機の状態や画像などを受信することができないんですねー

それでも、探査機の速度が変われば電波の波長がドップラー効果で変わることを利用すれば、探査機が下降から停止、上昇に転じたことは確認できるようです。

上昇後に高利得アンテナを再び地球に向け、第1回タッチダウンが計画通りに行えたかをデータで確認できるのは9時頃になるようですよ。
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“はやぶさ2”のタッチダウンの流れ。高度45メートルまで降下したところでいったんホバリングして、
表面のターゲットマーカーをカメラで捕捉する。
補足できたら高度8.5メートルまで下降し、ここで探査機の姿勢を地形に合わせて傾ける。
そのままの姿勢でターゲットマーカーの真上から水平に移動して、
最後にスラスターを噴射して放物運動するように下降して着地する。


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リュウグウへ向けて! “はやぶさ2”が追加イオン・エンジン運転で軌道修正に成功

2016年06月15日 | 小惑星探査 はやぶさ2
小惑星探査機“はやぶさ2”が2回目のイオン・エンジン運転で、
予定通りの軌道に乗ったことをJAXAが発表しました。

“はやぶさ2”は、2015年12月3日の地球スイングバイのあと、
小惑星リュウグウに向けて航行していました。

リュウグウ到着は2018年の6月から7月頃の予定なんですが、
それまでにイオン・エンジンによる制御が必要になります。

1回目の制御になる第1期イオン・エンジン連続運転は3月22日~5月5日に実施。

この時は3台のイオン・エンジン(A、C、D)が使われ、
運転時間は約794.4時間で、総加速量は約127m/sでした。

個別のイオン・エンジンの運転をすべて合計した総運転時間は、
794.4時間×3台で2383.2時間。

ただ、イオン・エンジン運転終了後に精密な軌道決定を行ったところ、
さらに微修正をした方がいいことが分かります。

このため5月20日21時から21日00時39分までの約3.6時間、
2台のイオン・エンジン(A、D)を動かす追加の運転が行われています。
このときの加速量は約0.4m/sでした。
“はやぶさ2”の往路軌道

そして5月21日以降の計測データに基づいて軌道決定を行ってみると、
計画されていた軌道と整合していることが確認。

“はやぶさ2”は一連のイオン・エンジン運転で、
予定通りの軌道に変更されたことが分かったんですねー

次は第2期イオン・エンジン運転。
今度は、2016年の11月から約5か月間にわたって行われる予定です。


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スイングバイによる軌道変更に成功! 探査機“はやぶさ2”は目標への軌道を順調に航行中

2015年12月16日 | 小惑星探査 はやぶさ2
12月3日に地球スイングバイを行った小惑星探査機“はやぶさ2”。

今回、軌道の計測と計算が完了し、
目標の軌道を順調に飛行していることが確認されたんですねー

地球の重力と公転速度を利用

12月3日に“はやぶさ2”は地球スイングバイを実施しました。

地球スイングバイとは、
地球の重力を利用して軌道の変更を行い、
その際に地球の公転速度を利用することで探査機の航行速度を上げる、
航法テクニックのこと。

“はやぶさ2”は日本時間の19時8分7秒ごろに地球に最接近して、
ハワイ付近の上空3090キロを通過しています。

そして、JAXAが行ったスイングバイ後の軌道計測と計算では、
目標としていた軌道上を航行していることを確認。

“はやぶさ2”は軌道を約80度曲げ、
スピードは秒速約1.6キロ上げて秒速約31.9キロになり、
目標としていた数値を達成したそうです。

スングバイにより軌道を大きく曲げるとともに速度を上げた“はやぶさ2”。

地球を離れて探査目標の“リュウグウ”に向かう軌道進むことになります。

約3億キロ離れた“リュウグウ”への到着は、
2年半後の2018年6月~7月ごろになる予定です。


着陸地点を決めるカメラ

“はやぶさ2”は地球スイングバイ後に、
光学航法望遠カメラ“ONC-T”使用して地球を撮影していました。

このカメラでは7つのフィルターを使ってカラー画像を取得することができ、
このうち3色の画像を使って作成したのが、この地球の画像になるんですねー
スイングバイ翌日の12月4日13時9分(日本時間)に、
約34万キロの距離から撮影された地球。
画像右上にオーストラリア大陸、右下に南極大陸が見えている。

“ONC-T”は、物による反射の性質の違いを認識することができます。

“はやぶさ2”は、この機能を利用して、
小惑星“リュウグウ”のどこに有機物や含水鉱物があるのかを確認し、
着陸する場所を決めることになります。

この“ONC-T”の性能を活かして、
2色の画像から植物の存在を示す場所を明るく表示した画像や、
氷と雲で反射の性質が異なる2色を使い、雲を白く、氷を青く表示し、
同じ色に見える雲と南極の氷を見分けるようにした画像も作成されています。

事前に試験は行われていたのですが、
今回の地球観測で、しっかりとその性能が発揮されていることが、
確認できたそうですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 地球スイングバイに向けて軌道修正に成功! “はやぶさ2”は順調に飛行

地球スイングバイに向けて軌道修正に成功! “はやぶさ2”は順調に飛行

2015年11月10日 | 小惑星探査 はやぶさ2
小惑星“リュウグウ”に向けて、
順調に航行を続けている無人探査機“はやぶさ2”。

JAXAによると、11月3日午後にスラスターを噴射して、
最初の軌道修正に成功したそうです。

そして12月3日には地球に最接近して、地球スイングバイに挑むことになるんですねー


地球スイングバイ

軌道変更が行われたのは、
“はやぶさ2”を正確に地球スインバイさせるためでした。

今回はその1回目になり、
2015年11月3日の13時から15時ごろにかけて行われ正常に終了。

姿勢制御に使う小型のスラスターを予定通り約4秒間噴射、
精度良く噴射するために、噴射は4回に分けて行われたそうです。

地球スイングバイとは、
地球の公転速度を利用して探査機の航行速度を上げ、
地球の重力を利用して軌道の変更を行う航法テクニックのこと。

予定では、あと2回の軌道修正が行われ、
“はやぶさ2”が地球に最接近するのは12月3日午後7時過ぎ、
地表から約く3,100キロに近付くんですねー

再接近した際のスイングバイにより、速度は秒速約30キロから約32キロに加速、
約3億キロ離れた“リュウグウ”へ向かうことになります。

結局、軌道変更は11月26日に実施した2回目で完了。
十分な軌道精度に達していたため3回目は実施されませんでした。



5年後には帰ってくる?

小惑星の名前は7,300以上の応募の中から、
竜宮から玉手箱を持ち帰るイメージの“リュウグウ”が選らばれ、
10月5日に発表されています。

“はやぶさ2”は2014年12月に打ち上げられ、小惑星に到着するのは2018年。

約1年半にわたって探査活動を行い、2019年11~12月ごろに小惑星を出発し、
2020年の11~12月ごろに地球に帰還する予定になっています。

飛行は約6年で、
全行程は太陽の周りを周回するため約52億キロに及びます。

12月3日は、日没から午後7時ごろにかけて、
“はやぶさ2”がゆっくり飛行する姿が、
天文台の大型望遠鏡で鮮明に観測できるのですが、
明るさは10等星程度なので、肉額での観測は難しそうですね。


“はやぶさ2”は、12月3日の夕方から夜にかけて“スインブバイ”を実施。
19時8分7秒ごろに地球に最接近し、ハワイ付近の上空3090キロを通過したそうです。

上空を横切った“はやぶさ2”の光跡

NASAの深宇宙ネットワーク局の支援を受けた探査機運用により、
地球最接近後の“はやぶさ2”の状態は正常であることが確認されています。

ただ、“はやぶさ2”が目標とする軌道に入れてたどうかの確認には、
1週間程度かかるそうですよ。




こちらの記事もどうぞ ⇒ 目的地は“リュウグウ”! “はやぶさ2”が目指す小惑星の名前が決定

目的地は“リュウグウ”! “はやぶさ2”が目指す小惑星の名前が決定

2015年10月07日 | 小惑星探査 はやぶさ2
小惑星探査機“はやぶさ2”が2018年の到着を目指している小惑星の名前が、
“リュウグウ(Ryugu)”に決定したんですねー

もともと小惑星“199 JU3”と呼ばれていたのですが、今年の夏に一般から公募。
応募された7300件あまりの案から選ばれたのが“リュウグウ”でした。


選定の理由

浦島太郎の物語で、浦島太郎が玉手箱を持ち帰るということが、
“はやぶさ2”が小惑星のサンプルが入ったカプセルを持ち帰ることと重なること。

そして目標となる小惑星は、水を含む岩石があると期待されているので、
“リュウグウ”という名称は水を想起させるからでした。

既存の小惑星の名称に類似するものがなく、
神話由来の名称案の中で多くの提案があった名称であったのも理由の1つ。

ちなみに、神話由来の名称が望ましいというのが、
国際天文学連合の定めたルールにあったそうです。

選考委員会による選定の後、
この小惑星を発見し名称提案権を持つ“リニアチーム”に、
“リュウグウ”という案が伝えられます。

その後、同チームから名称決定権を持つ国際天文学連合に提案されて、
正式決定に至っています。
国際天文学連合からリリースされた“小惑星会報”。
“リュウグウ”の名前の由来について説明がある。


“リュウグウ”を見つけたのは?

1999年にアメリカのリンカーン地球接近小惑星観測プロジェクト、
“リニアチーム”による観測で発見されたのが“リュウグウ”でした。

発見された日付や順番から、まず“1999 JU3”という仮符号が与えられ、
続いて“162173”という小惑星番号が付けられています。
“リュウグウ”と
“はやぶさ”が目指した“イトカワ”の比較

現在、“はやぶさ2”は太陽を周回する軌道を順調に航行中。

今年の12月3日に地球スイングバイを実施し、
“リュウグウ”へ向かう軌道に移ることになります。

そして、2018年の夏ごろに“リュウグウ”に到着。

約1年半にわたって探査活動を行い、
2019年末に“リュウグウ”を出発し、地球に帰還するのは2020年になるそうですよ。


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