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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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アルマ望遠鏡によって分かってきた、宇宙の渦巻き構造によって成長する赤ちゃん星

2019年11月30日 | 星が生まれる場所 “原始惑星系円盤”
1300光年彼方の赤ちゃん星を取り巻くガスとチリの円盤に、2つの渦巻き腕の構造が見つかりました。

この発見はアルマ望遠鏡の高解像度観測によるもの。
赤ちゃん星の成長過程を理解するうえで重要な成果になるそうです。


原始星の周りに形成される円盤構造

オリオン座の方向約1300光年彼方に位置する原始星“HH 111”は、生まれて約50万年(太陽の1万分の1の年齢)の赤ちゃん星です。

質量は太陽の約1.5倍で、その重力にひかれて落下してくるガスの一部が、磁場の力などによって星の近くから吹き上げられて、12光年もの長さに伸びる超音速のジェットを形成。

この原始星“HH 111”ではこれまでに、解像度120au(地球から太陽までの約120倍の距離を見分けられる)の観測によって半径160auの降着円盤が検出されていました。
  降着円盤とは、天体の重力で集められたガスやチリが天体の周りに形成する円盤構造のこと。
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アルマ望遠鏡が撮影した原始星系“HH 111”の降着円盤。
今回、台湾の研究チームが用いたのは、従来の8倍の解像度(16au離れたものを見分ける)を持つアルマ望遠鏡。
“HH 111”を観測してみると、この降着円盤には2つの渦巻き腕があることが分かったんですねー
  渦を巻く腕は円盤に集積したチリ粒子が出す熱放射によって輝いていたそうです。

やや成長した若い星の周りの原始惑星系円盤で検出される渦は、円盤の中に作られた見えない原始惑星との相互作用によって形成されます。

では、今回見つかった2つの渦巻き腕はどうでしょうか?

検出された渦は原始惑星との相互作用によって形成されたものとは異なり、周囲の分子雲から円盤へガスやチリが降着することによって引き起こされたものでした。
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(上)ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した原始星系“HH 111”のジェットの光学画像。
(下)アルマ望遠鏡が検出した降着円盤。中央は円盤が正面を向くように回転させた画像、右は渦巻き腕構造を抽出強調した画像。
高い解像度を誇るアルマ望遠鏡を用いた観測によって、赤ちゃん星を取り巻く降着円盤の検出が可能になりました。

これにより期待されるのが、降着円盤を通したガスの移動メカニズムの研究が進展すること。

このような観測は原始星のみならず、活動銀河の中心にある超大質量ブラックホールなどの天体を取り巻く降着円盤の観測でも有効な手法になりそうですね。


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連星系誕生の謎に迫れるかも… 双子原始星から噴き出す不揃いな分子流から分かったこと。

2019年09月23日 | 星が生まれる場所 “原始惑星系円盤”
双子の原始星それぞれから噴き出す不揃いな分子流が、アルマ望遠鏡による観測で検出されました。

この分子流から分かってきたのは、それぞれの原始惑星系円盤の回転軸も大きく傾いている可能性でした。
このことは、連星系形成のメカニズムを解明する手掛かりの1つになるようです。


連星はどうやって誕生する?

銀河系の約半数が連星系の恒星と見られているのですが、その連星はどのように誕生するのでしょうか?
実は、連星系が形成されるメカニズムについては、まだよく分かっていないんですねー

例えば“乱流分裂モデル”では、星の材料である分子雲が乱流によって複数の分子雲コア(星のたまご)に分裂して、分子雲コア同士が互いに回りあう中で星が生まれ、最終的に連星系が生まれると考えられています。

また“円盤分裂モデル”では、原始星を取り巻く原始惑星系円盤が分裂して、もう1つの星を生み出していると考えられています。

これらのモデルの複合的な要因で最終的に連星系が生まれるという考え方もあります。


分子流から分かる原始惑星系円盤の傾き

連星形成のメカニズムに迫るために重要なこと。それは、数多くの若い連星系を観測して、特徴を統計的に考察することです。

その際に注目すべき特徴の1つに、原始星の周りにできる原始惑星系円盤の向きがあります。

今回の研究では、へびつかい座の方向に位置する双子原始星“VLA 1623A”をアルマ望遠鏡で観測。
この原始星のペアは非常に若く、間隔が数十天文単位と非常に狭いという特徴がありました。
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アメリカの電波干渉計“JVLA”による観測結果。
左側に見えるのが双子原始星“VLA 1623A”。
右に見える“VLA 1623B”の正体は分かっていない。
観測の結果、双子原始星のそれぞれから噴き出す、これまで知られていなかった不揃いな分子流が検出されます。

間隔の狭い連星系で、不揃いな分子流が見つかった例は初めてのこと。

一般的に分子流は原始惑星系円盤の回転軸方向に飛び出します。
なので、分子流が不揃いということは、それぞれの原始惑星系円盤の回転軸も大きく傾いているのかもしれません。
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アルマ望遠鏡がとらえた“VLA 1623A”から噴き出す分子流の分布。
高速で近づくガス(青)、低速で近づくガス(水色)、低速で遠ざかるガス(橙)、高速で遠ざかるガス(赤)を表している。


円盤の向きが揃わない可能性

さらに、今回の観測では、分子流の中心部を流れるジェットの構造から、双子原始星の軌道運動に起因すると思われるジェットの波打ち現象もとらえられます。

1周期の間隔は約300年で、双子原始星の軌道周期である400~500年とほぼ一致していました。
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“VLA 1623A”からの高速度分子流(赤は遠ざかる成分、青は近づく成分)。
大量に存在する高密度ガス(緑)を分子流がかき分けて外側に広がっている様子が分かる。
遠ざかるジェット状の成分の拡大図(上)では、波打つ構造が3周期分はっきりと確認できる。
これまで、間隔の狭い連星系の多くは原始惑星系円盤の分裂によって形成され、円盤の向きは揃っているはずだと考えられてきました。

でも、磁場や乱流など現実的な様々な効果を取り入れた近年の円盤分裂モデルでは、円盤の向きが揃わない可能性も指摘されています。

今回の“VLA 1623A”の観測結果はこの考え方と一致するのですが、乱流分裂モデルの可能性を否定するものではありません。

今後期待されるのは、このような観測を増やすことで連星系形成のモデルの検証が進むこと。

回転軸が不揃いな原始惑星系円盤からは、不揃いな惑星系が生まれてくる可能性もあります。
なので、連星系形成の研究から多様な系外惑星の誕生の謎にも迫ることができるのかもしれませんね。
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双子原始星からの不揃いな分子流と原始惑星系円盤(イメージ図)。


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なぜ分子雲の量の割に作られている星の数は少ないのか? それは何かが高密度ガスの形成を阻害しているから

2019年08月10日 | 星が生まれる場所 “原始惑星系円盤”
天の川銀河の大規模分子雲サーベイプロジェクト“FUGIN”の観測データから、星の生産現場となる高密度ガスの量が、低密度ガスに比べて非常に少ないことが明らかになりました。

なぜ、高密度ガスの量は少ないのでしょうか?
低密度ガスが自身の重力に任せて自由に高密度ガスを作った場合、分子雲の大部分が高密度ガスで満たされてしまうはずです。

そうならないのは、高密度ガスの形成を阻害している何かかがあるから…
それにより生まれてくる星の数が少なくなっているそうです。


銀河を漂う冷たいガス“分子雲”

銀河に含まれる数百億~数千億もの星々は、銀河を漂う“分子雲”と呼ばれる冷たいガスから生まれます。

分子雲には、ガスが薄い部分“低密度ガス”とガスが濃い部分“高密度ガス”があり、低密度ガスの中で高密度ガスが作られ、さらにその高密度ガスの中から星が作られていきます。

様々な銀河の観測から分かってきたのは、銀河に分布する分子雲の総量に比べて作られている星が少ないこと。
簡単な計算モデルから予想される数の1000分の1しか誕生していないようです。

もちろん、高密度ガスにおける星の誕生過程の理解については様々な研究によって進んでいます。
でも、分子雲で作られる星の数が予測よりも少ないという問題の解決には至らず…

そもそも、高密度ガスがどのようにして作られるのか、分子雲の中に高密度ガスはどれくらいあるのかという根本的なことも、まだよく分かっていないんですねー


なぜ、分子雲の量の割に作られている星の数が少ないのか

今回、こうした分子雲の問題解明を目指して研究を進めたのは国立天文台のグループ。
野辺山45メートル電波望遠鏡で2014年から2017年に実施された天の川の分子雲サーベイプロジェクト“FUGIN”の観測データを解析し、2万光年にわたる範囲の低密度ガスと高密度ガスの量を精密に測定しています。

低密度ガスと高密度ガスはサイズが大きく異なり、高密度ガスは低密度ガスの広がりの100分の1から1000分の1くらいしかありません。

そのため、これまでの観測で問題になっていたのが、高密度ガスをとらえる高い空間分解能と、低密度ガス全体をカバーする広い観測範囲を両立すること。

この問題を解決したのが、天の川銀河の電波地図作りを目指してきたプロジェクト“FIGIN”でした。
このプロジェクトにより、世界で初めて低密度ガスと高密度ガスの広域かつ詳細な分布が描き出され、分子雲の全貌が明らかになります。
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プロジェクト“FUGIN”で得られた天の川の分子雲の分布。
(上)分子雲の3色電波画像(赤が12C0、緑が13C0、青がC180の分子からの電波強度)、
(下)低密度ガス(左)と高密度ガス(右)の電波強度画像。
低密度ガスは12C0で、高密度ガスはC180で検出される。
低密度ガスに比べて高密度ガスがごく一部でのみ検出されていることが分かる。
研究の結果分かってきたのは、2万光年の範囲に含まれる低密度ガスの総質量が太陽1億個分であるのに対し、高密度ガスはその3%に当たる太陽300万個分しかないこと。

そう、分子雲の大部分が低密度ガスであり、高密度ガスはほんのわずかしか存在していないんですねー

さらに分かってきたのが、天の川銀河の渦状腕では高密度ガスが質量比およそ5%とやや多く、腕の間の空間や棒状構造では質量比0.5%以下と少なくなることでした。

低密度ガスが自身の重力に任せて自由に高密度ガスを作った場合、予測では分子雲の大部分が高密度ガスで満たされてしまい、低密度ガスがほとんど無くなってしまうことになります。

でも、現実はその逆… 高密度ガスはほとんど作られていません。

そこで考えられるのが、何か高密度ガスの形成を阻害しているものがあり、それにより生まれる星の数も減ってしまっているということ。
阻害している何かが分かれば、分子雲の量の割に作られている星の数が少ないという問題も解決するはずです。

今後、銀河の様々な場所での低密度ガスと高密度ガスの量や状態をさらに詳しく調べていけば、高密度ガス雲の形成を阻害する要因が突き止められ、高密度ガス形成と星形成にかかわる謎の解明が進む っといいですね。


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原始星の成長過程は質量にかかわらず似ていることが、大質量原始星を取り巻くガスの円盤から分かってきた。

2019年07月30日 | 星が生まれる場所 “原始惑星系円盤”
アルマ望遠鏡の観測により、太陽の10倍重い原始星を取り巻くガスの円盤の様子が高解像度でとらえられたんですねー

しかもガスの円盤は、地球から見てほぼ真上から観測することが可能な位置関係。
ガス円盤の非対称な構造や、外側から円盤に向ってガスが落下していることなど、円盤の様子が明らかなったようです。
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“G353.273+0.641”のイメージ図


大質量星の誕生と成長

夜空に光る恒星の質量は、太陽の数十倍以上から太陽の数分の一まで様々です。
このうち大質量星は数が少なく、太陽系の近くには存在していないんですねー

さらに、進化のスピードが速いといった理由により、その誕生と成長について多くの謎が残されています。

たとえば、大質量星の赤ちゃん星(原始星)がどのように周囲のガスやチリを取り込んで成長していくのか? その過程が小質量原始星の場合とどれほど異なるのか? っといったことは十分には分かっていませんでした。

今回の研究では、山口大学の研究チームが太陽の10倍の質量を持つ原始星“G353.273+0.641”をアルマ望遠鏡で観測。大質量原始星の成長過程を明らかにするのが目的でした。
  “G353.273+0.641”は、さそり座の方向約5500光年彼方に位置している。

これまでに詳しく調べられている大質量原始星の多くは、星の周囲を取り巻く円盤“原始惑星系円盤”を横から見る位置関係にありました。
なので、円盤の外側のガスと内側のガスが重なって見えてしまい、中心星のすぐ近くを調べることが困難でした。

一方で“G353.273+0.641”は、地球から見て周囲の円盤をほぼ真上から観測することが可能な位置関係にあります。
そう、“G353.273+0.641”は大質量原始星を取り巻く“原始惑星系円盤”の様子を詳しく調べるのに、うってつけの天体といえるんですねー


円盤の不安定さが非対称な構造を作り出している

観測の結果明らかになったのは、“G353.273+0.641”の周囲を取り巻く円盤が半径250天文単位(約380億キロ)まで広がっていることでした。

この距離は、太陽系における海王星軌道の8倍以上の大きさに相当。
でも、他の大質量原始星の周囲で見つかった円盤に比べると小さいものでした。

他に明らかになったのは、円盤の中でも中心星の東側が一段と強い電波を発していること。
このことは、円盤が非対称な構造を持っていることを示す結果になり、大質量原始星の周囲で非対称な円盤がとらえられた初の観測例でした。
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大質量原始星“G353.273+0.641”の疑似カラー合成画像。
(赤)は原始星周囲のコンパクトな構造、(黄)は円盤、
(青)は外側に広がるガス(エンベロープ)。
ガスが原始星に落下していくペースを調べることで、原始星の年齢を推測することができます。

これによると、“G353.273+0.641”の年齢はわずか3000歳ほどになり、これまで知られている大質量原始星の中では最も若いことが分かりました。
そう、赤ちゃん星の成長の一番初期の段階を見ていることになるんですねー

今回観測された円盤質量の見積もりは太陽の2~7倍ほど。
中心星の質量は太陽の10倍なので、円盤の質量は中心星の20~70%もあることになります。

円盤の質量と内部のガスの運動を詳しく調べた結果分かってきたこともあります。
それは、この重い円盤は安定的に存在することはできず、今後分裂して中心星に落下していきやすい状態になっていること。
円盤に非対称な構造を作り出している原因は、このような不安定な状況なのかもしれません。

これらが示しているのは、“G353.273+0.641”が活発に成長している途中段階にあることです。

今回の観測結果は、これまでに観測されている小質量原始星の周囲と性質がよく似ていて、単純に規模を大きくしたものといえます。
原始星の成長過程は質量にかかわらず、似たものであることを明確に示す結果でした。

これまで、大質量原始星の周囲は温度が高く、円盤が安定化しやすいのではないかという認識がありました。

でも、今回の観測で確かめられたのは、成長初期の重い円盤はやはり不安定になるということ。
円盤の力学状態が、原始星へのガス供給にどのように影響するのか? を探る上で重要な発見になります。

ただ、ちぎれた円盤片は今後中心星へ落下するのか、あるいは円盤内に残って兄弟星を作るのかなど、まだまだ考えるべき新しい課題があるようです。


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“原始惑星系円盤”に小さな電波源を発見! 惑星形成のプロセスの重要な部分を初めてピンポイントで観測できたのかも

2019年07月07日 | 星が生まれる場所 “原始惑星系円盤”
若い星を取り巻く“原始惑星系円盤”の中に発見されたのは、周囲より電波を強く放つ小さな場所でした。

そこは、今まさに惑星が形成されている現場なんだとか…
このような惑星誕生の現場をピンポイントで特定できたのは、今回初めてだそうですよ。


惑星の周囲を回転する円盤状の構造“周惑星円盤”

惑星は、若い恒星を取り巻くガスとチリの円盤“原始惑星系円盤”の中で形成されると考えられています。
  原始惑星系円盤とは、誕生したばかりの恒星の周りに広がるガスやチリからなる円盤状の構造。
  恒星の形成や、円盤の中で誕生する惑星の研究対象とされている。


初期の“原始惑星系円盤”には、数μmから数㎜の微小なチリが存在していて、このチリが時間とともに合体し成長することで惑星の種“微惑星”になります。

この“微惑星”が自身の重力によって周りのチリやガスを取り込みながら成長し、最終的には惑星になるんですねー

このとき、取り込まれる物質は惑星の周囲を回転する円盤状の構造“周惑星円盤”を作る っと理論的に予測されています。

ただ、これまで考えられている“周惑星円盤”の大きさは“原始惑星系円盤”全体の約1%…
非常に小さいこともあり、これまでの観測では“周惑星円盤”は見つかっていませんでした。


“原始惑星系円盤”に見つかった小さな電波源

今回の研究では、惑星誕生の詳細なプロセスを調べるため、“原始惑星系円盤”の存在が知られている若い星“うみへび座TW星”を、国立天文台のチームが観測しています。

地球から194光年の距離に位置する“うみへび座TW星”の年齢は約1000万歳ほど。
若い星の中では最も太陽系から近く、太陽と同じくらいの重さの恒星なので、太陽系の起源を知る手がかりになる天体として多くの観測が行われてきました。

研究チームでは、これまでの観測の約3倍という非常に高い感度で、“うみへび座TW星”の“原始惑星系円盤”の詳細な電波強度分布を調査。
すると、これまで見つかっていなかった小さな電波源が1つ発見されたんですねー

この電波源の位置は、円盤の中心から約78億キロの距離(太陽~海王星の約1.7倍)。
周囲に比べて1.5倍ほど電波が強くなっていました。

大きさは、長さが6億キロ程度、幅は1億5000万キロ程度に広がっていて、円盤の回転方向にわずかに伸びていました。

このような微小な電波源が“原始惑星系円盤”に見つかったのは今回が初めてのことでした。
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アルマ望遠鏡で観測した“うみへび座TW星”の“原始惑星系円盤”の電波強度分布。


小さな電波源の正体

小さな電波源の正体については、主に2つの可能性を挙げることが出来ます。

1つ目は“周惑星円盤”です。
この場合、発見された構造の大きさから見積もると、中心で形成されているのは海王星質量程度の惑星だと考えられます。

赤外線波長の観測で明るい天体が見られないことや、円盤中のこの位置に隙間が見られないので、この距離に木星質量程度の重い惑星は存在しないと考えられていました。もちろん、海王星質量程度の軽い惑星の存在についても同様です。

でも、今回の観測結果から、海王星質量程度の軽い惑星が存在する可能性が示されたんですねー

一方で、観測された電波強度は、海王星サイズの惑星を取り巻く“周惑星円盤”と考えるにはやや強すぎるという問題もあります。

また、“周惑星円盤”だとすると想定される形は惑星を中心とした円形であるはず。
でも、観測された電波源の形は楕円形… この点も不自然でした。

っと言うことで、2つ目の可能性です。
電波源の正体は“周惑星円盤”でなく、小さいガス渦に溜まったチリというものです。

地球で高気圧や低気圧が発生するように、“原始惑星系円盤”内でも局所的に渦を巻く流れがたくさん存在すると考えられています。
そこに掃き集められて溜まっているチリが電波源になっているのかもしれません。

この構造は、チリが合体して惑星になる最初期段階の重要なものといえます。

渦にとらえられたチリは楕円状に広がることが理論的に予言されていて、今回の観測によって見出された電波源の構造とよく一致しています。

ただ、そのような小規模の高気圧が“原始惑星系円盤”内に1つだけ存在するというのも不自然です。


どちらであっても惑星形成のプロセスの重要な部分の発見になる

今回の観測結果は、“周惑星円盤説”と“ガス渦説”のどちらとも一致する部分と、不自然な部分の両方を持ち合わせていて、正体を正確に突き止めることができていません。

ただ、“ガス渦説”であったにせよ、いずれは惑星の形成に向かっていくことになります。
なので、惑星形成のプロセスの重要な部分を初めてピンポイントで観測できたという点では、大きな意義のある成果になると思います。

形成中の惑星は、周囲の物質を取り込む際に温度が高くなるので、“周惑星円盤”の内縁が特に暖められることになります。

“周惑星円盤”とその中心に惑星は存在しているのでしょか?

アルマ望遠鏡を使ったより高い解像度の観測を行えば、今回発見された電波源の内部の温度分布を明らかにできるはず。
さらに、すばる望遠鏡などを使って、惑星の周囲にある水素が高温になったときに放つ光の観測準備も進めらています。
なので、その中心に惑星があるかどうかは近い将来に分かりそうですよ。


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