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太古の火星は温暖化と寒冷化を数千万回にわたって繰り返していたようです

2020年06月13日 | 火星の探査
今回、NASAの火星探査車“キュリオシティ”が見つけたのは、太古の火星環境についての証拠。
太古の火星には、水が数百年も流れ続ける温暖な時期や、湖が凍ってしまう寒冷な時期があったようです。


太古の湖の泥でできた堆積物の層

火星の上空を周回する探査機や、地表に着陸した探査車などによって、火星では水が干上がったことで形成された地形や鉱物が続々と発見されています。

このことから、太古の火星に水が存在したことは確実視されているんですねー

さらに、私たちの気を引くのが有機物の発見です。
水と有機物とくれば、生命が存在していたのか? そして今も生き残っているのか? っと考えたくなりますよね。
でも、過去の火星が、どのような環境だったのかを調べるのは容易なことではありません。

特に、湿潤な環境を維持できるほど温暖な気候であったかどうかは重要な問題になります。

NASAの火星探査車“キュリオシティ”により分かっているのは、かつての火星は温暖化と寒冷化を繰り返していた可能性があること。

“キュリオシティ”が着陸したゲールクレーターの中央に位置するシャープ山の裾から見つかったのは、太古の湖の泥でできた厚さ約300メートルの堆積物の層でした。

堆積物がこれだけの厚さになるには、数百万年から数千万年にもわたり温暖で湿った期間が続き、湖に水が流れ込み続けたはずです。

ところが、その一方でクレーターの中には、火星が寒冷期に転じたときの名残りも見つかっているんですねー
ゲールクレーターの一部を満たす湖のイラスト。“キュリオシティ”によるクレーターの堆積物の探査から、30億年以上昔に湖が満たされたり干上がったりを、数千万回にわたって繰り返していたことが示唆されている。(Credit: NASA/JPL-Caltech/ESA/DLR/FU Berlin/MSSS)
ゲールクレーターの一部を満たす湖のイラスト。“キュリオシティ”によるクレーターの堆積物の探査から、30億年以上昔に湖が満たされたり干上がったりを、数千万回にわたって繰り返していたことが示唆されている。(Credit: NASA/JPL-Caltech/ESA/DLR/FU Berlin/MSSS)


かつての火星に存在した濃い二酸化炭素の大気

今回の研究を進めているのはNASAゴダード宇宙飛行センターのチーム。
“キュリオシティ”が集めたチリと岩石のサンプルを、探査車に搭載された試料分析ユニット“SAM”の中で最大摂氏約900度にまで加熱。
鉱物が分解して放出する二酸化炭素と酸素、およびその際の温度を調べています。

かつての火星には、濃い二酸化炭素の大気が存在したと考えられています。
その大半は宇宙空間に逃げてしまうのですが、一部は炭酸塩という形で岩石に閉じ込められた可能性があります。

岩石から、その二酸化炭素、あるいは二酸化炭素を構成する酸素原子と炭素原子を取り出して分析することで、太古の火星の大気や環境に関する情報を得ようというわけです。

同じ酸素という元素でも、“同位体”といって微妙に質量が異なる複数の原子が存在しています。

研究チームが突き止めたのは、一部の鉱物に含まれる酸素原子が、大気中の二酸化炭素を構成する酸素よりも平均して軽いこと。

二酸化炭素が水に溶けて水底の岩石に取り込まれるという単純な過程では、重い酸素の同位体が選ばれやすくなります。
でも、軽い同位体が多かったということは、反応が起こった時点で湖が凍っていて、重い同位体が氷の中に取り込まれていたという可能性があります。

ある時点で、火星は温暖で湿潤な時代から、現在のような冷たく乾いた時代へと移行したことになります。
分からないのは、いつどのように気温の変化が起こったのかということ。

気温の変化を引き起こす要因としては、火星の自転軸の傾きや火山の活動量などが考えられるようです。


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生命誕生前の初期の地球に似た姿をしていた? 隕石が物語る40億年前の火星環境。

2020年05月26日 | 火星の探査
40億年前の火星に起源を持つ隕石から有機窒素化合物が検出されました。
現在の火星は乾いた過酷な環境なので、こうした化合物はすぐに破壊されてしまいます。
やはり太古の火星には大気があり温暖で水が存在していたのでしょうか。


火星で形成され地球へ飛来した“火星隕石”の分析

やっぱり、太古の火星は水や多様な有機物に富む、初期の地球のような惑星だったのかもしれません。

火星の環境に関しては、火星を直接訪れた探査機によって数多くの知見がもたらされています。
ただ、火星の試料を地球で直接分析することも、研究の上では欠かせないことなんですねー

残念ながら火星からのサンプルリターンは、まだ実現していません。
そこで、ターゲットになるのが、火星で形成された岩石が隕石の衝突などで火星重力圏から飛び出し、地球へ飛来した“火星隕石”です。

その“火星隕石”の中でも、研究が重ねられてきたのが1984年に南極で発見された“Allan Hills 84001”。
この隕石には、40億年前の火星において水中で沈殿した炭酸塩鉱物がわずかに含まれていて、太古の火星環境を知る手掛かりになると考えられたからです。

でも、隕石には落下地点の南極で物質が混入している上に、これまでの分析手法では実験の過程で試料が汚染されるという問題もあり、火星の有機物を探るのは困難なことでした。

特に課題になっていたのが、大気・水・岩石の間で循環する重要な元素である窒素の分析でした。

今回、JAXA宇宙科学研究所の研究チームは、試料にX線を照射して吸収される波長を調べる“窒素X線吸収端近傍構造(μ-XANES)分析”によって、“Allan Hills 84001”の炭酸塩鉱物を分析。
この手法を用いると試料を破壊せずに調べられるので、実験中の汚染を抑えることができるからでした。

研究チームではX線照射装置として理化学研究所の大型放射光施設“SPring-8”のビームライン“BL27SU”を使用。
試料を準備する過程でも、物質の混入を最低限に抑える手法も開発しています。
(a)火星隕石“Allan Hills 84001”の全体像。四角内の領域に炭酸塩鉱物が集まっている。(b)メタルテープを用いて採取した炭酸塩鉱物の粒の顕微鏡写真。(c)採取した粒の表面に付着した汚染物を走査電子顕微鏡・収束イオンビーム装置で除去したもの。(Credit: Koike et al. (2020) Nature Communications)
(a)火星隕石“Allan Hills 84001”の全体像。四角内の領域に炭酸塩鉱物が集まっている。(b)メタルテープを用いて採取した炭酸塩鉱物の粒の顕微鏡写真。(c)採取した粒の表面に付着した汚染物を走査電子顕微鏡・収束イオンビーム装置で除去したもの。(Credit: Koike et al. (2020) Nature Communications)


太古の火星は水や多様な有機物に特徴づけられる惑星だった

その結果、“Allan Hills 84001”の炭酸塩鉱物から検出されたのは、混入物ではなく火星由来と推測できる有機窒素化合物。
一方で検出されなかったのが、窒素と酸素が結びついてできる硝酸塩のような無機窒素でした。

現在の火星表面は物質が酸化しやすく、多くの化合物が短時間で壊れてしまいます。
でも、40億年前の火星は、そこまで酸化的ではなかったことを示唆する結果でした。

“Allan Hills 84001”の炭酸塩鉱物は、そのころの表層水や地下水に存在した有機物を閉じ込め、過酷な環境から守る保管庫の役割を果たしていたといえます。
(a)今回の研究で取得された窒素XANESスペクトルの一部。上3つが炭酸塩鉱物(Crb-1~3)、下は参照試薬など。水色の網掛け部分が有機窒素化合物に特有の吸収エネルギー位置。(b)有機物ピーク付近のみを拡大した図。(Credit: Koike et al. (2020) Nature Communications)
(a)今回の研究で取得された窒素XANESスペクトルの一部。上3つが炭酸塩鉱物(Crb-1~3)、下は参照試薬など。水色の網掛け部分が有機窒素化合物に特有の吸収エネルギー位置。(b)有機物ピーク付近のみを拡大した図。(Credit: Koike et al. (2020) Nature Communications)
今回検出された火星の有機窒素化合物には、外来と内製という2つの起源が考えられます。

太古の地球や火星には有機物を含む多数の隕石や彗星が衝突していて、その中の有機窒素化合物が火星の炭酸塩鉱物に取り込まれたのかもしれません。

あるいは、大気中の窒素や窒素酸化物からアンモニアを介して、有機窒素化合物を作り出す還元反応が起こった可能性もあります。

かつての火星は、現在のような乾いた“赤い惑星”ではなく、水や多様な有機物に特徴づけられる、生命誕生前の初期の地球に似た姿をしていたのかもしれませんね。


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地震や磁場など… 火星の内部構造を調べる探査機“インサイト”の初期成果が発表されましたよ。

2020年03月21日 | 火星の探査
NASAにとって火星への着陸に成功した8機目の探査機が“インサイト”です。
今回、“インサイト”の探査による初期成果が発表されたんですねー
地上を走り、丘を登ることで火星の地表を調べてきたこれまでの探査機と違い、“インサイト”の役割は火星の内部を奥深くまで調べ、地球などの岩石天体がどのように形成されたかを明らかにすること。
なので、同じ場所にとどまり火星内部の動きを正確に検知する必要があるようです。
○○○


火星の地質調査を行う探査機

NASAの低予算プログラム“ディスカバリー”の候補に挙がっていた、3つの計画から選ばれたのがインサイト計画でした。

選ばれた理由は、スケジュールがずれ込む可能性や、予算の上限を超える可能性が低かったこと。
ただ、搭載機器の“地震計”に問題が発生し打ち上げは延期…
“地震計”の改良や、完成している探査機本体や機器の保管などに更に予算が必要になってしまいます。

それでも2018年5月に火星探査機“インサイト”は打ち上げに成功。
2018年11月には火星の赤道付近にあるエリシウム平原地域の“ホームステッド”と呼ばれる浅いクレーターに着陸しています。

これまでの約1年の探査によって次々と新たな知見が得られていて、火星の地震“火震”、チリ、奇妙な電磁パルスなどについての研究が論文として発表されてきました。
火星を探査する“インサイト”(イメージ図)。
火星を探査する“インサイト”(イメージ図)。(Credit:IPGP/Nicolas Sarter)


“火震”を測定し内部構造の組成を調べる

史上初めての、火星の内部構造を調べることを目的とした探査機が“インサイト”です。

メインの測定機になる高精度の火星地震計“SEIS”では、2019年4月に初めて“火震”が検出されています。

“火震”を測定することによって、火星の内部構造の組成について知ることができます。
このことは地球を含む岩石惑星が、どのように形成されたかを明らかにすることにもつながります。

火震は予想よりも頻繁に起こっていて、2019年末までに1日当たりおよそ2回の“火震”を検出。
  これまでに“SEIS”で検出された震動は450回以上にのぼっている。
ただ、“インサイト”が最初の“火震”を検知するまでに要したのは数か月… 着陸した時期は、たまたま“火震”が起こらなない穏やかな時期だったようです。

火星には地球のように地震活動を起こすプレートはありません。
でも、“火震”を引き起こす可能性のある火山活動領域が存在しているんですねー

この火山活動領域の1つ“ケルベロス地溝帯”は、崖の側面から振り落とされたらしい岩塊が見られる場所で、これまでに検出されていたペアの“火震”と強い関係がある領域だと考えられています。

“ケルベロス地溝帯”では大昔の洪水によって長さ約1300キロにわたる溝が作られ、そこに溶岩流が流れ込んだと見られています。
その溶岩流には200万年以内に“火震”によって破壊された証拠が示されていました。
NASAの火星探査機“マーズ・リコナサンス・オービター”に搭載されたカメラ“HiRISE”で撮影されたケルベロス地溝帯。
NASAの火星探査機“マーズ・リコナサンス・オービター”に搭載されたカメラ“HiRISE”で撮影されたケルベロス地溝帯。(Credit:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)


磁力計により示されたこと

“インサイト”に搭載された磁力計により示されたことがあります。

それは、着陸地点での局地的な磁場が、これまでの予測よりおよそ10倍も強いこと。
確かに数十億年前の火星には磁場がありました。でも、現在は存在していないんですねー

“インサイト”周辺の地表の岩のほとんどは、年代が若く磁化されていないと考えられます。
なので、“インサイト”が検出した局所磁場は、地下に埋もれた古い岩に残されたものとみられます。

“インサイト”の下にある磁気層がどのくらい強く、深いのかは、探査データを地震学や地質学から得た情報と組みわせることで、明らかにできるようです。

さらに明らかになったのは、“インサイト”が検出する磁気シグナルの強さが昼と夜とで異なっていて、真夜中頃に脈動すること。
原因はまだ分かっていませんが、可能性の1つとして、火星の大気と相互作用する太陽風に関連していることが考えられています。


カメラではとらえられない旋風

“インサイト”は火星の風速、風向き、気圧をほぼ連続的に測定し、地表付近の大気が渦巻状に立ち上る突風の一種である“チリ旋風”と呼ばれる数千もの旋風を検出しています。

このことから、“インサイト”の着陸地点では、他の探査機がこれまでに着陸した場所よりも多くの旋風が起こっていることになります。

ただ、旋風は頻繁に起こっているにもかかわらず、“インサイト”のカメラではとらえられず…
火星地震計だけは、この旋風が巨大な掃除機のように、火星の表面を引っ張っていることを検知していました。

この他に“インサイト”には、火星の自転に伴うふらつきを電波で調べて、火星の核が固体か液体かを調べる装置や、熱流量測定装置などが備えられています。

これらの装置を使った今後の探査によって新発見がもたらされれば、火星や地球を含む岩石惑星が、どのように形成されたのか明らかになるかもしれません。

“インサイト”による探査が順調に進み、研究が進展することが期待されますね。
火星の地下構造と探査を示したイラスト。
火星の地下構造と探査を示したイラスト。(Credit:J.T. Keane/Nature Geoscience)


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正式に開発移行へ! JAXAが進める火星の衛星フォボスからのサンプルリターン計画MMX

2020年02月20日 | 火星の探査
日本は“はやぶさ2”に続く次世代サンプルリターン計画を進めています。
その目標天体が火星を周回する衛星フォボスに決定したんですねー
火星の衛星は人類が本格的に探査をしたことが無く、探査機による火星圏と地球の往復も世界初になります。
2024年に探査機打ち上げ、衛星のサンプルが地球に届くのは2029年になるそうですよ。
火星探査計画MMXの目的は火星の衛星フォボスとダイモスや火星圏の進化の過程を明らかにすること。


火星衛星探査計画MMXとは?

JAXAが2024年に打ち上げを目指している火星衛星探査計画がMMX(Martian Moons eXploration)です。

MMXでは、地球から打ち上げられた探査機は、約1年かけて火星圏に到着し、2025年に火星周回軌道へ投入されます。
その後、探査機は火星衛星の擬周回軌道に入り、火星衛星の観測やサンプルを採取。
観測とサンプル採取を終えた探査機は、サンプルを携えて2029年に地球に帰還することになります。
MMX軌道計画図
MMX軌道計画図
宇宙から試料を持ち帰る探査は“サンプルリターン”と呼ばれ、MMXでは“はやぶさ”と“はやぶさ2”で日本が確立したサンプルリターンの技術を継承しています。

火星を周回している衛星は直径約23キロのフォボスと、約12キロのダイモスの2つ。
今回、サンプルリターンの目標天体としてフォボスが選ばれています。
  フォボスからのサンプルリターンとしては、ロシアが2011年に探査機を打ち上げたが失敗に終わっている。


火星の衛星を探査する意味

MMX計画で目指しているのは、探査機がフォボスに数時間着陸して、表面を覆っていると見られる砂を10グラム以上採取すること。

火星に近いところを公転しているフォボスの表土には、火星本体の表層物質が混入している可能性があります。

これは、火星に小天体が衝突することによって表層物質が吹き飛ばされ、その一部がフォボスまで到達し降り積もると予想されているから。
そう、フォボスの表土を採取できれば、同時に火星表層物質も採取され、火星そのものの理解が進むことが期待できます。
  東京工業大学地球生命研究所のチームの見積もりによると、フォボスからサンプルを10g採取すれば、その中に少なくとも30粒以上の火星粒子が含まれている。これだけの量があれば、火星上で現在知られている7つの地質年代区分すべてのサンプルが得られる可能性が高い。

ただ、フォボスはダイモスより火星に近いので、火星の重力の影響を受けやすくなります。
気になるのは、サンプルの採取には探査機に多くの燃料を搭載する必要があることですね。

火星の衛星の起源には、遠方から来た小惑星が火星の重力に捕まったとする“捕獲説”と、火星に天体が衝突してできたとする“衝突説”の2つがあります。

MMXの大目標は、試料の分析と近傍観測によって、この2説に科学的に決着をつけること。
ダイモスについても、高分解能カメラで撮影するなど上空からの観測が行われることになっています。

開発中の探査機は3段式で総開発費は464億円になりますが、2つの火星衛星の起源や火星圏(火星、フォボス、ダイモス)の進化の過程を明らかにし、太陽系の惑星形成の謎を解くカギを得ることが期待されています。


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火星の“核”は地球よりも小さめ。鉄やニッケルは取り込まれず酸化して“マントル”や“地殻”へ

2020年02月19日 | 火星の探査
地球の化学組成や内部構造については、かなり詳しく分かってきているのですが、他の岩石惑星だと多くの不明な点がまだまだあります。
そこで、今回行われたのは、過去に採取された火星隕石や火星探査機の観測データに基づいた、新たな火星の化学組成と内部構造モデルの計算。
そして、分かってきたのは、火星の核は地球の核に比べて惑星全体の質量に対する割合が小さいということ。
鉄やニッケルがあまり“核”に取り込まれず、酸化して“マントル”や“地殻”に取り込まれているようです。
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岩石惑星の化学組成や内部構造はどうなっているのか

地球はどんな物質でできていて、内部はどのような構造になっているのでしょうか?
このことについては、岩石のサンプルや地震波の伝わり方などから、かなり詳しく分かってきています。

地球の表面には主にケイ酸塩でできた厚さ数キロ~数十キロの“地殻”があり、その下には厚さ2900キロほどの“マントル”と呼ばれる層が存在しています。

“マントル”の下には“外核”があり、鉄やニッケルが液体の状態で存在しています。
そして、一番内側にあるのが“内核”で、固体の鉄やニッケルで構成されています。

それでは、水星や金星、火星など地球以外の岩石惑星ではどうでしょうか?

これら岩石惑星については、これまで内部の探査や地震観測が行われた例がほとんどありませんでした。
なので、惑星内部の様子について確実なことはほとんど分かっていません。

ただ、火星については、これまでに多くの探査ミッションが行われていていることや、火星から地球に飛来した“火星隕石”も採取されています。
そう、火星は地球の次に多くの情報が得られている岩石惑星なんですねー

それでも、火星の化学組成や内部構造の詳細については多くの不明な点があります。

現在広く受け入れられている理論では、太陽系の元となった原始惑星系円盤のガスの組成は、炭素質隕石の一種である“CIコンドライト”の組成に近いものだと考えられています。
  原始惑星系円盤とは、誕生したばかりの恒星の周りに広がるガスやチリからなる円盤状の構造。恒星の形成や、円盤の中で誕生する惑星の研究対象とされている。

これは、“CIコンドライト”に含まれる重い元素の比率が太陽の大気の組成と非常によく一致しているため。
このため、これまでに行われてきた火星の化学組成の研究でも、火星の重元素の組成は“CIコンドライト”にほぼ等しいという過程に基づいているものが多くありました。

でも、最新の太陽大気の観測や隕石の成分分析の結果からは、“CIコンドライト”の重元素の組成は必ずしも火星の重元素組成に似ているとは言えないという見方も出てきています。


火星探査機“インサイト”の探査活動に期待

今回の研究では、“CIコンドライト”の代わりに、過去に採取された火星隕石や火星探査機の観測データに基づいて、新たに火星の化学組成と内部構造のモデルを導き出しています。
  研究を進めたのは、東北大学大学院理学研究科と東北大学ニュートリノ科学研究センター、アメリカ・メリーランド大学のチーム。

原始惑星系円盤の高温のガスが冷えて、惑星の材料になるチリの微粒子ができるときには、融点や沸点の高い“難揮発性”の元素から先に固体になって行くという性質があります。

一番先に固体物質に取り込まれるのは、アルミニウムやチタン・カルシウム・希土類など。
その次に鉄やニッケル、さらにナトリウムやカリウム・硫黄などを含む物質が固体になっていきます。

研究チームが計算から得たのは、火星ではカリウムや硫黄など、中程度の揮発性を持つ元素が地球よりも多くなるという結果。
さらに、地球の金属核が地球質量の約1/3を占めるのに対して、火星の金属核は火星質量の1/6程度にしかならないことも分かります。

このことが示しているのは、火星では鉄やニッケルがあまり“核”に取り込まれず、酸化して“マントル”や“地殻”に取り込まれやすいということ。火星が地球よりも酸化的な環境にあったことを示唆する結果でした。
今回の研究から導かれた火星内部の構造
今回の研究から導かれた火星内部の構造
2018年に火星に到着したNASAの探査機“インサイト”は、火星の地震の観測や、表面を掘削して史上初めて火星内部を直接観測するなどの探査をしています。

“インサイト”の探査によって火星の“核”と“マントル”の境界面の深さが分かれば、今回構築されたモデルの検証にもつながり、火星の化学組成をより正確に決めるのにも役立つと期待されているんですねー

今後、研究チームが目指しているのは、水星や金星の化学組成や内部構造についても、同じように新たなモデルを構築すること。
個人的には、大きさが地球に近く、公転軌道も比較的近いことから地球の双子星と呼ばれる金星が気になりますね。


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