雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

ドラフト会議 ・ 小さな小さな物語 ( 790 )

2016-04-03 16:31:17 | 小さな小さな物語 第十四部
プロ野球のドラフト会議の報道をテレビを中心に熱心に見ました。
今年、高校生や大学生に注目される選手が多かったそうで、社会人野球の方はやや劣勢だったそうです。
途中、ハプニングなどもあり、なかなか興味深く見させていただきましたが、毎年熱心に見ているというほどではないのですが、以前とは大分雰囲気が変わってきているように見えました。

ドラフト制度については、その功罪について散々議論されたりご高説が披露されたりしてきましたが、概ね定着してきたようです。
かつては、この制度は職業の自由に反するのではないかという意見が根強くあり、今もそういった意見を報道の中で述べられる人もいるようです。
ドラフト制度の狙いは、一つには各チームの戦力の均衡を図ることにあると思いますが、もう一つの大きな理由は、契約金の高騰を抑えることにあることは間違いありません。契約金の高騰は、チーム間の戦力補強に大差がつくことや、経営基盤の弱い球団ばかりでなく、経営の足を引っ張りはじめたということもあったはずです。
ここ一、二年はどうか知りませんが、制度の裏で、一部の球団による闇契約金などの違反行為がつい最近まで行われていたことは、周知の事実のようであり、実際に報道されたこともありました。

その点、選択される選手の方は、ドラフト制度というものを相当理解してきているような気がしました。
毎年、交渉権を得た球団が気に入らないため拒絶し、何としても意中の球団への入団を模索し、実現させた人もいますが、テレビ報道を見る限り、今年の場合は、意中の球団ではないらしい表情を示す人もいるにはいましたが、それでもかたくなに入団を拒否するという人はいない感じがしました。
職業選択の自由といっても、望みの企業で働ける人などというのは、大学生にしろ高校生にしろ、どれほどいるのでしょうか。残念ながら、職業の自由というものは、自由に選択できるということであって、望みの企業に入社できるということではないわけです。
プロ野球の十二球団は、経営力に差があるのは確かですし、選手の技術ばかりでなく人格面も含めた育成ということになれば、おそらく相当の開きがあるように思われます。そういう意味では、くじ引きで運不運が左右されるということがあるのは確かでしょうが、必ずしも環境に恵まれた中から名選手が誕生するということでもないようなので、選ばれた球団での健闘を祈りたいと思います。

テレビで、今回ドラフトの対象になった選手の、これまでの軌跡などの記録をベースに作成された番組がありました。
それぞれのエピソードは、すばらしいと言うより、実に切なく、まだ成人にも達していない人がこれほどの経験をしてきたのかと、感動しました。さらに、家族の人たちの、特に凄まじいほどの経験を乗り越えて来た方の苦労を思うと、何としてもプロ野球の世界で、はつらつとした活躍をしてほしいものです。
ただ、スポーツの世界に限らず、現実は厳しいものです。プロ野球の世界に希望に胸を含まらせて多くの若者が入団していくわけですが、ほぼそれと同じ数の人たちがプロ野球選手としての生活の幕を閉じるわけです。その中で、引退試合や、そこまでいかなくとも、記者会見など行われる選手となれば、ごく限られた人になるわけです。
そう考えれば、今回選ばれた人たちには、精一杯の活躍を期待しますとともに、人格面の充実を積み上げて行ってほしいと思うのです。そしてそれは、それぞれの球団の大きな責務であることも忘れないでほしいと思うのです。

( 2015.10.24 )

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