雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

浦は大の浦

2014-07-31 11:00:40 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第百九十二段  浦は大の浦

浦は、
大の浦。塩釜の浦。こりずまの浦。名高の浦。


浦は、
おほの浦。しほがまの浦。こりずまの浦。なだかの浦。



この段も、古歌などからの引用のようです。
それにしても、少納言さまは、「浜」と「浦」の違いを認識されていたのでしょうか。
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森は殖槻の森

2014-07-30 11:00:32 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第百九十三段  森は殖槻の森

森は、
殖槻の森。石田の森。木枯の森。
転寝の森。磐瀬の森。大荒木の森。
たれその森。くるべきの森。立ち聞きの森。
ようたての森といふが耳にとまるこそ、あやしけれ。森などいふべくもあらず、ただ一木あるを、なにごとにつけけむ。


森は、
うゑつきの森。いはたの森。こがらしの森。
うたたねの森。いはせの森。おおあらきの森。
たれその森。くるべきの森。たちぎきの森。
ようたての森というのが耳にとまったが、どうも変です。森などというものではなく、たった一本木があるだけなのに、どういうつもりでつけたのかしら。



「森は」という章段は、第百七段にも登場しています。何らかの理由で分割されてしまったというより、少納言さま自身が、うっかりと二度登場させてしまったようです。

最後の「ようたての森」というのは、蜻蛉日記に登場するものですが、泊瀬詣での時にでも実際に見た感想と思われます。
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寺は壺坂

2014-07-29 11:00:22 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第百九十四段  寺は壺坂

寺は、
壺坂。笠置。法輪。
霊山は、釈迦仏の御すみかなるが、あはれなるなり。
石山。粉河。志賀。


寺は、
つぼさか。かさぎ。ほうりん。
りゃうぜんは、釈迦仏の御すみかなので、しみじみと感じられます。
いしやま。こかわ。しが。



霊山というのは、本文の説明だけ見れば、印度マガダ国の聖地霊鷲山を指しているみたいですが、無量寿寺を指しているようです。
少納言さまは、宮仕えの前から相当仏教に関心を持っていたようですので、このあたりの知識は豊富だったと思われます。
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暑さを物ともせず ・ 心の花園 ( 61 )

2014-07-29 08:00:54 | 心の花園
          心の花園 ( 61 )
               暑さを物ともせず

あまりの暑さに、人間ばかりでなく動物たちも植物たちも、その多くは元気をなくしています。
心の花園の花たちも、その多くは少ししぼんで見えます。
しかし、その中でも、暑さなど物ともしないで、さっそうと花を咲かせている物もあります。「カンナ」もその一つです。

「カンナ」の原産地は熱帯アメリカのあたりです。
コロンブスが新大陸を発見した後、ヒマワリやタバコなどとともに最初にヨーロッパに伝えられた植物の一つです。
わが国には、江戸時代の前期には早くも伝えられていたようですが、現在では園芸種として多くの種類があり、2mに達する物から50cmに満たない物まであり、花色も実に多彩です。
しかも、宿根草としても生命力は強く、野原や川原などで野生化しているものも多く見られます。
花色は多彩ですが、そのいずれもが鮮やかで、しかも姿は茎をすっきりと伸ばしていて、暑さなどどこ吹く風と言わんばかりに胸を張っています。

「カンナ」の花言葉は、「快活」「情熱」「妄想」などが紹介されています。
「快活」「情熱」というのは、花全体の姿から連想されたものと分かりやすいのですが、「妄想」というのはあまりピンと来ないのですが、花の鮮やかさが幻想的である、ということによるそうです。

暑さの厳しいこの季節、さっそうと咲き誇っている「カンナ」の雄姿に、少しばかり元気を分けてもらうのはいかがでしょうか。

     ☆   ☆   ☆
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経は法華経

2014-07-28 11:00:39 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第百九十五段  経は法華経

経は、
法華経、さらなり。
普賢十願。千手経。随求経。
金剛般若。薬師経。仁王経の下巻。


経は、法華経、ありがたいことは言うまでもありません。
ふげんじふぐわん。せんじゅ経。ずいぐ経。
こんがうはんにゃ。やくし経。にんのう経の下巻。



前段「寺は」からの連想です。
経典なども、少納言さまには相当の知識があったと考えられます。また、当時の経典は、単なる宗教書ということではなく、貴族社会においては教養の重要な一分野を成していました。
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仏は如意輪

2014-07-27 11:00:40 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第百九十六段  仏は如意輪


仏は、如意輪。千手。すべて六観音。
薬師仏。釈迦仏。
弥勒。地蔵。文殊。
不動尊。普賢。


仏は、にょいりん。せんじゅ。六観音(如意輪、千手、聖、十一面、准胝、馬頭)は、すべてありがたい。
やくしぼとけ。しゃかぼとけ。
みろく。じぞう。もんじゅ。
ふどうそん。ふげん。



お寺、お経、そして仏様と続いています。つまり、仏法僧三宝というわけです。
少納言さまも、ある時期、相当熱心に八講に出掛けたりされていたようですが、当時の仏教は、単なる信仰というだけでなく、教養であり、医術であり、社交の場であり、特に貴族層にとっては生活の一部そのものであったようです。
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書は文集

2014-07-26 11:00:49 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第百九十七段  書は文集

書(フミ)は、文集(モンジフ)。文選(モンゼン)、新賦(シンプ)。
史記、五帝本紀。
願文(グワンモン)。表(ヘウ)。博士の申文(マヲシブミ)。


書物は、白氏文集。文選、中でも新賦がいい。
史記。五帝本紀。
願文(神仏に奉る祈願文)。表(天皇に奉る上奏文)。博士の申文(叙位任官の申請書)。



ここでいう書は、きちんとした文章で書き記されたものを指しています。主として漢文で書かれています。
少納言さまは、この面の知識も高かったことは、枕草子の随所に出てきます。当時は、女性が真名(漢字)を用いたり、漢詩漢文にあかるいということは、必ずしも好意的にはとられませんでした。
知識はあっても隠しているのが美徳だという考えも強く、その点、少納言さまは表に出す部分が多かったようです。そのことを紫式部あたりに非難されたりしています。
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物語は住吉

2014-07-25 11:00:13 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第百九十八段  物語は住吉

物語は、
住吉。
宇津保、殿移り。国譲りは憎し。
埋れ木。月待つ女。梅壺の大将。道心すすむる。松が枝。
狛野の物語は、古蝙蝠探し出でて持ていきしが、をかしきなり。
物羨みの中将。宰相に子生ませて、形見の衣など乞ひたるぞ憎き。
交野の少将。


物語は、
住吉。(「住吉物語」というのが現存しているが、それは後世の物らしい)
宇津保物語、中でも殿移りの巻がいい。国譲りの巻は憎らしい。
埋れ木。月待つ女。梅壺の大将。道心すすむる。松が枝。
狛野の物語は、古い扇を探し出して持っていったのが、興味深い。
物羨みの中将。宰相の君に子を生ませておきながら、形見の衣を欲しがるのが憎らしい。
交野の少将。



物語というのは、男姓の学問としての漢詩漢文に対して、女性の趣味としての仮名文字を中心とした小説などを指します。
ここに書かれている物は、ほとんどが何らかの形で伝えられていますが、消えて行ってしまった物も含めれば、意外に多くの物語が読まれていたみたいです。
そして、それらが、少納言さまをはじめとした王朝女流文学者を誕生させたのでしょう。
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陀羅尼は暁

2014-07-24 11:00:54 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子  第百九十九段  陀羅尼は暁

陀羅尼は、暁。
経は、夕暮。


陀羅尼(ダラニ・梵語で唱える真言)は、明け方に聞くのが良い。
経は、夕方。



きわめて簡潔、あっけないような章段ですが、お経を唱えるのも、朝、夕に適性があるというのが面白い。
これは、当時の風習であったのか、少納言さま独特の美意識であったのかは不明です。
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遊びは夜

2014-07-23 11:00:36 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第二百段  遊びは夜

遊びは夜。人の顔見えぬほど。

奏楽は、夜が良い。演奏する人の顔が見えぬころが。


遊びというのは、楽器の演奏をいいます。
「夜が良い」、というのには、夜、灯火のもとでの演奏の方が情緒的だということもあると思うのですが、「人の顔見えぬほど」と明記しています。
これは、笙などを吹くのはかなりの力を入れますから、相当ひどい表情になるのでしょう。そんな顔は見たくもないので夜が良い、ということで、少納言さまらしい辛辣さが覗いています。
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