雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

オンブバッタ ・ 小さな小さな物語 ( 791 )

2016-04-03 16:29:51 | 小さな小さな物語 第十四部
当地も朝夕は少し冷え込むようになってきました。
わが家のささやかな庭も、あれほど我が物顔にしていた雑草たちも勢いを無くし、それはそれで少々寂しいものです。
菜園と自称している部分には、ネギやインゲンの他に青菜を三種類ばかり植えています。その中に葉大根があるのですが、夏過ぎから三回目に蒔いた物が今元気に育っています。先の二回は、毎年のことながら、青虫毛虫の格好の餌場となり、人間様の口には回って来ないままでした。
そもそも、葉大根を植えた理由は、普通の大根では、すぐ近くのマーケットで売られている物に比べて、あまりにも見劣りすることと、根の部分より葉の部分の方が重宝されるという、何とも情けないことに起因しているのです。

その葉大根の三回目の物は、さすがに青虫たちも少なくなり、まあまあ順調に育ってきましたので、少し前から一度くらいは食べたいものと収穫のチャンスを狙っているのですが、今もなおオンブバッタの食糧源になっているようで、手を出しかねているのです。
今朝などは、大分冷え込んでいましたから、ぼつぼついなくなっているのではないかと思ったのですが、雑草が少なくなったことや、彼らはネギやニラはもちろん、キクナもあまりお気に入らないようで、わが家の庭の中では、葉大根が一番気に入ってくれているものですから、今しばらくは、人間などが手を付けてはいけないようです。

ところで、このオンブバッタ、いつも子供を背負っていて、寒くなって親が死んで行くのは自然の摂理だとしても、子供の方は可哀そうだと思い、少し調べてみました。
まず、驚いたことは、オンブバッタと口にはしていましたが、これは通称で正確な名前があるものとばかり思っていたのですが、なんのなんの、れっきとした正式名称なんですよ。因みに記してみますと、昆虫綱ーバッタ目ーオンブバッタ科ーオンブバッタ属に属している物が何種類かあるようです。
それに、負ぶっているのは子供ではなく、オスだそうで、メスの方がずっと大きいのですが、いつも一緒に行動しているらしく、それだと命が消えていく時も一緒だと思い、何だか安心しました。

この季節、わが家の庭で一番図体が大きいのは、酔芙蓉です。今年は開花するのが例年より少し早かったのですが、その後数多くの花を楽しませてくれましたが、ぼつぼつ終わりが近付いたようです。花が終わる頃、根元近くの幹だけ残し丸坊主にするのですが、別に枯らすわけではないのですが、少しばかり切ない気がします。
頑張っているオンブバッタの残されている命も僅かでしょうし、命には関係ないとしても、多くの花を咲かせ今なお青々と茂っている枝を全部切り取るのですから、酔芙蓉にすれば良い気分ではないことでしょう。
それでも、やはり季節は何の躊躇を払うことなく流れて行っており、秋は、自分もその中にいることをほんの少しばかり感じる季節でもあるようです。

( 2015.10.27 )

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