雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

長生不死の法 ・ 今昔物語 ( 6 - 43 )

2021-07-14 08:22:54 | 今昔物語拾い読み ・ その2

       『 長生不死の法 ・ 今昔物語 ( 6 - 43 ) 』


今は昔、
震旦の斉(セイ・( 550 - 577 ) )の時代に一人の僧がいた。名を曇鸞(ドンラン・中国浄土教五祖の第一。542年に没しており、時代が少し違う。)という。
その人は、震旦の仙経(センキョウ・道教の聖典。)十巻を伝え受けて、これを見て「長生不死の法、これに勝るものはあるまい」と深く信じて、静かな場所に隠遁して、ひたすら仙術を学んだ。

その後、曇鸞は三蔵菩薩(菩提流支のこと。北天竺の人。)に会って尋ねた。「仏法の中に、長生不死の法で、この地の仙経に勝るものが有るや否や」と。
三蔵は驚いて仰せになった。「この地の、どこに長生不死の法が有るのか。たとえ、命を延ばす手段を得たとしても、遂には命が尽きることは疑うまでもない」と。そして、観無量寿経(浄土三部経の一つ。)を以て曇鸞に仏法を授けて仰せられた。「この大仙(仙経より上回っているとの表現らしい。)の法を修行すれば、永遠に生死(ショウジ)を離れて解脱を得る(悟りを得る、といった意味か?)ことが出来る」と。
曇鸞はこれを聞いて、悔い悲しんで、すぐさま火で以て仙経を焼いた。

その後、自らの命が終ることを知ると、香炉を以て西方に向かって阿弥陀仏を念じ奉って息絶えた。
その時、空中に音楽があり、西方よりやってきてすぐに還っていった。世間の人はこれを聞いて、
語り伝へたるとや。

     ☆   ☆   ☆ 
 


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