雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

南海トラフ地震臨時情報 呼びかけ終了

2024-08-15 18:44:59 | 日々これ好日

  『 南海トラフ地震臨時情報 呼びかけ終了 』

  南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)について
  政府は 異常は観測されなかったとして
  防災対応の呼びかけを 終了したと発表
  ただ 発生の可能性が消えたわけではなく
  防災対応に留意しつつ 通常生活を送るようにとのこと
  最悪事態が起らなかったと 喜ぶべきなのか
  この一週間と これからと どう違うのだろう
  テレビ報道によると ある温泉街は
  この情報による風評被害は 5億円に上るという
  当然 何らかの手当ては なされるのでしょうねぇ

                 ☆☆☆ 

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身代わりになった普賢菩薩 ・ 今昔物語 ( 17 - 40 )

2024-08-15 08:08:48 | 今昔物語拾い読み ・ その4

   『 身代わりになった普賢菩薩 ・ 今昔物語 ( 17 - 40 ) 』


今は昔、
近江国に金勝寺(コンショウジ・滋賀県に現存。)という山寺があった。その山寺に光空(コウクウ・伝不詳)という法華経の持経者が住んでいた。
長年この山寺に住み、日夜に法華経を読誦して怠ることがなかった。その声はまことにすばらしく、聞く者でこれを貴ばないということがなかった。また、この持経者は慈悲の心があり、人を慈しむ心が深かった。

ところで、、その国の[ 欠字。郡名が入るが不詳。]の郡に兵平介[ 欠字。名前が入るが不詳。](ヒョウヘイスケ××・伝不詳)という猛々しい男がいた。この者は古(イニシエ)の平将門の一族である。性格は荒々しく、生き物を哀れむ心がなかった。朝には山野に出掛けて鹿や鳥を狩り、夕べには入江や川に行って魚や貝を捕った。
ただ、この男は、このような悪人ではあったが、あの光空持経者の読経を聞いて感激し貴く思い、初めは山寺にいる光空に帰依していたが、後には光空を自分の家に迎えて住まわせ、経を読ませて帰依して数年が過ぎた。
ところが、この兵平介には若い妻がいたが、いつしか光空持経者と密かに男女の仲になっていると、兵平介の従者が主人に密告した。

兵平介はこれを聞くと、たちまち怒りだし、事の真偽もたださずに、「まず持経者を殺してやろう」と思って、「山寺へ行くぞ」とだまして、持経者を連れて山の中へ行って、突然持経者を捕らえて、木の根元に縛り付けた。
持経者は、びっくりして恐れ悲しんだ。いったいどういう事なのかわけが分からずにいると、兵平介は大きな声で、「そいつのど真ん中を、すぐに射ろ」と命じた。
命令を受けて、従者の中で腕自慢の者が、弓を取って矢をつがえて強く引き、持経者の腹を狙って射ると、その矢は持経者に当たらず、傍らに落ちた。
「これは、どうしたことか」と言って腕自慢の従者は、また矢を放ったが、前と同じように傍らに落ちた。

持経者は心乱れることなく、これも前世の因縁によるものだと観念して、「その為、自分は無実の罪によって、まさに命を失うことになった」事を思って、声を挙げて法華経を誦した。
『 於此命終 即往安楽世界 阿弥陀仏 大菩薩衆 囲遶住所 青(「生」が正しい)蓮花中 宝座之上 』
( オシミョウジュウ ソクオウアンラクセカイ アミダブツ ダイボサツシュウ イニョウジュウショ ショウレンゲチュウ ホウザシジョウ )
( 命終る時 すぐに極楽浄土におもむき 阿弥陀仏や菩薩衆に 取り囲まれている 蓮花の宝座の上に 生れるであろう 「法華経の薬王品の中にある一文」)
と唱えると、兵平介の従者共の中にも、これを聞いて、貴んで泣き出しそうになっている者もいたが、主人を恐れて堪えている。

さて、このように二度も矢が当たらなかったことに兵平介は激怒して、「お前たちの射るのが下手だからだ」と言って、自ら弓を取って射たが、前と同じように傍らに落ちた。
そこで、兵平介も驚き、怪しく思って弓矢を棄てて、「これは、ただ事ではない。これほど近くから射たのに、三度も当たらないとなると、仏法の守護神が加護なさっているからであろう」と恐れて、すぐさま持経者を許した。
そして、兵平介は持経者に向かって、「私は大変大きな間違いを致しました。これから後は、決してあなたに危害を起こすようなことは致しません」と誓って、涙を流して罪を懺悔し、持経者を家に連れ帰った。

兵平介の、その夜の夢に、金色の普賢菩薩が白象(ビャクゾウ・普賢菩薩の乗り物。)にお乗りになって現れたが、その御身に、矢が三筋射立てられていた。そこで兵平介は、「なにゆえに、普賢菩薩様の御身に矢が立っているのですか」とお尋ねした。普賢菩薩は、御自ら、「汝が昨日、無実の事で持経者を殺そうとした。我は、その持経者に代わって、その矢をこの身に受けたのである」と仰せられた。
そこで、夢から覚めた。

その後、兵平介はますます恐れおののいて、「自分は無実の事で、法華経の持経者を殺そうとしたので、普賢菩薩が示して下さったのだ」と悲しく思い、持経者に向かって涙を流して懺悔し、この夢の事を語り聞かせた。そして、あの無実の事を告げた従者を、罰して永久に追放した。

一方で、持経者はこの二、三日の間、この度の事などを考え続けていて、この世を厭う心が深まり、本尊と法華経をお連れ申し上げて、真夜中の頃にその家を密かに抜け出して去ろうとしていた。
すると、兵平介のその夜の夢に、普賢菩薩が現れて、「汝は、長年我を供養した。その功徳によって、我は汝を浄土に迎えようと思う。ただ、汝は無実の事で我を殺害しようとした。されば、『悪を見ては遠く去り、善を見ては近づく』ということは、諸仏が説き給うことである。それゆえに、我は今、この家を去って、永久に他の所に行こうと思う」と仰せられた。そこで、夢が覚めた。

兵平介は驚き不思議に思って、持経者の部屋に、火を灯して急いで行ってみると、持経者の姿はなく、本尊と法華経もおいでにならず、すでに出て行ってしまっていた。
夜が明けてから、あちらこちらと尋ね歩いたが、全く行方が分らなかった。そのため、兵平介は嘆き悲しみ、泣きながらこの前の罪を深く悔いた。
そして、その後も長年に渡って尋ね求めたが、遂に見つかることなく終った。

されば、人は例えどのような事を聞かされても、事実か否かを確かめてから信じるべきである。一時の怒りにまかせて悪行を犯してはならない、
となむ語り伝へたるとや。

     ☆   ☆   ☆

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