雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

物価上昇 ・ 小さな小さな物語 ( 782 )

2016-04-03 16:49:18 | 小さな小さな物語 第十四部
八月の消費者物価指数(除く生鮮食品)が、前年同月比0.1%下落したということがニュースになっています。
「このところの物価上昇は厳しい」という街角などでのインタビューを聞くことがよくあります。その一方で、「デフレ脱却のための目標とした、2.0%の物価上昇目的は絶望的だ」という声も聞きます。
統計には、一般家庭に影響の大きい生鮮食品が加えられていなかったり、原油の急激な値下がりなどが微妙に影響しているようですが、どうもよく分かりません。
そういえば、出来れば触れたくないほど不愉快な新国立競技場建設の問題も、原因はその大半が根源的な部分に問題があるのでしょうが、建築費など物価の上昇もその理由にされていました。本当は、物価はどうなっているのでしょうか。

そもそも、デフレ脱却というものは、錦の御旗のようにすべてのことに優先し、神聖視されるほどのことなのでしょうか。
例えば、全国の家庭の、家族構成など様々でしょうが、すべてをひっくるめた全家庭の、経済的に恵まれていると思われる上位二割の家庭を除いた、それ以外の八割の家庭にとって、0.1%下落したと大騒ぎしている物価下落率が2.0%に達するのと、めでたくデフレ脱却目標となるのと、果たして、どちらが生活が楽になるのでしょうか。この二、三年の問題としてですよ。

デフレ、すなわち経済の縮小が続いていけば、やがて国民生活が破産に至る可能性はあるのかもしれません。同時に、家庭の可処分所得が全く変わらないとすれば、年率2.0%の物価上昇が続けば、十年もすれば、かなりの家庭が生活を維持するのが大変になるはずです。
おそらく、国家は栄え、弱者が泣く社会が実現する可能性が高まると思うのです。

私たちが間違えてはならないのは、大切なことは、家庭あるいは個人の、実質的な収入、あるいは可処分所得の向上なのであって、物価の動向は、それを実現させていくための尺度に過ぎないのです。
デフレ経済の恐ろしさは、その道の専門家といわれる方が教えてくれています。もう実体験した人はごく少数になったのでしょうが、インフレ経済も負けないほど恐ろしく、こちらは現在でも世界各地で苦しんでいる国家があります。
繰り返しますが、現在のわが国の庶民生活に必要なことは、実質収入の向上であって、国家指導者は、まずその道筋を作ることであって、単に物価を上昇させることから始めるのは邪道ではないでしょうか。
物価が上がれば企業業績が上昇し、やがて庶民の所得の増加に結び付く。理路整然としていますが、本当なのでしょうか。
企業はグローバル化していますし、世界中には私たちより経済的に苦しい人々はたくさんいます。ヨーロッパでは難民問題が浮上していますが、そう遠くない時期にわが国の課題になる可能性もあります。理路整然通りに企業から庶民へ富が流れるのでしょうか。
実質所得の向上を先に進めるのか、物価上昇を先に進めるのか、有識者と呼ばれる方々に名案を提示していただきたいと思っています。

( 2015.09.30 )

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