雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

それなりの準備をなさいませ

2017-09-29 08:35:20 | 麗しの枕草子物語
          麗しの枕草子物語

                それなりの準備はなさいませ

何が気に食わないといいましても、立派な行列を拝見しに来るのに、粗末な車に乗って、装束も全くだらしないままの人を見ますと、全くいらいらしてしまいます。
御説教などを聴聞する場合は、まあ、いいとしましょう。もともと罪を消滅してもらうためのものですからねぇ・・・。
そのような場所だとしても、やはり、あまりひどい格好ではみっともないのに、賀茂祭などには、だらしない格好での見物は勘弁して欲しいものです。

下簾もない粗末な車で、白い単衣の袖などを垂らしたりしているのは、あれで様になっているとでも思っているのでしょうか。
私などは、その日のためにと心掛けて、車の簾も新しくして、「まあまあ恥ずかしいことはないだろう」と思って出掛けてきても、自分よりよく仕立てた車を見た時などは、「ああ、何のために出掛けて来たのか」と、しょげてしまうのですよ。
いったいぜんたい、だらしない格好の連中は、どういう料簡なのでしょうか。


(第二百二十段・万づのことよりも、より)
コメント

台風襲来

2017-09-20 08:31:09 | 短詩集
          『 台風襲来 』

     濁流は 道に畑に
      避難所も 浮島となる
       「命を守れ」 警報伝える スピーカーの声


       だくりゅうは みちもはたけも
        ひなんしょも うきしまとなる
         「いのちをまもれ」 けいほうつたえる スピーカーのこえ
コメント

お人柄が出ます

2017-09-17 08:24:13 | 麗しの枕草子物語
          麗しの枕草子物語 

               お人柄が出ます

賀茂祭りの見物などは、誰もが良い場所を取りたいものですから、早くから大変な混雑です。
そんな立錐の余地もないというほど込み合っている所に、高貴な御方とみえる車が、御供の車をぞろぞろと連れてやってきますので、
「一体どこへ止めるつもりなのかしら」
と思って見ていますと、先払いの郎党たちが次々に馬から下りてきて、先に止めている車を片っ端から追い払いだしたのですよ。あっという間に場所を作り、御供の車までもずらりと並べたのには、全く「お見事」というしかありませんわ。

追い立てられた多くの車こそ気の毒なものです。せっかく早くから場所を取っていましたのに、見物には不便な空いている辺りに向かって、がたがたと車を揺すりながら移っていく姿は、実にみじめなものですわねぇ。
もっと高貴な御方の場合は、ここまでひどいことはしないものですよ。全く、身勝手なものですわ。
そうかと思いますと、鄙びた質素な車に乗っている下々の者を、しきりに呼び寄せて、見やすい場所に誘導させている高貴な御方もいらっしゃるのです。
こんなところにこそ、お人柄が出るものなんですねぇ。


(第二百二十段・万づのことよりも、より)
コメント

秋の気配

2017-09-08 08:35:32 | 短詩集
          『 秋の気配 』

     記録づくめ 雨も気温も
      なお残暑 厳しい朝
       鱗雲に 空の高さを 改めて知る


       きろくづくめ あめもきおんも
        なおざんしょ きびしいあした
         うろこぐもに そらのたかさを あらためてしる
コメント

濡衣を着せられて

2017-09-05 08:28:58 | 麗しの枕草子物語
           麗しの枕草子物語
 
               濡衣を着せられて

定子中宮さまのすばらしさにつきましては、何度もご紹介させていただいておりますが、このお話もその一つでございます。

細殿に局をいただいておりました頃のことでございます。
「どなたを訪ねたのか知らないけれど、場違いな人がね、明け方に傘をさして出ていったらしいのよ」
などと女房たちが噂しているのを、よく聞いてみますと、どうやら私のことらしいのですよ。
確かに私を訪ねて来た人はありましたが、殿上人ではないといっても、ちゃんとした人ですから、他の人からとやかく言われるはずがないのに「おかしなことだ」と思っておりましたところへ、中宮さまからの御手紙が届けられまして、
「ご返事を、今すぐに」
と、使者の女官が仰られる。

「何事かしら」
と、開けてみますと、大傘が描かれていて人物はありません。ただ、手だけが笠の柄を持っているところを描いていて、その下に『山の端明けし朝より』とだけ、お書きになっておられます。
いつも、ほんのちょっとしたお言葉でもとてもすばらしくて感心するばかりなのですが、この御手紙も、拾遺集の「あやしくもわれ濡衣を着たるかな 御笠の山を人に借られて」の歌を引用された上で、御笠の山を絵にされて、『(御笠山)山の端(ハ)明けし朝(アシタ)より』と上の句を与えて下さったのですよ。
私は日頃から、「みっともない私の歌など中宮さまに絶対お目にかけない」と思っているのですが、中宮さまのあまりにすばらしいお心遣いに、ついついご返事を申し上げることになってしまいました。

私は、別の紙を用意しまして、雨がいっぱい降っているところだけを描いて、その下に、
「『(雨)ならぬ名の立ちにけるかな』という下の句を書き、お陰さまで、これで、濡衣ということになりますでしょう」
とご返事申し上げましたが、中宮さまは、右近の内侍などにお話になられて、たいそうお笑いになられたそうでございます。


(第二百二十一段・細殿に・・、より)
コメント