『 仙人になった女 ・ 今昔物語 ( 20 - 40 』
今は昔、
大和国宇陀郡に住む女人がいた。
生まれつき麗しい心の持ち主で、他人を傷つけるようなことは全くなかった。
女は七人の子を持っていたが、家は貧しくて食べ物もなく、子供を養っていくあてもなかった。
ところで、この女は毎日沐浴して身を清め、綴(ツヅリ・藤づるの繊維で織った粗末な衣。)を着て、いつも野に出掛け、菜を摘むのを仕事としていた。また、家にいる時は、家の中をきれいにすることに務めていた。
そして、菜を調理して盛り付け、笑みを浮かべて人にそれを食べさせた。そうした事を常の事として過ごしていたが、この女は常に正直な心を持ち続けていたので、神仙(神通力を持った仙人か?)が哀れみをかけて、女は神仙に仕えることになった。
遂には、女にも神仙の能力が芽生え、春の野に出て、菜を摘んで食べているうちに、自然に仙草(仙人が食べる薬草のことらしい)を食べて、空を飛ぶことができるようになった。
心の麗しい者は、仏法の修行を行わずとも、仙薬を食べて、このように仙人になれるのである。これを服薬仙と言っているようだ。心が麗しくて仙薬を食べると、女であっても仙人になり、空を飛べるようになるのである。
されば、人は何と言っても心を麗しく保ち、他人を傷つけるようなことは止めるべきである、
語り伝へたりとや。
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