RuN RiOt -marukoのお菓子な美術室-

お菓子好き。F1好き。
美術館行くの大好き。
買い物も大好き。
休日に全力で生きるOLの日記(笑)

開山・栄西禅師 800年遠忌 栄西と建仁寺

2014-04-20 21:30:00 | 美術
見てきました

東京国立博物館

会期は2014年3月25日から2014年5月18日。

2014年は、日本に禅宗(臨済宗)を広め、京都最古の禅寺「建仁寺」を開創した栄西禅師(1141~1215)の800年遠忌。
これに合わせて、栄西ならびに建仁寺ゆかりの宝物を集めた展示です。
近年研究の進んでいる栄西の著述、建仁寺にかかわりのある禅僧の活動などを通して栄西、建仁寺が日本文化の発展に果たした役割を検証しようとするもの。
工芸や絵画の名品のほか、俵谷宗達の国宝「風神雷神図」、栄西をはじめとした建仁寺歴代の書蹟、全国の建仁寺派の寺院などが所蔵する宝物が展示されています。

会場に入って一番最初にいるのがこちら。
「明庵栄西坐像」
現存する最古の栄西像。
手を前に組み穏やかな表情です。
北条政子が創建し、栄西が開山となった鎌倉の寿福寺伝来です。

高峰東著「興禅護国論和解」
これは栄西が記した「興禅護国論」の解説書的なもの。
さて、今回の展示ですが『ようさいとけんにんじ』です。
「栄西」を「えいさい」ではなく「ようさい」と読んでいます。
それはこの書の「イヤウサイ」と読みがふられているから。
これにより建仁寺では「ようさい」と読んできました。
ただ、「えいさい」も間違いではないそうで、両方の読みがあるのだとか。
建仁寺の「ようさい」という長年の読み方も、建仁寺の文化の一つと考え、今回の展示では「ようさい」と読んでいるんだそうです。

「明庵栄西像」
現存最古の肖像だそう。
頭が四角く、先ほどの像に似ています。
袈裟の色がとてもきれい。

《プロローグ 禅院の茶》
建仁寺で行われる四頭茶会。
これは、茶道の源流とも言われているようで、会場内にはそれを再現したものが展示されていました。
抹茶を用いた喫茶法が中国から日本へ伝わったことについては、一般的には日本で最初の茶書である『喫茶養生記』を著した栄西によるものとされています。
栄西が帰国する以前の12世紀半頃までに、すでに博多には喫茶に用いた茶碗が舶載されていたようですが、いずれにしても栄西を始めとする入宋の禅僧や渡来僧の業績により、禅院を中心に広く伝えられようになったのは間違いないとのことです。

「四頭茶会所用具」
この四頭茶会、現在も建仁寺で4月20日の栄西の誕生日に行われているそうです。
その道具で実際の茶会を再現しています。
古い禅院の茶法を受け継いだものだそう。
4名の正客と相伴客各8名(合計36名)が1つの部屋の中で順番に茶をふるまわれます。
方丈の正面中央に栄西像と龍虎図。
そのようすは映像でも見れました。
まったく知らない世界でしたのでかなり興味深い。

「油滴天目」
なんて美しいんだろう、と思わず誰もが思うでしょう。
曜変天目に次いで高く評価されたそう。
深い色に細やかな斑文が美しく、小さな宇宙のよう。
金色の縁もきれいです。

《第1章:栄西の足跡》
近年、栄西の著作や自筆書状の発見が相次いでいるそう。
ここではその人となりを絵画や彫刻、九州滞在や2度の入宋、東大寺での活動などで見ていきます。

「長命富貴堆黒箱」
南宋に滞在していたころ、金の役人から送られたものだそう。
黒い漆器に文字と吉祥文らしき文様が施されています。
落ち着いた印象です。

「漢柿蔕茶入」
中国より持ち帰った茶種から茶の栽培に成功した栄西。
これは高山寺の明恵にお茶の種5粒を入れて送ったとされるものだそう。
それらは梅尾茶の礎となったそう。
渋い色です。

「栄西申状」
日本で最初の禅寺、聖福寺建立の由来を栄西自身が述べた文章。
55歳のときだそう。

「仏手」
とても大きな左手。
像高は4.8mほどと考えれるのだそう。
丈六の像で宋風。
完全な姿だったらどれほどだろうとしばし考え込みます。。

栄西著「喫茶養生記」
茶のもつ養生延命の功徳を述べ、喫茶をすすめる日本最古の茶の本です。
茶は健康にいいとこの時から理解していたことに驚き。
なお、私も癖というか習慣でほぼ毎日飲んでいます。

《第2章:建仁寺ゆかりの僧たち》
京都最初の禅宗寺院である建仁寺。
そこでは、曹洞宗の開祖道元、東福寺開山円爾、法燈派の祖無本覚心など、禅宗の発展に大きな役割を果たした人々が研鑽を積みました。
また、住職は一つの門派に独占させず、広く有能な人物を登用する十方住持制という制度を採り、多用な人材を集めました。
歴代住持には中国からの渡来僧も。
ここではそういった僧たちの像やゆかりの品が展示されています。

康乗作「蘭渓道隆坐像」
蘭溪道隆は、建仁寺の11世住持。
南宋から渡来した禅僧です。
また建仁寺の前には鎌倉建長寺の開山となっているそう。
この像は中が空洞で彫像の頭部が入っていたそう。
調査した結果、この像と同じ人物で像の元となったものの一部だとか。
おもしろい。

天境霊致賛「総持正傑大姉像」
描かれているのは女性。
豊後守護大友貞宗の後室で豊後に禅宗文化を根付かせたのだそう。
制作年の分かる女性単独の肖像画として最古のもの。
このあたりは本当に歴史のあるものばかりです。

「塩瀬家関係史料」
塩瀬家は両足院の開山、龍山徳見が元から帰国する際に同行した中国人の末裔。
で、日本にまんじゅうの製造を伝えた人、だそう。
重要です!!個人的に。笑

《第3章:近世の建仁寺》
応仁の乱により荒廃した建仁寺。
天文21(1552)年の兵火により建仁寺の堂舎と多くの塔頭を焼失する決定的な打撃を受けます。
その再興が進むのは16世紀末。
慶長4(1599)年の安国寺恵瓊により本坊方丈の再建されます。
また、寛永元(1624)年には、秀吉夫人北政所の願いにより高台寺に建仁寺295世三江紹益が中興開山として迎えられました。

三江紹益賛「奥平信昌夫人像」
描かれている女性は家康の長城で奥平信昌に嫁いだ亀姫。
美しい衣装ですが、小袖には葵の紋が入っています。

「打掛 亀甲花菱模様縫箔 高台院所用」
秀吉の正室、北政所着用の打掛として高台院に伝わるもの。
花菱亀甲文に吉祥の文様である州浜紋を組み合わせています。
すべて刺繍で施されています。
豪華で繊細。
素晴らしいです。
ただ、小さく感じる……

狩野山楽筆「蓮鷺図襖」
こちらは正伝永源院、客殿中央の間の襖は16面あるのですが、その中心部分。
金地に緑と白、蓮、燕…いきいきとしています。
華やか。

狩野山楽筆「禅宗祖師図」
2幅の掛け軸。
左はいつまでたっても悟りが開けなかった僧が箒で掃除をしていたところ、石ころが竹に当たる音を聞いてその瞬間に悟ったというお話を描いています。
右は亀に手を差し伸べる僧。
優しくかわいらしい。

「菊枝桐紋蒔絵提子」
高台寺蒔絵です。
高台寺蒔絵とは桃山時代に流行した蒔絵の様式。
高台寺の霊屋内部の蒔絵と同寺蔵の蒔絵調度類にちなんで名づけられたもの。
これは高台寺蒔絵の代表作。
三脚で手でもつところまで蒔絵が施されています。
秋草の繊細さも美しい。

「印金堂裂帖」
妙光寺境内にあった開山堂内に貼り巡らされていた印金。
それを保存のために貼り付け一帖としたもの。
こういったものを丁寧に保管しているところもすごい。

海北友松筆「雲龍図」
このあたりには海北友松の作品が。
海北友松、うみきた ともまつ ではなく、かいほう ゆうしょう。
安土桃山から江戸初期にかけての絵師。
独特の空間の取り方が素敵です。
黒い雲の合い間から巨大な龍。
うねる雲、鋭い爪、睨みつける目に、リアルな背中。
迫力満点で雄大です。
これは見れて嬉しい!!

《第4章:建仁寺ゆかりの名宝》
建仁寺は、栄西をはじめとして、中国の文化を求めた僧たちによって、時代の先端を行く文化を京都に発信してきました。
ここではその歴史の中で守り伝えられてきた名宝が展示されています。

「鉄蛸足香炉」
中国の禅院で使用されていたもので、鎌倉時代に日本へ来ました。
開山堂で現役で使われているそうです。
これは見た目がかわいらしい。
その名の通り、たこなのです。
長く複数ある足が特徴。
6本の長い足と6本の短い足が組み合わさっています。

「三具足」
三具足とは香炉・燭台(火立)・花立の各一つずつで一組となる仏具。
仏前の前に置かれた机上に配します。
絡みつくような龍がとても精巧です。

「架鷹図」
中国、南宋時代の作。
8幅の掛け軸です。
それぞれに鷹が描かれているのですが、とてもかっこいい。
鋭い目つきや美しい羽にはうっとりです。

長谷川等伯筆「松に童子図襖」
これは晩年に描かれたもの。
巻物と筆の入ったカゴを持ち、水辺に立つ童子。
左奥には松林も描かれています。
等伯といえは「松林図屏風」の印象がどうしてもありますから。

長谷川等伯筆「竹林七賢図屏風」
これは海北友松の障壁画を見て自らの作風に生かしたのだそう。
その友松の作品も第3章で展示されています。
詳細は描いていませんがもちろんよかったです。
この作品は6曲1双の屏風。
すっとまっすぐに伸びた竹が美しい。

曽我蕭白筆「山水図」
高低が強調され、しっかり描かれた建物とぼかした山の景色が蕭白らしいなぁ、と感じます。
人は豆粒のような小さな人が描かれています。
じっくり見てとても楽しい作品です。

伊藤若冲筆「雪梅雄鶏図」
雪の中にいる鶏。
山茶花の鮮やかな色彩と雪の白のコントラストが美しい。
これ、江戸時代なんだよね。。
毎回驚かされますが、毎回うっとりです。

長沢芦雪筆「牧童吹笛図」
寝そべった牛の上に童子が座り笛を吹いています。
牛がちょっと間抜けな顔をしていてかわいい。
なんとこの作品、筆ではなく、指で描いたのだとか。
弘法筆を選ばずなのです。
すごい人は道具が何であれ作品を作り上げられるのですね。

「涅槃図」
吉祥モチーフがちりばめられた作品。
菩薩に羅漢も描かれ、登場人物(動物)もかなり多く、色彩も鮮やかでにぎやかな作品。
狛犬に孔雀に…ファンタジーのようです。

「珍皇寺参詣曼荼羅」
京都東山の六道珍皇寺が参詣客で賑わう様子が描かれています。
右上には井戸が描かれています。
この井戸は小野篁があの世とこの世を行き来したとされる井戸。
この近くには、院達作の「小野篁・冥官・獄卒立像」も展示されています。
両側に冥官と獄卒を従え、堂々たる姿。
像は高さ180cmを超えるものですが、篁が亡くなった時の伝記には背丈が六尺二寸(約188cm)とあったそうです。
ほぼ等身大。
当時としては考えられないくらいの巨大な人物です。
たしかに迫力あります。
この大きさも閻魔大王の補佐、という伝説につながったのかな。。。

俵谷宗達筆「風神雷神図屏風」
今回のメインでもあるこの作品。
教科書などで誰もが目にしたことのある作品です。
本物を目の前にすると圧倒されます。
雷神と風神の迫力、躍動感、その構図、色彩。
月並みですが、素晴らしいです。

以上になります。
トーハクは展示方法もかっこいい。
今回も貴重なものがたくさんみれて満足となりました。



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ケーキ

2014-04-19 21:30:00 | 食べ物
伊勢丹寄ったらマ・パティスリーに
「ハイアット リージェンシー 東京 「ペストリーショップ」」
が来ていました。

16日から22日まで。

伊勢丹新宿店限定のケーキはクリスチャン・カンプリニのチョコレートを使ったもの。
もう一つはモンブラン。
カシスジュレとマロンクリームが入ったおしゃれなモンブランです。

うん、幸せ。



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横浜美術館コレクション展2014年度第1期

2014-04-18 21:30:00 | 美術
見てきました

横浜美術館

会期は2014年3月1日から2014年5月25日。

魅惑のニッポン木版画」を見た際についでに見てきました。
こちら撮影可能でしたので、写真と共にご紹介します。

今回のテーマは「ともだちアーティストⅡ」
いつの時代も芸術家たちはお互いの作品に敬意をはらい、交流していました。
共感し合ったもの同士がグループを作ったり。
異国の地で出会った作家同士が仲良くなったり。
助け合ったり、批判し対立しながらも、芸術を作り続けていきます。
今回はそんな作家通しのつながりを意識した展示です。


奈良美智「春少女」
新収蔵品とのこと。
かなり大きいです。
最近の作品は色彩も目つきも優しくなってきましたね~。

さて、ここからは友達とかどうでもよく、私が気に入った作品を置いていきます。笑


岡鹿之助「橋」


パブロ・ピカソ「夜、少女に導かれる盲目のミノタウロス」


パウル・クレー「攻撃の物質・精神と象徴」


ルネ・マグリット「青春の泉」




ジョゼフ・コーネル
「ムッシュ・フォットの孫息子による芝居ホテル、毎週日曜日午後」
「無題」


アンドレ・マッソン「ナルキッソス」


吉村益信「大ガラス」田中敦子「作品79X」ほか

以上になります。
「具体」の作家はなかなかおもしろくて好き。
あと、ジョゼフ・コーネルが見れたのもうれしい。
なかなか見れるところがないので。
さらっとしか見てきていませんが、版画でかなりおなかいっぱいだった私はぐったりです。笑



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開館25周年記念 魅惑のニッポン木版画

2014-04-17 21:30:00 | 美術
見てきました

横浜美術館

会期は2014年3月1日から2014年5月25日。

今回は木版画。
木版画と言えば浮世絵がすぐに浮かびます。
江戸時代に登場し、瞬く間に人気となった浮世絵は"庶民の芸術"として定着。
この時代は人々の暮らしにより密着した千代紙や引き札なども木版で作られました。
大正時代には木版の強い表現力を生かした"創作版画"や浮世絵の繊細な線や鮮やかな色彩を受け継ぐ"新版画"が誕生。
木版ならではの柔らかい風合いと近代的なデザインが融合した本の表紙や絵封筒なども、人々の暮らしを彩りました。
そして日本の木版画は戦後、国際的な賞を受賞するなどしていきます。
横浜美術館では幕末から現代まで約1,600点に及ぶ木版画を所蔵しているそう。
今回はそこから約220点を展示。
年代順に眺めていくという今までの木版画の歴史がわかるような展示となっています。

《第1章:幕末・明治-生活を彩る木版画》
ここでは幕末から明治の木版画が展示されています。
千代紙やうちわ、引き札など生活の身近なものも木版画で刷られていた時代です。
江戸時代に町人文化として日本独自の発展を遂げた"浮世絵"
絵師、彫師、摺師とその分野のプロが分業で制作し、数々の名作を世に送り出しました。
その後、江戸の伝統を受け継ぐ浮世絵。
洋風表現を取り入れた新しい木版画。
時代の移り変わりとともに、木版画も変わっていきました。

まずは"生活の中の木版画"として熨斗やうちわ、千代紙などが展示されていました。
「京丸山御軽焼(袋)」「御徳用たび型(型紙)」は実用的です。
「千代紙(霞に桜と紅葉)」は色がとにかくきれい。
赤・青・ピンクの鮮やかさが目を惹きます。
装飾的でおしゃれ。
もったいなくて使えない気が…笑

歌川(豊原)国周「団扇絵 御好五色の内 松葉」
歌川房種「団扇絵 源氏俤」
身近に芸術品がある生活ってすごいですね。
これもうちわの骨組みがないとただの絵。
使ってこその芸術品。

「おばけかるた」
かっぱや提灯のおばけなどが描かれた作品。
現代の私たちにもおなじみ(!?)のおばけたちです。
こういった目に見えない存在が今も昔も同じ形で描かれていることがすごい。

歌川豊国(三代)「生月鯨太左エ門 当十八才」
とてつもなく大きな手形。
相撲取りの手形です。
いや、本当に大きくて私の2倍はあるんじゃないかと思ったほど。
実物大なんでしょうか…。

歌川(一勇斎)国芳「ほふづきづくし 夕立」
擬人化されたほおづきたちが突然の夕立に戸惑いあわてる様子が描かれています。
笠着る人、走る人など。。
その動きがまたおもしろくてかわいらしい。

歌川(五雲亭)貞秀「冨士山体内巡之図」
富士山の体内ってタイトルでもなかなか謎ですが。。
鍾乳洞の位置などが描かれているので地図的なものとしても使われていたのかな。

歌川国周「かべのむたかきいろいろ」
作品の中の壁に描かれているのは落書き風の似顔絵。
手前の男性が振り返って眺めています。
特徴をとらえていて面白い。

小林清親「高輪牛町朧月景」
幕末の浮世絵といったら清親。
なんていうか、その表現力に安心感あります。
画面左から右へ走る汽車。
暗い中、窓から漏れる明かりが明るい。
水面にもぼやけて映っています。
うん、美しい。

小林清親「両国花火之図」
船から花火を眺める人々。
奥は花火で明るいのですが、手前は逆光で人々はシルエットで表現されています。
提灯の赤が明るく闇に映えます。

井上安治「銀座商店夜景」
これは先日太田記念美術館でも見ました。
商店のまばゆいばかりの明かりが外に漏れています。

月岡(一魁斎)芳年「一魁随筆 西塔ノ鬼若丸」
鯉につかまり泳ぐ鬼若丸。
水の下の表現も素晴らしく、色彩も美しい作品。

月岡(大蘓)芳年「藤原保昌 月下弄笛図」
大きく丸い月が輝く夜。
すすきの野に立つのは笛を吹く藤原保昌とそれを狙う強盗。
月にかかる黒い雲の表現も素晴らしい。
風が吹き着物がたなびくさまなど劇的です。
これまでに何度も見ていますが、何度見ても美しい作品。

月岡(大蘓)芳年「風俗三十二相 けむさう 享和年間 内室之風俗」
これも何度も見ている作品。。
というか、浮世絵ってけっこう色々見てきているんだな~と実感しました。笑
煙が自分のほうに来て、顔をそむける女性の姿が描かれています。
女性にまとわりつく煙や女性の髪など繊細に描かれ、また色彩も美しい作品。

鈴木華邨「坪内逍遥著『桐一葉』 口絵(春陽堂)」
細く繊細な線で描かれた室内。
御簾の向こうの影まで美しく表現されています。
左下は本をめくるかのように文字が描かれているページが描かれています。

《第2章:大正から昭和-木版画の復活》
明治後期、石版印刷の普及により木版画は一時廃れます。
しかしムンク、ルドン、ビアズリーやカンディンスキーらが紹介されると、版画の表現力に着目する作家が現れます。
自画・自刻・自摺による芸術表現を目指した"創作版画"
版元・渡邊庄三郎による"大正新版画"
また、来日した外国人浮世絵師たちも活躍。
さらに竹久夢二や川上澄生が木版による雑誌の表紙や挿絵、便箋や千代紙などのデザインを手掛けました。

石井柏亭「木場」
これまでと一気に雰囲気が変わります。
水に浮かぶ木が表現されています。
空は青から赤へとグラデーション。
はっきりとした表現がされています。

長谷川潔「風(イェーツの詩に寄す)」
白と黒のコントラストが生かされています。
流れるように表現されていて、装飾的。
一気にデザインといった感じになってきました。

長谷川潔「ギメ美術館での杵屋佐吉演奏会プログラム」
空はくねくね、水面の影もくねくね。
静かで不思議な世界が描かれています。
ちょっぴりムンクや世紀末芸術を連想させます。

万鉄五郎「ねて居る人」
力強い線が印象的。
万の油彩と変わらない強さです。
女性の独特のポーズも。

勝平得之「雪国の市場」
豊かな色彩で雪降る景色が描かれています。
買い物する人々などの素朴な光景。

恩地考四朗「ダイビング」
水に飛び込む女性を下からの構図で描いた大胆でモダンな作品。
画面上方には飛び込む女性の胴体部。
左端に飛び込み台がちらりと見えます。
女性の胴体の下から雲が見えているため見上げていると分かるのですが、なんだか日差しの眩しさまでも感じられます。

関野準一郎「ビールグラスの中のカエル『一木集Ⅲ』より」
第二次大戦中の創作版画。
大戦中は材料も配給制になるなどし、芸術家たちは思うような活動ができなかった時代。
が、それでも芸術の探求は続き、研究会の発足や版画集の出版などの活動がされました。
これらは戦後に繋がっていきます。
この作品はテーブルの上に置かれたビールグラスの中にいるカエルを描いたもの。
落ち着いた色彩でまとめられています。
グラスの影が夏の強い日差しを感じさせます。
世が大戦中とは思えない素晴らしい作品です。

恩地考四朗「東京駅『東京回顧図会』より」
平塚運一「数寄屋橋『東京回顧図会』より」
このあたりはノスタルジックな雰囲気のある作品。
レンガの東京駅など今の東京駅も連想できます。

竹下夢二「千代紙(水玉赤)」
竹下夢二「千代紙 大椿」
少女たちのあこがれを描いた夢二。
夢二は1914(大正3)年、日本橋呉服町に"港屋絵草子店"という夢二のデザインした日常生活の品々を扱う店を開きました。
夢二デザインの品々を身に着けたり、便りに用いたりすることは、まさに女性の憧れの的。
ここで展示されていたものたちも、おしゃれでモダンでロマンチック。
今使ってもいいなぁと思うものばかりでした。

エミール・オルリック「日本の絵師」「日本の彫師」「日本の摺師」
このあたりには外国人の作品が。
これは日本の絵師、彫師、摺師それぞれの作業しているところを描いたもの。
日本人には当たり前の光景のため、作業風景を残すことはしなかったでしょう。
これは作品としてはもちろん、当時の作業風景を知るという意味でもおもしろい作品です。

ヘレン・ハイド「かたこと」
この作品が素晴らしいのです。
横長の楕円形の画面に赤ちゃんを抱いた和服の母親が描かれています。
背景には藤や水仙の描かれた襖が。
色彩や温かなまなざしは外国人女性だから表現できたのかもしれない…。
美しき日本、です。
おなじく「亀戸天神の太鼓橋」は手前に藤の花が大きく垂れています。
その後ろには橋を渡る子供たち。
浮世絵などでおなじみの景色ですが、大胆でおもしろい作品です。

バーサ・ラム「雪の玉」
雪の玉を転がして遊ぶ子供たちが描かれています。
とても日本的です。
"日本昔話"あたりに使われていそうなモチーフ。
その一方で「海の精」はビアズリーなどを連想させます。
着物の女が丸い玉を手に波間に立っています。
細く繊細な線で描かれ幻想的。

チャールズ・バートレット「精進湖よりみたる冨士」
富士も古来より描かれてきたモチーフですが、この作品も素晴らしい。
鳥肌ものです。
太陽に照らされる富士山。
日本人の見ている、そして心の景色が見事に表現されています。
また「横浜磯子」も素晴らしい。
空には三日月が浮かび、そのもとで働く農夫たち。
海には船が浮かんでいます。
なんとも美しい景色です。

川瀬巴水「東京十二題 雪に暮るる寺島村」
巴水はやっぱりどれも美しい。
雪夜の街。
家の明かりや傘さして歩く人などどれも印象的。
雪夜の静けさが感じられます。

山村耕花「奉祝の夜」
暗い空に打ちあがる花火。
家々を照らす様子が幻想的です。

山村耕花「踊り 上海ニューカルトン所見」
これは江戸東京博物館「大浮世絵展」でも見ています。
華やかで色っぽい。
樋口五葉「髪梳ける女」「化粧の女」
こちらも「大浮世絵展」やほかの展示でも見ています。

吉田博「タジマハルの朝霧(第五)」「タジマハルの夜(第六)」
インドのタージマハルを朝と夜、描いています。
同じ景色を同じ位置、同じ角度でとらえているのですが、光の表現、水面に映る景色などの微妙な違いがうまく描き分けられています。

西沢笛畝「黄昏の日本橋『大正震火災木版画集』」
震災後の日本橋です。
垂れ下がった電線や燃える炎などすごい描写力。

伊藤深水「涼み「新美人中に姿」より」
欄干に肘をかけ景色を眺める女性の後ろ姿。
薄い着物で透けて見える肌の白さが美しい。

《第3章:1950年代以降-国際的な舞台へ》
戦後、日本の木版画は国際的な舞台へと活動の場を広げていきます。
1951年に斎藤清がサンパウロ・ビエンナーレで日本人賞を受賞したのを始めとし、棟方志功や吉田穂高らの独創的な版画が国際展で脚光を浴びます。
版画熱は急速な高まりをみせ、また新しい表現も多くなっていきます。

初山滋「コウノトリ(仮称)」
紫の背景に緑色の鳥。
口には子供の入ったカゴを咥えています。
ファンタジーのような作品。

棟方志功「華狩頌」
馬上で狩りをする人と猟犬を描いたもの。
日本的なのですが、どこかオリエンタルな雰囲気のある作品。

エマ・ボーマン「東京、出初式」
二重橋前で行われている出初式。
とても細かく日本的。
手前の人々はシルエットで表現されています。

ポール・ジャクレー「北風、韓国」「黒い蓮華、中国」
版画でここまでできるのかーと思います。
すごく色がきれい。
表現も繊細です。

星襄一「無題」
月夜の水辺。
銀背景に描かれています。
情緒ある風景です。

北岡文雄「スワンハウス(Atlanta)」
美しい緑の中に立つ白い家。
色彩のコントラストも美しい。

馬淵聖「白い卓」
瓶に入ったユリなどの花。
テーブルの上のリンゴなど静物画です。
抑えた色彩で描かれています。

吉田千鶴子「献花」
落ちる白い花が描かれた幻想的な作品。
同じく「谷間の蝶」は画面いっぱいに描かれた蝶が舞っています。
こちらも神秘的な色彩も相まって幻想的です。

小林敬生「蘇生の刻-群舞93.3-」
かなり大きな作品です。
4つに分けられた場面にビル群が描かれ、植物や動物、昆虫がそこに絡み合っていきます。
細い線で詳細に描かれ、不思議な作品。

田嶋宏行「コンポジション ム」
描かれているのは木の板。
その隙間から青い色がのぞいています。
建物から外を見るような感じ。
その青い景色が気になります。

《第4章:現代-新たな木版画の表現へ》
さて、現代になります。
2000年代以降のアーティストたちの作品です。
コンテンポラリーアートの舞台でも木版画が使われるなどし、新しい表現を続けています。

会場の途中では吉田亜世美の、木版画を用いたインスタレーション「YEDOENSIS-divine」がありました。
はらはらと落ちる桜の花びらが幻想的でした。

風間サチコ「「平成博2010」シリーズより」
諷刺ですね。
様々なものを取り上げていましたが、飛行機の影が映るツインタワーに腰掛けて電話をかけるブッシュとか、なかなか似ていて面白い。

湯浅克俊「0から255」
木版画にデジタル写真を合わせたもの。
画像をコンピューターでピクセルに解体。
23の諧調に摺り分けた5×5cmの木版画の紙片、12,000枚で構成されています。
なお0は黒で255は白だそう。
競馬のレースで落馬した瞬間を描いていますが近くではよくわかりません。
少し離れるとそのイメージが見えてきます。
そしてかなり大きい作品です。

以上になります。
木版画のみをこれだけ見る展示もそうそうない。
これまでの遍歴もおもしろかった。
どのようにその表現が辿ってきたのかが分かりやすいです。
まさに"魅惑"
おすすめです。



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ディナー

2014-04-16 21:30:00 | 食べ物
先日とってもおいしい&幸せなディナーをしたので。
うきうき気分をおすそ分け。
そう、自己満足1000%の記事です。


これ変わってておいしかったー。
たまねぎのブランマンジェ。


これも変わってたな。
デザートみたいだけどフォアグラ。


肉肉肉。
鴨肉でプラムのソース。


デザートもおいしかったの。


本っ当に!!!
自己満。
うざくてごめんなさい



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春の江戸絵画まつり 江戸絵画の19世紀

2014-04-15 21:30:00 | 美術
見てきました

府中市美術館

会期は2014年3月21日から2014年5月6日。

会期は前期と後期に分かれています。
前期は3月21日から4月13日。
後期は4月15日から5月6日。
私は後期を見てきました。

さて。
春です。
府中市美術館の春の恒例。
"春の江戸絵画まつり"
今年も行ってきました!!!!!
"ヤマザキ春のパンまつり"
"ジャパネットたかた利益還元祭"
に並ぶ日本3大(?)奇祭(??)の一つ。笑

3世紀におよぶ江戸時代。
その最後となるのが19世紀。
18世紀は応挙や若冲、蘆雪や蕭白など画期的で創造的な画家が活躍しました。
では19世紀は??
なかなか注目されない19世紀。
時代が移り変わる中、どのような絵画がうまれたのか、それを見ていく展示となっています。

《1.19世紀の造形感覚》
江戸時代は浮世絵の流行などもあり、美術が急速に普及した時代でもありました。
誰にでもわかりやすく、絵画を見る機会が増えていくのです。
絵画以外にもからくり人形や精密機器などの"ものづくり"が発展し、驚異的で創造性あふれる機器が生まれていきます。
ここではそういった造形に注目した作品が展示されています。

守住貫魚「袋田滝図」
滝が描かれています。
群青などの岩絵具や墨で描いた作品。
1本1本の木が丁寧に描いて重ねられています。
"もりもり"って感じです。
鮮やかな色彩と写実的な様子が不思議な世界を作り出しています。

横山華山「清見潟富士図」
横山華山は京の画家。
江戸への道中、日没の美しさに感激し描きました。
右側に沈む日、奥には富士山があり手前には街並み。
墨のみで描かれた景色はぼかした空気感もあり優しい印象です。

岸駒「白蓮翡翠図」
太い墨の線で描かれているのはハス。
それも葉は朽ちています。
枯れゆく茶色い葉とつぼみや白い花が共存しています。

亜欧堂田善「ミツマタノケイ(三俣の景)」
三俣は現在の中央区中州付近。
隅田川が二股になり、分流が箱崎川の方へ流れ三股になる地点です。
描かれいているのは洗濯をしている2人の女性。
女性の髪は風になびき、空は2段で表現されています。
自分なりの表現を追求したとのことですが、不思議な作品です。

亜欧堂田善「大日本金龍山之図」
銅版画で表現された浅草です。
建物とたくさんの人々、木々に仏像も描かれています。
緻密です。
近くには原版も展示されています。

亜欧堂田善「陸奥国石川郡大隈滝芭蕉翁碑之図(『青かげ』挿絵)」
こちらも銅版画です。
大きな水の流れです。
水の流れには濃い線と淡い線があるのですが、濃くしたいところを先に加工し一度腐食させます。
その後淡いところを加工し、時差をつけて表現しているのだそう。
その行程を考えると長くて長くて……
すごいしか言えません。

歌川国芳「通俗水滸伝豪傑百八人之壱人 混世魔王樊瑞」
国芳の人気シリーズ、水滸伝。
槍を手にした樊瑞。
白抜きで表現されている悪魔たちに怯んでいます。

安田雷洲「丁未地震」
弘化4(1847)年におきた善光寺地震を描いたもの。
逃げる人々、崩れる建物。
細い線で細かく、緊張感ある作品に仕上げています。

狩野一信「七福神図」
手前にはくねっとした大きくて不思議な木。
真っ赤な日の前を鶴が飛び、鯛を釣る恵比寿。
琵琶弾く弁天、踊る福禄寿。
水辺の楼閣はにぎやかで楽しそうです。

狩野芳崖「月夜山水図」
控えめな色彩で描かれた月夜の景色。
静かで美しい時間が過ぎていっています。

祇園井特「芸妓図」
2幅の作品。
琵琶を弾く女と、手紙を読む女です。
美化していない等身大の女性を描いたとのことですが、リアルで奇妙な印象。

狩野一信「布袋唐子図」
唐子と遊ぶ布袋の姿。
足元の水溜りに映る布袋の顔も笑顔で素敵です。
色彩豊かに描かれています。

原在中「養老滝真景図」
流れ落ちる滝を描いた作品。
水の流れの白いところは波状の形が表現されています。
じっくり見ないと見えません。
ただ白く描いただけではない、工夫が見えます。

鈴木其一「老松双鶴図」
2匹の鶴と松の木が描かれているのですが、松の枝は装飾的。
鶴の足元にも不思議な植物。
デザインとしておもしろい作品。

古市金峨「瀑布図」
画面いっぱいに滝の流れだけを描いた作品。
直線で水の流れを表現するなどシンプルです。
表具もシンプルで滝の一部を切り取ったかのように見せる効果を感じます。

《2.心のかたちを極める》
ここでは自由な形でストレートに心の中を表現した作品が展示されています。

岡田米山人「蘭亭曲水図」
王羲之の曲水の宴を題材とした作品です。
会稽山の蘭亭に客を集め、曲水を流れる杯の酒を飲んでは詩を作ったという話。
水はくねくねと流れています。
が、岩も木もくねくねしています。
そして建物まで。
なんだか楽しくなる作品。

上田公長「狐の嫁入り図屏風」
狐たちが行列を作っています。
みんな同じ顔、みんな同じ方向を向き、みんな同じ体格です。
ちょっとムチムチ。
型でもあるのか??といった具合です。

忍頂寺静村「坂田金時立身図」
山の中で動物たちと話している人物。
描かれているのは金太郎ではなく武将の坂田金時。
出世したあとに昔の仲間にご挨拶、かなぁ。
失礼のないようにとひれ伏す動物もいます。
ちょっとかわいらしい。
近くにはおもちゃも描かれていてお土産かと思われます。

《3.19世紀の人々の「世界」》
江戸時代、幕府は鎖国政策をとっていましたが、それでも情報は入ってきます。
その"世界"の情報は憧れにもなります。
ここではその江戸の人が見た"世界"、そして心の中の"世界"を描いた作品が展示されています。

高橋景保編・亜欧堂田善彫刻「新訂万国全図」
幕府の命で編纂された世界地図。
イギリスのアロー・スミスの地図をもとにしています。
16枚の版を使い製作され、かなり大きく、またかなり正確。
この時代でもしっかり世界が把握できていたことに驚きです。

安田田騏「異国風景図」
象に乗って海を眺める人。
向こうには箱型の建物が描かれています。
これは特定の国をモデルにしたわけではなく、想像上の異国だそう。
抑え目な色彩とちょっと奇妙なモチーフたちが確かに"異国"

山口素絢「洋美人図」
子どもを抱えた女性が描かれていますが、子供の顔がちょっと怖い。。
民族衣装風の衣服を着た女性も美人かと問われると……

安田雷洲「捕鯨図」
潮をふくクジラを捕まえようと奮闘する人々。
その背景にはとてつもなく大きな岩山。
太陽が輝き明るい作品のようですが。。その大きさのおかしさがやっぱり気になります。

歌川国芳「山海名産尽 伊予峰越鳬」
諸国の特産品・風物をテーマにしたシリーズもの。
鴨を捕まえようと大騒ぎの人々、網を抜けて逃げようとする鴨。
それぞれの表情がおもしろい。

菊池容斎「蒙古襲来之図」
激しい風、雲が画面を覆っています。
元の船は沈んでしまいそう。
迫力ある作品です。

《4.西洋の技法をどう使うか》
18世紀に遠近法や陰影の表現などの技法は伝わってきましたが、江戸の絵師たちはそれをそのまま使うのではなく、自由に取り入れていきました。
ここでは新しい技術を使って描かれた作品が展示されています。

亜欧堂田善「花下遊楽図」
品川の御殿山で花見をする人々が描かれています。
向こうには帆を張った船。
手前には田楽売りの人がいます。
油彩ですが、エゴマの油を使って作られた自然の材料が元の絵具となっています。

歌川国芳「雪月花 月」
光と影を表現した作品ですが、月明かりとは思えないほどの明るさです。
それとも江戸時代には月はこれほど明るく感じたのかな。。
どのように表現するか、工夫が見られます。

歌川国芳「夕涼み図」
3枚からなる作品です。
休む人などが描かれていますが、メインの人物以外はシルエットで表現されています。

小林清親「大川岸一之橋遠景」
光と影で江戸時代ときたら必ず出てくる清親。
夜、月明かりに浮かぶ人物をシルエットで表現しています。
なんども見たことある作品で、たぶん、何度も書いています。笑

葛飾北斎「富岳三十六景 深川万年橋下」
万年橋の下からのぞく富士。
遠近法が使われています。
構図がおもしろい作品。

亜欧堂田善「甲州猿橋之眺望」
山梨県大月市の狭く切り立った渓谷に立つ石の橋。
大きなアーチの向こうに景色が見えています。

高橋由一「墨水桜花輝耀の景」
日本近代洋画の父、高橋由一。
油彩です。
手前には画面を覆うかのように満開の桜の花。
その奥に暗い空の下流れる隅田川。
浮世絵的な構図で描かれ、幻想的です。

葛飾北斎「諸国滝廻り 下野黒髪山きりふりの滝」
うねるような形の幅の広い岩場。
そこを水が伝って落ちていきます。
水の流れは細い線を重ねて表現されていますが、木の根のようにも見えてきます。

《おわりに.19世紀の絵に遊ぶ》
ここではこれまでの作品を踏まえ、19世紀の様々な表現に注目しています。
自由に描いたり、厳格であったり、新しいものを取り入れたりと個性あふれる作品たちです。

歌川国芳「今様七小町」
七小町とは小野小町を題にした七つの謡曲(能楽作品)の総称。
今様とは現代風の、とか、当世風の、といった意味。
7人の当時の人気役者を七小町に擬えた作品です。
特に164「あらひ」
腰掛ける男性が描かれ、空には白い雲のかかる月。
優美で美しい。

岸駒・岸岱「獅子・虎図屏風」
6曲1双の屏風。
金地に獅子と虎が描かれています。
左隻は虎。描かれているのは虎の子渡し。
虎が三匹の子を生むと、一匹が彪。
その子はで他の子を食べようとするので、川を渡るときに、親虎はまず彪を対岸に渡します。
次いで他の一匹を渡してから彪を連れて帰り、次に残る一匹を渡し、最後に彪を渡したという故事。
苦労して生計をやりくりするたとえ話としても人気があったそう。
荒々しい流れの河川を渡る親虎の表情は険しくも見えます。
右隻は獅子。獅子の子落としが描かれています。
千尋の谷に突き落としているところですが、虎と比べ迫力はいまいちな気が…。

狩野芳崖「寿老・梅に雌鷹・松に雄鷹図」
3幅の作品。
狩野派らしいテーマです。
造形の押しの強さも印象的。
芳崖って真面目だったんだろうなぁ、と感じます。

山本梅逸「花卉草虫図」
様々な植物と虫がぎっしり描かれた華やかな作品。
じっくり見ているとなんだか疲れる気も。笑
パッと見たときの"すごい"という印象なのですが、細かく見ていくと結構粗い部分も。
見たときのバランスは素晴らしい。

鈴木其一「毘沙門天像」
其一といったら江戸琳派の優美な屏風の印象ですが、それをひっくり返すような作品。
岩に腰かけ、宝塔を掲げる毘沙門天。
墨と金泥だけで描かれていますが、微妙に違う色調で奥行きを表現しています。
色彩はシンプルですが、力強い作品です。

狩野永岳「富士山登竜図」
海から上がってきた竜が富士山に向かって登っていきます。
繊細な線でうねる波や雲が描かれています。
縦に長い構図で勢いを感じます。

以上になります。
絵師のこだわりが見える作品ばかりで面白い展示でした。
自分らしさを出し、新しい表現を探していく時代という意味でも19世紀の絵画をまとめて見れて勉強にもなりました。
府中市美術館の展示はいつも特徴的で面白い。
来年の"春の江戸絵画まつり"も楽しみ!!



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ちょっとパリまで、ず~っとパリで

2014-04-14 21:30:00 | 美術
見てきました

泉屋博古館分館

会期は2014年3月15日から2014年5月11日。

明治時代に住友グループの礎を築いた住友家。
事業のかたわら芸術や文化事業にも高い関心を示し、時には事業所にも絵画を飾ってきました。
しかしこれらの長年にわたってグループ各社が収集したさまざまな絵画作品は、一般公開されているわけでもなく、あまり知られていません。
そこで昨年からグループ各社に収蔵されている作品を紹介する展示が開催されています。
昨年の第1回展は「花」をテーマにした「住友グループ秘蔵名画展 - 花-
今回は第2回目。
19世紀末から20世紀前半期にパリに留学し、帰朝後に日本の"洋画"を切り開いた画家。
またはパリに居続け異邦人画家として活躍した画家。
そんな画家を取り上げた展示です。
約60点の展示となります。

《Ⅰ.明治洋画の牽引者たち》
黒田清輝「庭園」
展示の最初は黒田の秋の庭を描いた小さな作品から。
日本の洋画の話の際に黒田は外せませんから。
秋草が思い思いに伸び穏やかな印象です。

浅井忠「河畔洋館」
後ろから射す光。
ピンク色の雲。
手前は逆光で暗くなっています。
夕方でしょうか。
人影もなくさみしいような作品。

海野美盛(二代)「ライオン図」
日の出の海とライオンが施されたレリーフ。
これは日本とイギリスを表しているのだそう。
力強いです。

藤島武二「幸ある朝」
光りの入る窓辺で手紙を読む女性。
フェルメール見たいな画題です。
室内に入り込む光の表現など素晴らしい。

和田英作「こだま」
上半身裸の女性が森の中で驚いたような表情をしています。
耳に手を当て、自ら発した声を聴いているのです。
これはギリシャ神話に登場するエコーかな。
余りに驚いた表情をしているのでこちらが不安になります。

山下新太郎「読書の後」
ソファに腰掛け手元には本。
逆光の中、顔には影がかかっています。

山下新太郎「小川のほとり」
木漏れ日の落ちる川沿いの道。
ルノワールのような印象。
色彩も華やかで温かい。

斎藤豊作「秋の色」
高いポプラの木が並ぶ川沿いの道。
日の当たる葉は黄色に、影のところはピンクになっています。
水面も日の当たるところは黄色く輝いています。
木の足元には女性とヤギっぽい生き物。
日の当たるところと当らないところの差が大きく表現されています。

梅原龍三郎「霧島」
手前にすすきを描き、奥には山。
伸びやかで美しい筆さばき。
豊かな色彩が秋の美しさを感じさせます。

《Ⅱ.沸騰する時代のエトランジェ、パリ豚児の群れ》
藤田嗣治「Y婦人の肖像」
1933年、一時帰国した際に二科展に出品したもの。
背景は桃山屏風のような金箔が使われ、その前には乳白色ではない婦人が描かれています。
パールのネックレス、銀のブレスレットをし、かなりおしゃれ。
なお、藤田はこの作品について
墨の線の上に油彩具を入れるなど、油彩と日本画を融合した新しい色彩を試みた
と自負していたそう。
確かに目新しい。

佐伯祐三「鯖」
台にのったサバ2匹。
佐伯にしては珍しい静物画です。
暗い色調のなか、サバの青い線とお腹の白さが目立ちます。

坂本繁二郎「二馬壁画」
これは住友家の依頼で制作されたもの。
麻布別邸の壁に据え付けられていたそう。
エメラルドグリーンでまとめられた色彩は幻想的。
野とも山ともつかぬ景色の中、2頭の馬が描かれています。
馬の毛並が光によって美しく変化することに坂本は惹かれていたそう。
麻布別邸を取り壊す際に、この元壁画をどう保存すべきかなどの書簡も展示されていました。

藤田嗣治「暖炉ノ前ノ婦人像」
物思いに耽るような表情の女性。
油彩なのに水彩のように透き通っていてその質感も気になります。

高畠達四郎「道と海」
低い石垣のある赤土の道が真ん中に描かれています。
その向こうには街並み、そして青く眩しい海。
道の脇には大きな木。
のどかで温かい作品です。

児玉善三郎「残雪」
山や野に雪の残る里の景色。
青い空はピンクへグラデーション。
のどかな景色を冬とは思えないような明るいピンク色を使って表現しています。

中沢弘光「常陸海岸」
海浜風景。
この作家は外光派だそうで、確かに海へとあたる光などの表現が細かい。
空と海の青で色調に変化をつけ、穏やかな景色です。

岡鹿之助「堀割」
川の脇には歩道。
大きな木々が並ぶ中、荷を積んだ船がのんびりと。
奥には大きな煙突のある白い壁の建物が描かれています。
不思議な光景。
カンバスの目を生かし、点描風に描かれています。

荻須高徳「線路に沿った家」
わずかな土地に立つ細長い建物が描かれています。
灰色の空と相まって寂しげな印象。

《Ⅲ.クールなパリで個性を研ぐ -1930年代以降の留学現代への架け橋として》
森芳雄「果物」
四角いテーブルの上に丸い果物。
テーブルの上には四角い箱もあり幾何学的。
色彩は抑え目ですが、温もりある色です。

小磯良平「踊り子二人」
バレリーナが描かれていますが、舞台にいるところではなく、控えにいるところ。
後ろは道具や幕などでごちゃごちゃです。
もうすぐ出番なのか、表情は緊張しているように見えます。

木下孝則「バレリーナ」
こちらもバレリーナ。
丸くなって話し込んでいるかのよう。
この後の出番について、とかでしょうか。
凛とした表情が美しい。
白い肌に赤い服や青いターバンが映えています。

木下義謙「妻籠の風景」
妻籠は信州木曽に位置する中山道の宿場で栄えた場所。
明るい色彩で澄んだ水や青い空が描かれています。
流れる水の美しさ、木々の影など光のあたるところの色調も素晴らしい。
爽やかです。

鳥海青児「ナポリの港」
素早い筆使い、のびやかな線で港に泊まるたくさんの船が描かれています。
明るい色調もあって、軽やかな印象です。

以上になります。
見たことのない作品ばかりでとても面白かったです。
のんびり鑑賞できますし、おすすめです。



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医は仁術

2014-04-12 21:30:00 | 美術
見てきました

国立科学博物館

会期は2014年3月15日から2014年6月15日。

チラシに使われているのは江戸の町のような景色。
医は仁術、、どっかで聞いたことあるような感じですね。笑
音声ガイド、そしてタイムスリップシアターの案内役は俳優の大沢たかおさんです。

今回、チラシが数パターンあったのですが、なかなかおもしろい。

ちらっとめくると。

おぉ。
なんか不気味。笑

今回は江戸の医から未来を眺める展覧会。

"医は仁術"
「仁」は、儒教で重視された"他を想う心"
「仁」は身分の上下なく、誰もが持つべき思想として人々に受け入れます。
気配り、気遣い、おもてなし……その「仁」が育んだ日本の医。

STAP細胞が大変残念な方向で世を賑わせていますが、日本の医学・医療は世界でも最先端と言われています。
その始まりは江戸時代。
山脇東洋が日本初の人体解剖を行い、その情報により各地で解剖が行われるようになります。
また1774 年、杉田玄白らが翻訳した『解体新書』は、蘭学が急速に日本中に広まるきっかけとなりました。
人々を救うために。
人体がどのような構造であるかの解明が、漢方医らも含めて始まったのです。
今回は当時の解剖図など貴重な史料や江戸時代の医療道具、薬の看板。
中国から来た漢方と西洋から来た蘭方が、どのように日本で医療として展開していったのかを見ていく展示となります。

撮影可能でしたので写真を交えながら描いていきます。
ボリュームたっぷりです。
一部、刺激が強いと思われる写真もあります。
お気をつけてご覧ください。

《第1章:病はいつの時代も身分の貴賤なく人々を襲う》
日本がまだ医の知識も、医の技も未熟であった時代。
人々は病を恐れ、神に祈り、自然の成り行きに任せるほかに、その苦しみから逃れるすべはありませんでした。
健康と長寿を願い、季節の節目には祈り、子供の成長には感謝し……。
そういったことから祭りが始まったり、神社に奉納したりと、数えればきりがないほど病に対して救いを求めていました。
お金がいくらあろうと、身分が高かろうと、関係なしに病気は襲ってきます。


「錦絵 うさぎのはしか退治」
うさぎがはしかを擬人化したものを踏みつけています。


歌川国芳「相馬の古内裏」
これはどこでも有名で人気ですねー。
描かれている骸骨は解剖学的にもかなり正確だそう。
江戸時代にそういった知識を庶民が持っていたということが驚きです。

《第2章:東から西から医術の伝来》
日本における医とは東や西から伝えられた医術が江戸時代という平和な世の中で融合し、ほかの国には見られない日本独自の発展を遂げたもの。
平和であったがゆえに安定した社会が築かれ、治めるものはその体制を維持し人々が安心して暮らせるように努めることが使命。
医の知識も一部の人間が独占するのではなく、広く人々のために使われました。
「医は仁術」この言葉は理念・理想としてだけではなく、実際に医師らによって実践されました。


「松浦家漢蘭医書箱」
江戸時代以前から対外貿易に関わってきた松浦平戸藩。
藩主の松浦静山らが内外の情報に高い関心を示し、書を収集していました。
それには医学の書も含まれます。


「経絡人形」
不気味としか言えない人形。。
鍼灸における経絡や経穴(ツボ)の学習、診断用人形。
そう、とっても重要なものなのです。


「解剖図譜(五臓六腑図)」
なんだか突っ込みたいところがいっぱいですが。
うん……
肺のひらひらが気になります。


「解剖刀」
怖いです。
こんなものでやられるなんて……
想像しただけで………

《第3章:医は仁術 ~和魂漢才・和魂洋才の医~》
東西の才が「医は仁術」として実践された江戸時代。
他を思いやる「仁」は医の基本ですが、特に日本では「和」を尊び、気配り、気遣い、思いやりが社会文化の根幹としてあり、仁術としての医は、江戸時代において人々が安心して社会生活を営む基本的理念となりました。


「救民妙薬」
水戸徳川家二代目藩主光圀が藩医穂積甫庵に命じて編纂・出版させたもの。
一般民衆の病気救済のために野草などの入手しやすい薬物を使い病気に対処する方法がわかりやすく書かれています。
これは当時の人々に医や健康への関心を促し、大正時代まで使用されたという画期的なものでした。


「薬籠」


「解体新書」
はい、あの教科書に絶対出てくるものです。
蘭学の始まりとなった翻訳書。
3年半の苦労の末に完成しました。


「解体人形」
田口村(長野県佐久市)の農民、小林文素が「解体新書」などを参考に製作したもの。
江戸にいなくても、医師でなくても、医学の情報を手に入れられるって素晴らしい。


「東門先生観臓図巻」
ずらーっと書いてあります。
かなりの情報量。
ですが、小腸と大腸の区別がついていないなど、まだまだこれからって感じがします。


「三之助解剖図」
寛政8(1796)年に行われた解剖の図。
三之助とは死刑人の名前。
せめて最後に役にたってよかったね。。
なかなか生々しいです。


「刑死者解体図」
解剖の一連の流れを描いている珍しいもの。
このあたりはそういった作品が多く、だんだん気が滅入ってきます。。。


「奥田木骨」
文政3(1820)年、大阪の医師奥田万里が池内某に製作させ尾張藩に献納したもの。
ちょっと欲しい。。


「生き人形」
怖い、怖すぎます。。。
人体内部の知識が「解体新書」によって広まり、人々も関心も高まりました。
その関心に応じて見世物として作られたものだそう。。。
あんまり見たくない。。


「大江家医測」
代々中津藩医を務めた大江家に伝わるもの。
"医は仁ならずの術 務めて仁をなさんと欲す"


歌川国貞「房事養生鑑」
女性の体部分、内臓が見える状態で描かれています。
こうやって人々は知る機会を得ていたんですね。

《第4章:近代医学と仁》
明治維新後、新政府はそれまでの漢方に変わって、西洋医学の採用を定め、明治2年に大学東高(東大医学部の前身)を設立してドイツの医学教育をモデルに新しい教育を始めました。


「X線写真」
ちょっとかっこいい。

《第5章:現代の医》
ここでは現在の医学について説明があります。
といっても理解しきれないのですが……
日々研究してくれる方がいるからこそ、こういった展示ができるんですね。


「ヒトiPS細胞の実物」
実際に実験室で培養していたものだそう。
長期保存用にホルマリンで処理して細胞を固定。
淡赤色は人工的に染色。
すごいです。

そして、映像シアターが。
ここでは鉄拳さん描き下ろしの「パラパラ漫画」が上映されています。
テーマは「受け継がれる仁」
うーん、、なんでも流行りに乗ればいいってもんじゃないんじゃない?
鉄拳のこと嫌いじゃないけど、鉄拳と医療ってつながりないじゃん、とか思いつつもちゃんと見てきましたよ!!
……………
前が、、前がよく見えないよ。。。
なんだろ、、目が霞んでいるんですけど。。。
「これ、やばいね」って声が聞こえたけど、やばいどころじゃない量の涙が。笑
私の涙腺がやばい!!!!!
まさかここで泣くとは思わなかった。
化粧ぼろぼろ、、というか、化粧どころじゃなく、ひどかった。。笑
鼻水とかね。。。
江戸時代から現代まで、「仁」をもって医療にあたる医師と、病気やけがに苦しむ患者たち、医療現場で生まれる喜びと悲しみなどが約8分の映像に込められていました。
素晴らしいよ、ぜひ見るべき!!

《終章:医は仁術》
涙が乾かぬうちに移動です。。
第2会場では3Dプリンターによる臓器模型が展示されています。
触ることも持ち上げることも可能。


私も脳や心臓を持ち上げてきましたが、思ったよりも重い。


どういった情報を脳のどこで処理しているのか、などの脳の仕組みもわかりやすく模型で展示です。
かなり大きい。

以上です。
ボリュームたっぷり、涙ありの楽しい展示でした。
過去を知り、未来の医療の形に触れ、とても勉強になります。
おすすめです。



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のぞいてびっくり江戸絵画 -科学の眼、視覚のふしぎ-

2014-04-11 21:30:00 | 美術
見てきました

サントリー美術館

会期は2014年3月29日から2014年5月11日。

今回は江戸絵画。
それも"のぞいてびっくり"
江戸時代の後期、日本には蘭学の新興とともに、顕微鏡や望遠鏡など"視覚"に対する従来の常識を一変させる光学装置が海外から入ってきます。
遠近法を用いた風景画や顕微鏡による知見を取り入れた拡大図、博物学の知識を踏まえた写生図など、江戸絵画は変革期を迎えます。
また鏡や水面に映るものや影などへの関心も高まり、面白い作品が生まれていきました。
今回はそうした江戸時代後期に生まれた"視覚"に対する作品が展示されています。


ちらしも開いてびっくり。

《第1章〈遠近法〉との出会い》
まずは遠近法。
科学理論に裏打ちされた遠近法は絵師たちに衝撃を与え、広く影響を及ぼしました。
透視図法を用いた"浮絵"、鏡に映した絵をレンズを通して覗いてみる"眼鏡絵"。
それらの流れを受けて成立した"秋田蘭画"
ここでは様々な絵師によって描かれた遠近法の作品が展示されています。

小田野直武「不忍池図」
これは"秋田蘭画"
秋田藩士・小田野直武らによって創始されました。
不忍池を背景に鉢に植えられた芍薬、キンセンカ、ムシャリンドウが描かれています。
近景ははっきりとした色彩で、遠景はぼんやりと淡い色で表現されています。
こういった独特の遠近表現が特徴です。
芍薬のつぼみには小さな小さな蟻。
じっくり見ないと分かりません。

歌川豊春「浮絵異国景跡和藤内三官之図」
近松門左衛門作の"国性爺合戦"を描いたもの。
和藤内が異国でトラ退治をする場面です。
消失点が3つあるなどちょっと不思議な立体感のある作品です。

司馬江漢「鵞鳥図」
手前の岩場に2羽のガチョウ。
背景には街並みが描かれますが日本ではなく、どこかの外国風。
ガチョウの顔もユーモラスです。
花鳥画とは違う写実的な作品。

亜欧堂田善「江戸城辺風景図」
40代後半から白河藩松平定信お抱え絵師として活躍した洋画家。
お堀の青、木々の緑が濃く鮮やか。
構図も画面奥に抜けていくよう。

歌川広重「江戸高名会亭尽 白山傾城か窪 萬金」
行き交う人々で賑わう街道を描いています。
奥に向かって緩やかに曲がる道は、透視図法の消失点を右にずらし街道のカーブを表現しています。

歌川国貞「北廓月の夜桜」
大門から仲之町を望む吉原の入口。
月明かりに照らされた桜は光のあたる半分は明るく、当たらない半分は暗くとはっきり表現されています。
道はずーっと奥まで続いているかのよう。

柳文朝「駿河町越後屋正月風景図」
日本橋の三井越後屋の正月風景です。
人々で賑わう通りの向こうには富士山。
かなり奥まで人が描き込まれています。

春木南溟「虫合戦図」
花鳥画・山水画を得意とした江戸後期の南画家。
この作品は虫たちが草木を手に合戦をしています。
朝顔の車輪を付けた芋虫の大砲とかてんとう虫の落下傘部隊とかかなりユーモラス。
激しい(!?)地上戦ですが、羽根があるんだから飛んで空中戦にすればいいのに…とか思っちゃうのはナンセンスなんでしょう。

「浅草風俗図屏風」
浅草周辺の賑わいを描いた6曲1隻の屏風。
家々が並び、物を売る人、運ぶ人、行き交う人々でかなり賑わっています。
そんな中、"覗き眼鏡"の見世物興行も。
人気だったことが伺えます。

「反射式覗き眼鏡」
伝 円山応挙「三十三間堂」
イギリス製の覗き眼鏡で丸山応挙と伝えられる三十三間堂の絵を覗いて見ます。
描かれているのは三十三間堂の通し矢。
鏡を通して正しく見えるよう、左右反転の状態で描かれています。

「泰山鏡 (眼鏡絵器具)」
「眼鏡絵 (阿蘭陀十景 別荘之図)」
組み立て式の反射式覗き眼鏡。
描かれているのはアムステルダムの景色でちょっと不思議な光景。
一緒に伝来したものです。
18世紀の日本に西洋の眼鏡絵は舶来していたようです。

「覗き眼鏡」「泥絵 江ノ島」
こちらの覗き眼鏡の作者は平賀源内と伝えられています。
絵を下の台に置き、鏡に反射した図をレンズ越しに見るもの。
描かれているのは江ノ島。
泥絵とは顔料に胡粉を混ぜ、不透明な色彩で描いたもの。
なかなか鮮やかな色彩です。

《第2章〈鳥の眼〉を得た絵師たち》
上空から地上を見下ろす鳥瞰図。
地形を表すのに最適な技法として、古くから名所や神社仏閣を描く際に使われてきました。
江戸後期には透視図法などを取り入れ、より正確な鳥瞰図が生み出されるようになります。
また正確な地図作成のために不可欠だったのが望遠鏡による天体観測。
西洋で16世紀末に開発された望遠鏡は、18世紀には日本で普及。
見世物や娯楽目的で所有する人々も増えていきます。
ここでは望遠鏡という新しい"視覚"に対する作品が展示されています。

葛飾北斎「東海道名所一覧」
東海道の名所や宿場を描いた鳥瞰図。
かなり細かく描かれています。
ガイド的な使われ方もしたんでしょうか。。

歌川広重「名所江戸百景 深川洲崎十万坪」
大きく手前に描かれているのは大鷲。
その眼下に雪景色の深川洲崎一帯が描かれています。
鷹の目にした景色を見ているかのような構図です。

「淡路島望遠図」
茅葺屋根の座敷から対岸の淡路島を望む光景。
旅の疲れを癒す人々がいる中に、望遠鏡で眺める人も描かれています。
展望台なんかに双眼鏡があるのと似たような感じなのかな。。

岩橋善兵衛「長筒望遠鏡」
長ーい、長ーい、竹で作った望遠鏡。
屈折式だそうです。
望遠鏡は次第に国内でも作られるようになります。

菊谷古馮「遠眼鏡を見る人物図」
天文学用だった望遠鏡も普及するにしたがって見世物としても使われるようになります。
覗き込む人が描かれているシンプルな作品。
ほぼ水平の望遠鏡を覗いているのですが、何を見ているのか気になります。

「和製望遠鏡」
伸縮式。
これは細工も施されていてちょっとおしゃれ。

さて。
ここで大変なことに気づきます。
展示は第5章まで。
現在の時刻、閉館まであと40分!!
ここから急ぎ足で見ることになります……
(以前もこんなことしているような。。。)

急いで階段を下りるとそこには大きな立版古。
(以前に制作しました!!→「たてばんこ」)
これも遠近表現かと考えると確かに。
また第5章で出てくる「七面鏡」や「鞘絵」が実際に分かりやすく展示されていました。

《第3章〈顕微鏡〉でのぞくミクロの世界》
顕微鏡は16世紀末にオランダで発明され、日本には18世紀半ばに流入しました。
江戸時代後期には和製顕微鏡も制作され、大名や蘭学者たちがとくに強い関心を寄せます。
蚤や蚊などの虫の拡大図、雪の結晶など、顕微鏡を用いた観察に基づく知見もた認識されるようになっていきます。
小さな世界を覗き見た驚きが伝わってくるような作品が展示されています。

「カルペパー型木製単眼顕微鏡」
舶来品を真似て作ったもの。
対物レンズも大中小と3種ついています。
江戸時代にこれだけ作れるのか、と感心です。

土井利位「雪華図説」
下総古河藩の藩主、土井利位は約20年にわたって顕微鏡で雪の結晶を観察。
それら86種をまとめた本になります。
天保3(1832)年に出版されたこの本の結晶の図は、文様として着物などに取り入れられ流行しました。

土井利位「続雪華図説」
上の続編です。
こちらには97種載せられています。
もう、すごいなぁとしかいうことがありません。

原羊遊斎「雪華文蒔絵印籠」
雪の結晶のデザインが蒔絵で施された印籠。
可愛くっておしゃれ。
"この印籠が目に入らぬか"って言われたら、"どこで手に入りますか?"って聞きたい。笑

溪斎英泉「江戸の松名木尽 押上妙見の松」
女性が描かれているのですが、土井利位の雪の結晶の模様を着物に使っています。
その流行っぷりが伺えます。

山田訥斎「蚤図」
すっごく巨大な蚤が描かれています。
実物の何倍だよってレベル。
普段目に見えないような小さいものを顕微鏡で大きく見て驚いた気持ちが伝わってきます。

《第4章〈博物学〉で観察する》
動植物を目の前にし、その姿を写す写生。
近世以前から行われていましたが、江戸後期には西洋の博物学の影響で自然科学への関心がさらに高まり、写生図の制作が増えていきます。
動植物を分類し、特徴などの説明を添えた写生図は研究目的としても使われましたが、その美しさから鑑賞目的としても通用するものも多数ありました。
ここでは博物学的な研究目的と、芸術的鑑賞性が重なり合ったところにあった、江戸時代後期ならではの独特な写生図が展示されています。

「西洋動物図巻」
これはオランダの動物百科事典、J.ヨンストンの「西洋動物図巻」の写しです。
ヤギやシカに加え、象やライオン、イノシシなども描かれています。
当時の日本ではたぶん馴染みのないであろう動物まで。
ちょっと装飾的です。

栗本瑞見(栗本鋤雲)「魚蟲譜」
医師で本草学者の栗本瑞見の著作に含まれる写生図を転写したもの。
魚類が中心で金魚や鯉などお馴染みの生き物が描かれています。
鱗や細かいところまでしっかり描かれていて、確かに研究目的、そして色彩の美しさから鑑賞にも適していたように見えます。

奥倉辰行「水族写真・鯛部」
静物商に生まれた奥倉辰行が20年にわたり写生したもの、そしてほかの図譜から転写し分類したものになります。
産地や性質、調理法や味なども書かれています。
これはかなり実用的!!

河村若芝「石灯籠図」
石灯籠に朝顔が絡み虫が飛ぶ作品。
奇妙で独特の世界です。
だた、この章に展示されているだけあって、その描写力はすごいです。

《第5章〈光〉と〈影〉を描く―影絵・鞘絵・鏡・水面》
江戸時代後期には光学的現象への関心から、光や影に対する意識が高まります。
障子越しの影を描いた"影絵"やある物体が集まって別の形を作り上げる"寄せ絵"など浮世絵師が描いたことにより大きく発展していきます。
また、ゆがんだ画像を円筒状のものに投影することで正常な姿に見える"鞘絵"
鏡や水面に映る映像を描いたものなども多数描かれ、科学的に計算された"視覚効果"が絵画表現において重要となっていきます。
ここではそういった"視覚の妙"を描いた作品が展示されています。

東東洋「夕陽人影長図」
これは以前に府中市美術館で見たことがある気がする…。
ぽつんと立つ人物。
そこから伸びる長い影。
これだけですが、すごく印象的。

歌川広重「東海道五拾三次之内 三島 朝霧」
何度も色々なところで見ている作品ですが。
対象の人物だけがはっきりと描かれ、朝霧で霞む周りの景色はシルエット。
とても効果的です。

歌川広重「即興かげぼしづくし 根上りのまつ 梅に鶯」143「」145「」
奇妙なポーズをとった人々。。影で見るとその表現しているものが何かわかるのですが。
これ、その場で障子を開けたい衝動に駆られます。笑
ここにはほかにも影絵の作品が展示されていました。

高力猿猴庵 原画/小田切春江 写「新卑姑射文庫 三編」
鏡の前に立つ人々。
でも映る姿はちょっと奇妙。。
「七面鏡」というもので細く見えたり、太って見えたり。
小さく見えたり、逆に見えたりする鏡の見世物です。
こういったものも人気だったんですね。
第2章終わった後の階段下で体験できました。

「西洋婦人図鞘絵」
こちらはぐにゃっと曲がった人物の顔。
円筒状のものに移すとしっかりとした顔で見えるのです。
こういった遊びが江戸時代、すでにできることがすごい。
こちらも第2章終わった後の階段下で実際に投影したものが見れました。

以上になります。
勉強にもなったけど、なによりおもしろい展示でした。
楽しく見れます。



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