RuN RiOt -marukoのお菓子な美術室-

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のぞいてびっくり江戸絵画 -科学の眼、視覚のふしぎ-

2014-04-11 21:30:00 | 美術
見てきました

サントリー美術館

会期は2014年3月29日から2014年5月11日。

今回は江戸絵画。
それも"のぞいてびっくり"
江戸時代の後期、日本には蘭学の新興とともに、顕微鏡や望遠鏡など"視覚"に対する従来の常識を一変させる光学装置が海外から入ってきます。
遠近法を用いた風景画や顕微鏡による知見を取り入れた拡大図、博物学の知識を踏まえた写生図など、江戸絵画は変革期を迎えます。
また鏡や水面に映るものや影などへの関心も高まり、面白い作品が生まれていきました。
今回はそうした江戸時代後期に生まれた"視覚"に対する作品が展示されています。


ちらしも開いてびっくり。

《第1章〈遠近法〉との出会い》
まずは遠近法。
科学理論に裏打ちされた遠近法は絵師たちに衝撃を与え、広く影響を及ぼしました。
透視図法を用いた"浮絵"、鏡に映した絵をレンズを通して覗いてみる"眼鏡絵"。
それらの流れを受けて成立した"秋田蘭画"
ここでは様々な絵師によって描かれた遠近法の作品が展示されています。

小田野直武「不忍池図」
これは"秋田蘭画"
秋田藩士・小田野直武らによって創始されました。
不忍池を背景に鉢に植えられた芍薬、キンセンカ、ムシャリンドウが描かれています。
近景ははっきりとした色彩で、遠景はぼんやりと淡い色で表現されています。
こういった独特の遠近表現が特徴です。
芍薬のつぼみには小さな小さな蟻。
じっくり見ないと分かりません。

歌川豊春「浮絵異国景跡和藤内三官之図」
近松門左衛門作の"国性爺合戦"を描いたもの。
和藤内が異国でトラ退治をする場面です。
消失点が3つあるなどちょっと不思議な立体感のある作品です。

司馬江漢「鵞鳥図」
手前の岩場に2羽のガチョウ。
背景には街並みが描かれますが日本ではなく、どこかの外国風。
ガチョウの顔もユーモラスです。
花鳥画とは違う写実的な作品。

亜欧堂田善「江戸城辺風景図」
40代後半から白河藩松平定信お抱え絵師として活躍した洋画家。
お堀の青、木々の緑が濃く鮮やか。
構図も画面奥に抜けていくよう。

歌川広重「江戸高名会亭尽 白山傾城か窪 萬金」
行き交う人々で賑わう街道を描いています。
奥に向かって緩やかに曲がる道は、透視図法の消失点を右にずらし街道のカーブを表現しています。

歌川国貞「北廓月の夜桜」
大門から仲之町を望む吉原の入口。
月明かりに照らされた桜は光のあたる半分は明るく、当たらない半分は暗くとはっきり表現されています。
道はずーっと奥まで続いているかのよう。

柳文朝「駿河町越後屋正月風景図」
日本橋の三井越後屋の正月風景です。
人々で賑わう通りの向こうには富士山。
かなり奥まで人が描き込まれています。

春木南溟「虫合戦図」
花鳥画・山水画を得意とした江戸後期の南画家。
この作品は虫たちが草木を手に合戦をしています。
朝顔の車輪を付けた芋虫の大砲とかてんとう虫の落下傘部隊とかかなりユーモラス。
激しい(!?)地上戦ですが、羽根があるんだから飛んで空中戦にすればいいのに…とか思っちゃうのはナンセンスなんでしょう。

「浅草風俗図屏風」
浅草周辺の賑わいを描いた6曲1隻の屏風。
家々が並び、物を売る人、運ぶ人、行き交う人々でかなり賑わっています。
そんな中、"覗き眼鏡"の見世物興行も。
人気だったことが伺えます。

「反射式覗き眼鏡」
伝 円山応挙「三十三間堂」
イギリス製の覗き眼鏡で丸山応挙と伝えられる三十三間堂の絵を覗いて見ます。
描かれているのは三十三間堂の通し矢。
鏡を通して正しく見えるよう、左右反転の状態で描かれています。

「泰山鏡 (眼鏡絵器具)」
「眼鏡絵 (阿蘭陀十景 別荘之図)」
組み立て式の反射式覗き眼鏡。
描かれているのはアムステルダムの景色でちょっと不思議な光景。
一緒に伝来したものです。
18世紀の日本に西洋の眼鏡絵は舶来していたようです。

「覗き眼鏡」「泥絵 江ノ島」
こちらの覗き眼鏡の作者は平賀源内と伝えられています。
絵を下の台に置き、鏡に反射した図をレンズ越しに見るもの。
描かれているのは江ノ島。
泥絵とは顔料に胡粉を混ぜ、不透明な色彩で描いたもの。
なかなか鮮やかな色彩です。

《第2章〈鳥の眼〉を得た絵師たち》
上空から地上を見下ろす鳥瞰図。
地形を表すのに最適な技法として、古くから名所や神社仏閣を描く際に使われてきました。
江戸後期には透視図法などを取り入れ、より正確な鳥瞰図が生み出されるようになります。
また正確な地図作成のために不可欠だったのが望遠鏡による天体観測。
西洋で16世紀末に開発された望遠鏡は、18世紀には日本で普及。
見世物や娯楽目的で所有する人々も増えていきます。
ここでは望遠鏡という新しい"視覚"に対する作品が展示されています。

葛飾北斎「東海道名所一覧」
東海道の名所や宿場を描いた鳥瞰図。
かなり細かく描かれています。
ガイド的な使われ方もしたんでしょうか。。

歌川広重「名所江戸百景 深川洲崎十万坪」
大きく手前に描かれているのは大鷲。
その眼下に雪景色の深川洲崎一帯が描かれています。
鷹の目にした景色を見ているかのような構図です。

「淡路島望遠図」
茅葺屋根の座敷から対岸の淡路島を望む光景。
旅の疲れを癒す人々がいる中に、望遠鏡で眺める人も描かれています。
展望台なんかに双眼鏡があるのと似たような感じなのかな。。

岩橋善兵衛「長筒望遠鏡」
長ーい、長ーい、竹で作った望遠鏡。
屈折式だそうです。
望遠鏡は次第に国内でも作られるようになります。

菊谷古馮「遠眼鏡を見る人物図」
天文学用だった望遠鏡も普及するにしたがって見世物としても使われるようになります。
覗き込む人が描かれているシンプルな作品。
ほぼ水平の望遠鏡を覗いているのですが、何を見ているのか気になります。

「和製望遠鏡」
伸縮式。
これは細工も施されていてちょっとおしゃれ。

さて。
ここで大変なことに気づきます。
展示は第5章まで。
現在の時刻、閉館まであと40分!!
ここから急ぎ足で見ることになります……
(以前もこんなことしているような。。。)

急いで階段を下りるとそこには大きな立版古。
(以前に制作しました!!→「たてばんこ」)
これも遠近表現かと考えると確かに。
また第5章で出てくる「七面鏡」や「鞘絵」が実際に分かりやすく展示されていました。

《第3章〈顕微鏡〉でのぞくミクロの世界》
顕微鏡は16世紀末にオランダで発明され、日本には18世紀半ばに流入しました。
江戸時代後期には和製顕微鏡も制作され、大名や蘭学者たちがとくに強い関心を寄せます。
蚤や蚊などの虫の拡大図、雪の結晶など、顕微鏡を用いた観察に基づく知見もた認識されるようになっていきます。
小さな世界を覗き見た驚きが伝わってくるような作品が展示されています。

「カルペパー型木製単眼顕微鏡」
舶来品を真似て作ったもの。
対物レンズも大中小と3種ついています。
江戸時代にこれだけ作れるのか、と感心です。

土井利位「雪華図説」
下総古河藩の藩主、土井利位は約20年にわたって顕微鏡で雪の結晶を観察。
それら86種をまとめた本になります。
天保3(1832)年に出版されたこの本の結晶の図は、文様として着物などに取り入れられ流行しました。

土井利位「続雪華図説」
上の続編です。
こちらには97種載せられています。
もう、すごいなぁとしかいうことがありません。

原羊遊斎「雪華文蒔絵印籠」
雪の結晶のデザインが蒔絵で施された印籠。
可愛くっておしゃれ。
"この印籠が目に入らぬか"って言われたら、"どこで手に入りますか?"って聞きたい。笑

溪斎英泉「江戸の松名木尽 押上妙見の松」
女性が描かれているのですが、土井利位の雪の結晶の模様を着物に使っています。
その流行っぷりが伺えます。

山田訥斎「蚤図」
すっごく巨大な蚤が描かれています。
実物の何倍だよってレベル。
普段目に見えないような小さいものを顕微鏡で大きく見て驚いた気持ちが伝わってきます。

《第4章〈博物学〉で観察する》
動植物を目の前にし、その姿を写す写生。
近世以前から行われていましたが、江戸後期には西洋の博物学の影響で自然科学への関心がさらに高まり、写生図の制作が増えていきます。
動植物を分類し、特徴などの説明を添えた写生図は研究目的としても使われましたが、その美しさから鑑賞目的としても通用するものも多数ありました。
ここでは博物学的な研究目的と、芸術的鑑賞性が重なり合ったところにあった、江戸時代後期ならではの独特な写生図が展示されています。

「西洋動物図巻」
これはオランダの動物百科事典、J.ヨンストンの「西洋動物図巻」の写しです。
ヤギやシカに加え、象やライオン、イノシシなども描かれています。
当時の日本ではたぶん馴染みのないであろう動物まで。
ちょっと装飾的です。

栗本瑞見(栗本鋤雲)「魚蟲譜」
医師で本草学者の栗本瑞見の著作に含まれる写生図を転写したもの。
魚類が中心で金魚や鯉などお馴染みの生き物が描かれています。
鱗や細かいところまでしっかり描かれていて、確かに研究目的、そして色彩の美しさから鑑賞にも適していたように見えます。

奥倉辰行「水族写真・鯛部」
静物商に生まれた奥倉辰行が20年にわたり写生したもの、そしてほかの図譜から転写し分類したものになります。
産地や性質、調理法や味なども書かれています。
これはかなり実用的!!

河村若芝「石灯籠図」
石灯籠に朝顔が絡み虫が飛ぶ作品。
奇妙で独特の世界です。
だた、この章に展示されているだけあって、その描写力はすごいです。

《第5章〈光〉と〈影〉を描く―影絵・鞘絵・鏡・水面》
江戸時代後期には光学的現象への関心から、光や影に対する意識が高まります。
障子越しの影を描いた"影絵"やある物体が集まって別の形を作り上げる"寄せ絵"など浮世絵師が描いたことにより大きく発展していきます。
また、ゆがんだ画像を円筒状のものに投影することで正常な姿に見える"鞘絵"
鏡や水面に映る映像を描いたものなども多数描かれ、科学的に計算された"視覚効果"が絵画表現において重要となっていきます。
ここではそういった"視覚の妙"を描いた作品が展示されています。

東東洋「夕陽人影長図」
これは以前に府中市美術館で見たことがある気がする…。
ぽつんと立つ人物。
そこから伸びる長い影。
これだけですが、すごく印象的。

歌川広重「東海道五拾三次之内 三島 朝霧」
何度も色々なところで見ている作品ですが。
対象の人物だけがはっきりと描かれ、朝霧で霞む周りの景色はシルエット。
とても効果的です。

歌川広重「即興かげぼしづくし 根上りのまつ 梅に鶯」143「」145「」
奇妙なポーズをとった人々。。影で見るとその表現しているものが何かわかるのですが。
これ、その場で障子を開けたい衝動に駆られます。笑
ここにはほかにも影絵の作品が展示されていました。

高力猿猴庵 原画/小田切春江 写「新卑姑射文庫 三編」
鏡の前に立つ人々。
でも映る姿はちょっと奇妙。。
「七面鏡」というもので細く見えたり、太って見えたり。
小さく見えたり、逆に見えたりする鏡の見世物です。
こういったものも人気だったんですね。
第2章終わった後の階段下で体験できました。

「西洋婦人図鞘絵」
こちらはぐにゃっと曲がった人物の顔。
円筒状のものに移すとしっかりとした顔で見えるのです。
こういった遊びが江戸時代、すでにできることがすごい。
こちらも第2章終わった後の階段下で実際に投影したものが見れました。

以上になります。
勉強にもなったけど、なによりおもしろい展示でした。
楽しく見れます。



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