見てきました
東京ステーションギャラリー
会期は2014年3月21日から2014年5月6日。
今回の展示は"光風会100回展記念"
光風会は、明治45(1912)年、白馬会に出品していた7名の若い画家たちによって創立されました。
特別な主張を持たず、かくれた無名の花を自由に紹介する目的で活動していきます。
戦時中などを除いて、年1回の公募展を中心とする研究団体として活動。
初期には、白馬会の外光表現や明治浪漫主義を継承する同会の会員たちも出品しました。
また若手画家の出品も多く、若い画家の登竜門として、また中堅・ベテランの画家たちにとっては新しい試みの場として機能していきます。
今回は明治から昭和にかけての洋画壇を取り巻く状況を、光風会という団体の視点から見ています。
約80点の展示のうち、約半数は画家たちが10代から30代の時期の作品。
若き日の情熱を注いで制作された作品たち、まさに画家たちの青春の作品たちが展示されています。
《Ⅰ.白馬会から光風会へ (明治-大正初期)》
1896年、黒田清輝と久米桂一郎が中心となり結成した"白馬会"
年1回のペースで展覧会を開催し、画家を育成するため「白馬会研究所」を開設するなど明治期の洋画に新風を吹き込みましたが、1911(明治44)年、役割を果たしたとのことで解散。
その翌年、三宅克己、中澤弘光、山本森之助、小林鍾吉、岡野栄、跡見泰という白馬会の若手・中堅の画家たちに、デザイナーの杉浦非水を加えた7名が、黒田の賛同を得て光風会を結成。
1912年に第1回展が開催され、黒田も出品しています。
長原孝太郎「入道雲」
全裸の男性がもこもこした入道雲に腰掛けています。
全体的に明るくピンクが多用されたロココ的な色使いが印象的です。
久米桂一郎「林檎拾い」
ブルターニュ半島のプレハ島で制作されたもの。
1人は林檎のはいったカゴを持ち、もう1人はエプロンの裾に林檎を入れています。
玄関前の大きな木の下、人物の顔にも影が落ちています。
暖かい印象の作品。
黒田清輝「鉄砲百合」
今回のチラシにも使われている作品。
咲き誇る白い大きな花。
左上から明るい光が降り注ぎます。
中村勝治郎「川辺の夕暮」
黒田と親しく、白馬会の展示はすべて出品、また東京美術学校でも常に黒田をサポートしていた人物。
少ない筆致で川の動き、船の動きが表現されています。
静かな景色です。
岡田三郎助「五葉蔦」
団扇を手にした白い着物の女性。
柔らかな光を浴びて、女性の表情も明るく見えます。
暑さもしのげるような爽やかさ。
ビールや清涼飲料水のCMに使えそう。
白瀧幾之助「ロンドンテームズ河の霧」
まるでモネのよう。
遠くは霞みシルエットで描かれた景色。
光りだけがぽつりぽつりと見えています。
明るい色彩で幻想的な世界です。
和田英作「彦根内湖」
とても写実的。
奥に山、手前は湿地。
山際はピンクに色づき優しい光を感じます。
穏やかな景色です。
山本森之助「ポプラ」
山本は1点の作品を制作するにあたり同じ時間と同じ気候が揃わなければ筆をとらなかったそう。
黒田のスタイルを守り自然に忠実に描きました。
大きなポプラの木の立つ川岸。
雲の隙間から漏れる光が水面を照らすと同時に優しく影を作り出しています。
また隣には「波」
青と緑で表現された波は白いしぶきをあげています。
細かい筆致で丁寧に描かれていました。
南薫造「葡萄棚」
ルノワールのようでもあり、ゴーギャンの雰囲気もあります。
葡萄棚の下で髪を結う人。
色彩も鮮やかで南国的です。
斎藤豊作「夕映の流」
やや大きめの点描で川を中心とした景色が描かれています。
川の向こう岸には白い馬。
空は明るくその景色は川にも映し出されています。
丁寧に光をとらえた作品。
三宅克己「雨模様」「信州木崎湖の初夏」
明治時代に始まる水彩画流行の中心人物の一人。
水彩ってすごい、と思わずつぶやきたくなるほどの表現力。
小林鍾吉「少女像」
上半身裸の少女が屋外で座っています。
黒田やコランのよう。
この作品のモデルは小林の長女で新発見の作品だそう。
ここには杉浦非水の作品も展示されていました。
光風会立ち上げメンバーの中でただ一人、画家ではなかった非水。
三越呉服店図案部主任で当時すでに知られた存在だったそう。
初期光風会のポスターや目録のデザインを手がけていたそうです。
《Ⅱ.激動の時代 (大正~昭和初期)》
旧白馬会のメンバーの出品、新人賞を作るなど当初400程度の出品数があったそうです。
が、1916年の第4回展では169までに落ち込みます。
年の差あれど、1921年ごろまでは低迷しました。
その後1935年の新帝国美術院の発足にともなう混乱などがあり、新しい団体もできるなど美術界は大きく変わっていきました。
石井柏亭「並蔵」
コンテの素描に淡色と白のハイライトを加えただけの作品。
とはいえ、その描写力はすごい。
川端に並ぶ蔵とそれが映り込む水面。
ふとした瞬間がきれいに描かれています。
熊岡美彦「花」
セザンヌ的な作品。
百合の入った花瓶、水差しや果物が黒壇の台にのっています。
暗めのトーンで描かれていますが、その不思議な光景はリズミカルでもあり面白い作品。
寺内萬治郎「裸婦」
グレーのようなシンプルな背景に裸婦が描かれています。
シンプルな構図、色使いながら存在感ある作品。
大久保作次郎「揺藍」
こちらはルノワールのような作品。
草花が生い茂る中、椅子に座った着物の女性が揺りかごにのった赤ちゃんを眺めています。
光りの斑点がそこかしこを照らしています。
小磯良平「横臥裸婦」
1930年に光風会会員となりますが、帝選改組に反対し新制作派協会設立で退会しました。
ソファに横たわる裸婦。
キチンと描かれた作品。
光風会のなかでもアカデミックと評されていたそう。
猪熊弦一郎「青衣」
デフォルメされた表情が印象的な女性像。
灰色の背景に青い服が映えます。
猪熊さんといえば三越の包装紙。
三越の紙袋は刷新されましたが包装紙は変わらないと聞いて安心しました。笑
《Ⅲ.昭和の展開》
帝展改組の騒動は治まり。第1回文展が開催されるなどしますが、時代は戦争へと向かいます。
光風会は大きな組織だったため、戦争画の依頼もあったとか。
そういった時代の作品が展示されています。
鬼頭鍋三郎「黒椅子の少女」
モディリアーニのよう。
黒い椅子に腰かける女性。
やや粗めの筆致で描かかれています。
森田元子「女」
女性洋画家の先駆けとなった人です。
単純化されたフォルムが赤い輪郭線で強調されています。
力強い印象。
渡邉武夫「診察室の宮崎先生」
正確もにじみ出るかのような描写力。
穏やかながらもしっかり向き合ってくれそうな医者が描かれております。
背景の診察室の内部まできっちり描かれていました。
櫻田精一「東京駅」
伸びやかな線で震災前の東京駅を描いています。
レンガの建物、黒い車、街灯。。。
おしゃれでモダンな景色です。
國領經郎「砂の上の群像」
砂漠のようなところに立つ人々。
手前の4人は後ろ向きであったり前向きであったり。
謎の赤い球体を手にしていたり。。
シュルレアリスム、というか、写真家植田正治の世界観を絵画で表したようにも見えます。
寺島龍一「坐像」
こちらはビュフェのようなしゅっとした線が気になる作品。
椅子に座る女性が描かれていますが、幽霊のようにも見えてきます。
ちょっとベーコンっぽい印象もあるかな。
不思議な感じです。
以上になります。
"光風会"名前は知っていたけど活動や作家までは知らなかったため、近代洋画美術史を勉強できた気がします。
誰もが知っている作家から知らないけれど素晴らしい作品を描いた作家まで。
様々でとてもおもしろいです。
アクセスも東京駅ととても便利。
ぜひどうぞ。
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東京ステーションギャラリー
会期は2014年3月21日から2014年5月6日。
今回の展示は"光風会100回展記念"
光風会は、明治45(1912)年、白馬会に出品していた7名の若い画家たちによって創立されました。
特別な主張を持たず、かくれた無名の花を自由に紹介する目的で活動していきます。
戦時中などを除いて、年1回の公募展を中心とする研究団体として活動。
初期には、白馬会の外光表現や明治浪漫主義を継承する同会の会員たちも出品しました。
また若手画家の出品も多く、若い画家の登竜門として、また中堅・ベテランの画家たちにとっては新しい試みの場として機能していきます。
今回は明治から昭和にかけての洋画壇を取り巻く状況を、光風会という団体の視点から見ています。
約80点の展示のうち、約半数は画家たちが10代から30代の時期の作品。
若き日の情熱を注いで制作された作品たち、まさに画家たちの青春の作品たちが展示されています。
《Ⅰ.白馬会から光風会へ (明治-大正初期)》
1896年、黒田清輝と久米桂一郎が中心となり結成した"白馬会"
年1回のペースで展覧会を開催し、画家を育成するため「白馬会研究所」を開設するなど明治期の洋画に新風を吹き込みましたが、1911(明治44)年、役割を果たしたとのことで解散。
その翌年、三宅克己、中澤弘光、山本森之助、小林鍾吉、岡野栄、跡見泰という白馬会の若手・中堅の画家たちに、デザイナーの杉浦非水を加えた7名が、黒田の賛同を得て光風会を結成。
1912年に第1回展が開催され、黒田も出品しています。
長原孝太郎「入道雲」
全裸の男性がもこもこした入道雲に腰掛けています。
全体的に明るくピンクが多用されたロココ的な色使いが印象的です。
久米桂一郎「林檎拾い」
ブルターニュ半島のプレハ島で制作されたもの。
1人は林檎のはいったカゴを持ち、もう1人はエプロンの裾に林檎を入れています。
玄関前の大きな木の下、人物の顔にも影が落ちています。
暖かい印象の作品。
黒田清輝「鉄砲百合」
今回のチラシにも使われている作品。
咲き誇る白い大きな花。
左上から明るい光が降り注ぎます。
中村勝治郎「川辺の夕暮」
黒田と親しく、白馬会の展示はすべて出品、また東京美術学校でも常に黒田をサポートしていた人物。
少ない筆致で川の動き、船の動きが表現されています。
静かな景色です。
岡田三郎助「五葉蔦」
団扇を手にした白い着物の女性。
柔らかな光を浴びて、女性の表情も明るく見えます。
暑さもしのげるような爽やかさ。
ビールや清涼飲料水のCMに使えそう。
白瀧幾之助「ロンドンテームズ河の霧」
まるでモネのよう。
遠くは霞みシルエットで描かれた景色。
光りだけがぽつりぽつりと見えています。
明るい色彩で幻想的な世界です。
和田英作「彦根内湖」
とても写実的。
奥に山、手前は湿地。
山際はピンクに色づき優しい光を感じます。
穏やかな景色です。
山本森之助「ポプラ」
山本は1点の作品を制作するにあたり同じ時間と同じ気候が揃わなければ筆をとらなかったそう。
黒田のスタイルを守り自然に忠実に描きました。
大きなポプラの木の立つ川岸。
雲の隙間から漏れる光が水面を照らすと同時に優しく影を作り出しています。
また隣には「波」
青と緑で表現された波は白いしぶきをあげています。
細かい筆致で丁寧に描かれていました。
南薫造「葡萄棚」
ルノワールのようでもあり、ゴーギャンの雰囲気もあります。
葡萄棚の下で髪を結う人。
色彩も鮮やかで南国的です。
斎藤豊作「夕映の流」
やや大きめの点描で川を中心とした景色が描かれています。
川の向こう岸には白い馬。
空は明るくその景色は川にも映し出されています。
丁寧に光をとらえた作品。
三宅克己「雨模様」「信州木崎湖の初夏」
明治時代に始まる水彩画流行の中心人物の一人。
水彩ってすごい、と思わずつぶやきたくなるほどの表現力。
小林鍾吉「少女像」
上半身裸の少女が屋外で座っています。
黒田やコランのよう。
この作品のモデルは小林の長女で新発見の作品だそう。
ここには杉浦非水の作品も展示されていました。
光風会立ち上げメンバーの中でただ一人、画家ではなかった非水。
三越呉服店図案部主任で当時すでに知られた存在だったそう。
初期光風会のポスターや目録のデザインを手がけていたそうです。
《Ⅱ.激動の時代 (大正~昭和初期)》
旧白馬会のメンバーの出品、新人賞を作るなど当初400程度の出品数があったそうです。
が、1916年の第4回展では169までに落ち込みます。
年の差あれど、1921年ごろまでは低迷しました。
その後1935年の新帝国美術院の発足にともなう混乱などがあり、新しい団体もできるなど美術界は大きく変わっていきました。
石井柏亭「並蔵」
コンテの素描に淡色と白のハイライトを加えただけの作品。
とはいえ、その描写力はすごい。
川端に並ぶ蔵とそれが映り込む水面。
ふとした瞬間がきれいに描かれています。
熊岡美彦「花」
セザンヌ的な作品。
百合の入った花瓶、水差しや果物が黒壇の台にのっています。
暗めのトーンで描かれていますが、その不思議な光景はリズミカルでもあり面白い作品。
寺内萬治郎「裸婦」
グレーのようなシンプルな背景に裸婦が描かれています。
シンプルな構図、色使いながら存在感ある作品。
大久保作次郎「揺藍」
こちらはルノワールのような作品。
草花が生い茂る中、椅子に座った着物の女性が揺りかごにのった赤ちゃんを眺めています。
光りの斑点がそこかしこを照らしています。
小磯良平「横臥裸婦」
1930年に光風会会員となりますが、帝選改組に反対し新制作派協会設立で退会しました。
ソファに横たわる裸婦。
キチンと描かれた作品。
光風会のなかでもアカデミックと評されていたそう。
猪熊弦一郎「青衣」
デフォルメされた表情が印象的な女性像。
灰色の背景に青い服が映えます。
猪熊さんといえば三越の包装紙。
三越の紙袋は刷新されましたが包装紙は変わらないと聞いて安心しました。笑
《Ⅲ.昭和の展開》
帝展改組の騒動は治まり。第1回文展が開催されるなどしますが、時代は戦争へと向かいます。
光風会は大きな組織だったため、戦争画の依頼もあったとか。
そういった時代の作品が展示されています。
鬼頭鍋三郎「黒椅子の少女」
モディリアーニのよう。
黒い椅子に腰かける女性。
やや粗めの筆致で描かかれています。
森田元子「女」
女性洋画家の先駆けとなった人です。
単純化されたフォルムが赤い輪郭線で強調されています。
力強い印象。
渡邉武夫「診察室の宮崎先生」
正確もにじみ出るかのような描写力。
穏やかながらもしっかり向き合ってくれそうな医者が描かれております。
背景の診察室の内部まできっちり描かれていました。
櫻田精一「東京駅」
伸びやかな線で震災前の東京駅を描いています。
レンガの建物、黒い車、街灯。。。
おしゃれでモダンな景色です。
國領經郎「砂の上の群像」
砂漠のようなところに立つ人々。
手前の4人は後ろ向きであったり前向きであったり。
謎の赤い球体を手にしていたり。。
シュルレアリスム、というか、写真家植田正治の世界観を絵画で表したようにも見えます。
寺島龍一「坐像」
こちらはビュフェのようなしゅっとした線が気になる作品。
椅子に座る女性が描かれていますが、幽霊のようにも見えてきます。
ちょっとベーコンっぽい印象もあるかな。
不思議な感じです。
以上になります。
"光風会"名前は知っていたけど活動や作家までは知らなかったため、近代洋画美術史を勉強できた気がします。
誰もが知っている作家から知らないけれど素晴らしい作品を描いた作家まで。
様々でとてもおもしろいです。
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