RuN RiOt -marukoのお菓子な美術室-

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開館25周年記念 魅惑のニッポン木版画

2014-04-17 21:30:00 | 美術
見てきました

横浜美術館

会期は2014年3月1日から2014年5月25日。

今回は木版画。
木版画と言えば浮世絵がすぐに浮かびます。
江戸時代に登場し、瞬く間に人気となった浮世絵は"庶民の芸術"として定着。
この時代は人々の暮らしにより密着した千代紙や引き札なども木版で作られました。
大正時代には木版の強い表現力を生かした"創作版画"や浮世絵の繊細な線や鮮やかな色彩を受け継ぐ"新版画"が誕生。
木版ならではの柔らかい風合いと近代的なデザインが融合した本の表紙や絵封筒なども、人々の暮らしを彩りました。
そして日本の木版画は戦後、国際的な賞を受賞するなどしていきます。
横浜美術館では幕末から現代まで約1,600点に及ぶ木版画を所蔵しているそう。
今回はそこから約220点を展示。
年代順に眺めていくという今までの木版画の歴史がわかるような展示となっています。

《第1章:幕末・明治-生活を彩る木版画》
ここでは幕末から明治の木版画が展示されています。
千代紙やうちわ、引き札など生活の身近なものも木版画で刷られていた時代です。
江戸時代に町人文化として日本独自の発展を遂げた"浮世絵"
絵師、彫師、摺師とその分野のプロが分業で制作し、数々の名作を世に送り出しました。
その後、江戸の伝統を受け継ぐ浮世絵。
洋風表現を取り入れた新しい木版画。
時代の移り変わりとともに、木版画も変わっていきました。

まずは"生活の中の木版画"として熨斗やうちわ、千代紙などが展示されていました。
「京丸山御軽焼(袋)」「御徳用たび型(型紙)」は実用的です。
「千代紙(霞に桜と紅葉)」は色がとにかくきれい。
赤・青・ピンクの鮮やかさが目を惹きます。
装飾的でおしゃれ。
もったいなくて使えない気が…笑

歌川(豊原)国周「団扇絵 御好五色の内 松葉」
歌川房種「団扇絵 源氏俤」
身近に芸術品がある生活ってすごいですね。
これもうちわの骨組みがないとただの絵。
使ってこその芸術品。

「おばけかるた」
かっぱや提灯のおばけなどが描かれた作品。
現代の私たちにもおなじみ(!?)のおばけたちです。
こういった目に見えない存在が今も昔も同じ形で描かれていることがすごい。

歌川豊国(三代)「生月鯨太左エ門 当十八才」
とてつもなく大きな手形。
相撲取りの手形です。
いや、本当に大きくて私の2倍はあるんじゃないかと思ったほど。
実物大なんでしょうか…。

歌川(一勇斎)国芳「ほふづきづくし 夕立」
擬人化されたほおづきたちが突然の夕立に戸惑いあわてる様子が描かれています。
笠着る人、走る人など。。
その動きがまたおもしろくてかわいらしい。

歌川(五雲亭)貞秀「冨士山体内巡之図」
富士山の体内ってタイトルでもなかなか謎ですが。。
鍾乳洞の位置などが描かれているので地図的なものとしても使われていたのかな。

歌川国周「かべのむたかきいろいろ」
作品の中の壁に描かれているのは落書き風の似顔絵。
手前の男性が振り返って眺めています。
特徴をとらえていて面白い。

小林清親「高輪牛町朧月景」
幕末の浮世絵といったら清親。
なんていうか、その表現力に安心感あります。
画面左から右へ走る汽車。
暗い中、窓から漏れる明かりが明るい。
水面にもぼやけて映っています。
うん、美しい。

小林清親「両国花火之図」
船から花火を眺める人々。
奥は花火で明るいのですが、手前は逆光で人々はシルエットで表現されています。
提灯の赤が明るく闇に映えます。

井上安治「銀座商店夜景」
これは先日太田記念美術館でも見ました。
商店のまばゆいばかりの明かりが外に漏れています。

月岡(一魁斎)芳年「一魁随筆 西塔ノ鬼若丸」
鯉につかまり泳ぐ鬼若丸。
水の下の表現も素晴らしく、色彩も美しい作品。

月岡(大蘓)芳年「藤原保昌 月下弄笛図」
大きく丸い月が輝く夜。
すすきの野に立つのは笛を吹く藤原保昌とそれを狙う強盗。
月にかかる黒い雲の表現も素晴らしい。
風が吹き着物がたなびくさまなど劇的です。
これまでに何度も見ていますが、何度見ても美しい作品。

月岡(大蘓)芳年「風俗三十二相 けむさう 享和年間 内室之風俗」
これも何度も見ている作品。。
というか、浮世絵ってけっこう色々見てきているんだな~と実感しました。笑
煙が自分のほうに来て、顔をそむける女性の姿が描かれています。
女性にまとわりつく煙や女性の髪など繊細に描かれ、また色彩も美しい作品。

鈴木華邨「坪内逍遥著『桐一葉』 口絵(春陽堂)」
細く繊細な線で描かれた室内。
御簾の向こうの影まで美しく表現されています。
左下は本をめくるかのように文字が描かれているページが描かれています。

《第2章:大正から昭和-木版画の復活》
明治後期、石版印刷の普及により木版画は一時廃れます。
しかしムンク、ルドン、ビアズリーやカンディンスキーらが紹介されると、版画の表現力に着目する作家が現れます。
自画・自刻・自摺による芸術表現を目指した"創作版画"
版元・渡邊庄三郎による"大正新版画"
また、来日した外国人浮世絵師たちも活躍。
さらに竹久夢二や川上澄生が木版による雑誌の表紙や挿絵、便箋や千代紙などのデザインを手掛けました。

石井柏亭「木場」
これまでと一気に雰囲気が変わります。
水に浮かぶ木が表現されています。
空は青から赤へとグラデーション。
はっきりとした表現がされています。

長谷川潔「風(イェーツの詩に寄す)」
白と黒のコントラストが生かされています。
流れるように表現されていて、装飾的。
一気にデザインといった感じになってきました。

長谷川潔「ギメ美術館での杵屋佐吉演奏会プログラム」
空はくねくね、水面の影もくねくね。
静かで不思議な世界が描かれています。
ちょっぴりムンクや世紀末芸術を連想させます。

万鉄五郎「ねて居る人」
力強い線が印象的。
万の油彩と変わらない強さです。
女性の独特のポーズも。

勝平得之「雪国の市場」
豊かな色彩で雪降る景色が描かれています。
買い物する人々などの素朴な光景。

恩地考四朗「ダイビング」
水に飛び込む女性を下からの構図で描いた大胆でモダンな作品。
画面上方には飛び込む女性の胴体部。
左端に飛び込み台がちらりと見えます。
女性の胴体の下から雲が見えているため見上げていると分かるのですが、なんだか日差しの眩しさまでも感じられます。

関野準一郎「ビールグラスの中のカエル『一木集Ⅲ』より」
第二次大戦中の創作版画。
大戦中は材料も配給制になるなどし、芸術家たちは思うような活動ができなかった時代。
が、それでも芸術の探求は続き、研究会の発足や版画集の出版などの活動がされました。
これらは戦後に繋がっていきます。
この作品はテーブルの上に置かれたビールグラスの中にいるカエルを描いたもの。
落ち着いた色彩でまとめられています。
グラスの影が夏の強い日差しを感じさせます。
世が大戦中とは思えない素晴らしい作品です。

恩地考四朗「東京駅『東京回顧図会』より」
平塚運一「数寄屋橋『東京回顧図会』より」
このあたりはノスタルジックな雰囲気のある作品。
レンガの東京駅など今の東京駅も連想できます。

竹下夢二「千代紙(水玉赤)」
竹下夢二「千代紙 大椿」
少女たちのあこがれを描いた夢二。
夢二は1914(大正3)年、日本橋呉服町に"港屋絵草子店"という夢二のデザインした日常生活の品々を扱う店を開きました。
夢二デザインの品々を身に着けたり、便りに用いたりすることは、まさに女性の憧れの的。
ここで展示されていたものたちも、おしゃれでモダンでロマンチック。
今使ってもいいなぁと思うものばかりでした。

エミール・オルリック「日本の絵師」「日本の彫師」「日本の摺師」
このあたりには外国人の作品が。
これは日本の絵師、彫師、摺師それぞれの作業しているところを描いたもの。
日本人には当たり前の光景のため、作業風景を残すことはしなかったでしょう。
これは作品としてはもちろん、当時の作業風景を知るという意味でもおもしろい作品です。

ヘレン・ハイド「かたこと」
この作品が素晴らしいのです。
横長の楕円形の画面に赤ちゃんを抱いた和服の母親が描かれています。
背景には藤や水仙の描かれた襖が。
色彩や温かなまなざしは外国人女性だから表現できたのかもしれない…。
美しき日本、です。
おなじく「亀戸天神の太鼓橋」は手前に藤の花が大きく垂れています。
その後ろには橋を渡る子供たち。
浮世絵などでおなじみの景色ですが、大胆でおもしろい作品です。

バーサ・ラム「雪の玉」
雪の玉を転がして遊ぶ子供たちが描かれています。
とても日本的です。
"日本昔話"あたりに使われていそうなモチーフ。
その一方で「海の精」はビアズリーなどを連想させます。
着物の女が丸い玉を手に波間に立っています。
細く繊細な線で描かれ幻想的。

チャールズ・バートレット「精進湖よりみたる冨士」
富士も古来より描かれてきたモチーフですが、この作品も素晴らしい。
鳥肌ものです。
太陽に照らされる富士山。
日本人の見ている、そして心の景色が見事に表現されています。
また「横浜磯子」も素晴らしい。
空には三日月が浮かび、そのもとで働く農夫たち。
海には船が浮かんでいます。
なんとも美しい景色です。

川瀬巴水「東京十二題 雪に暮るる寺島村」
巴水はやっぱりどれも美しい。
雪夜の街。
家の明かりや傘さして歩く人などどれも印象的。
雪夜の静けさが感じられます。

山村耕花「奉祝の夜」
暗い空に打ちあがる花火。
家々を照らす様子が幻想的です。

山村耕花「踊り 上海ニューカルトン所見」
これは江戸東京博物館「大浮世絵展」でも見ています。
華やかで色っぽい。
樋口五葉「髪梳ける女」「化粧の女」
こちらも「大浮世絵展」やほかの展示でも見ています。

吉田博「タジマハルの朝霧(第五)」「タジマハルの夜(第六)」
インドのタージマハルを朝と夜、描いています。
同じ景色を同じ位置、同じ角度でとらえているのですが、光の表現、水面に映る景色などの微妙な違いがうまく描き分けられています。

西沢笛畝「黄昏の日本橋『大正震火災木版画集』」
震災後の日本橋です。
垂れ下がった電線や燃える炎などすごい描写力。

伊藤深水「涼み「新美人中に姿」より」
欄干に肘をかけ景色を眺める女性の後ろ姿。
薄い着物で透けて見える肌の白さが美しい。

《第3章:1950年代以降-国際的な舞台へ》
戦後、日本の木版画は国際的な舞台へと活動の場を広げていきます。
1951年に斎藤清がサンパウロ・ビエンナーレで日本人賞を受賞したのを始めとし、棟方志功や吉田穂高らの独創的な版画が国際展で脚光を浴びます。
版画熱は急速な高まりをみせ、また新しい表現も多くなっていきます。

初山滋「コウノトリ(仮称)」
紫の背景に緑色の鳥。
口には子供の入ったカゴを咥えています。
ファンタジーのような作品。

棟方志功「華狩頌」
馬上で狩りをする人と猟犬を描いたもの。
日本的なのですが、どこかオリエンタルな雰囲気のある作品。

エマ・ボーマン「東京、出初式」
二重橋前で行われている出初式。
とても細かく日本的。
手前の人々はシルエットで表現されています。

ポール・ジャクレー「北風、韓国」「黒い蓮華、中国」
版画でここまでできるのかーと思います。
すごく色がきれい。
表現も繊細です。

星襄一「無題」
月夜の水辺。
銀背景に描かれています。
情緒ある風景です。

北岡文雄「スワンハウス(Atlanta)」
美しい緑の中に立つ白い家。
色彩のコントラストも美しい。

馬淵聖「白い卓」
瓶に入ったユリなどの花。
テーブルの上のリンゴなど静物画です。
抑えた色彩で描かれています。

吉田千鶴子「献花」
落ちる白い花が描かれた幻想的な作品。
同じく「谷間の蝶」は画面いっぱいに描かれた蝶が舞っています。
こちらも神秘的な色彩も相まって幻想的です。

小林敬生「蘇生の刻-群舞93.3-」
かなり大きな作品です。
4つに分けられた場面にビル群が描かれ、植物や動物、昆虫がそこに絡み合っていきます。
細い線で詳細に描かれ、不思議な作品。

田嶋宏行「コンポジション ム」
描かれているのは木の板。
その隙間から青い色がのぞいています。
建物から外を見るような感じ。
その青い景色が気になります。

《第4章:現代-新たな木版画の表現へ》
さて、現代になります。
2000年代以降のアーティストたちの作品です。
コンテンポラリーアートの舞台でも木版画が使われるなどし、新しい表現を続けています。

会場の途中では吉田亜世美の、木版画を用いたインスタレーション「YEDOENSIS-divine」がありました。
はらはらと落ちる桜の花びらが幻想的でした。

風間サチコ「「平成博2010」シリーズより」
諷刺ですね。
様々なものを取り上げていましたが、飛行機の影が映るツインタワーに腰掛けて電話をかけるブッシュとか、なかなか似ていて面白い。

湯浅克俊「0から255」
木版画にデジタル写真を合わせたもの。
画像をコンピューターでピクセルに解体。
23の諧調に摺り分けた5×5cmの木版画の紙片、12,000枚で構成されています。
なお0は黒で255は白だそう。
競馬のレースで落馬した瞬間を描いていますが近くではよくわかりません。
少し離れるとそのイメージが見えてきます。
そしてかなり大きい作品です。

以上になります。
木版画のみをこれだけ見る展示もそうそうない。
これまでの遍歴もおもしろかった。
どのようにその表現が辿ってきたのかが分かりやすいです。
まさに"魅惑"
おすすめです。



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