見てきました
東京国立近代美術館
会期は2014年6月20日から2014年8月24日。
まず。
なんてすごいチラシなんだろう。
近代美術館、思い切ったな、というのが感想。笑
最初にこのチラシを見たときにびっくりしました。
そして展示の名前も。
「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」
え!?どうゆうこと!??
意味がちょっとわからない……
ただ。
とにかくなんかすごい展示っぽい。
そして私好みっぽい。笑
見に行かねば!!
そして行ってきました!!

こんな作品がお出迎え。
マーク・クイン「神話(スフィンクス)」
いや、この展示、最高に楽しいかもしれない。
そんな期待を持たせてくれるフォルムです。
さて、今回の展示は「ヤゲオ財団」のコレクションからとなります。
ヤゲオ財団は台湾資本の電子部品メーカー、ヤゲオ・コーポレーションのCEOを務めるピエール・チェン氏、その家族、およびヤゲオ・コーポレーションからの寄付金によって創立された非営利の組織。
外国の有名な美術専門誌でここ二年間、世界トップ10にランクインしているほどのコレクションです。
ここの特徴は西洋の近現代美術、そして中国の近現代美術をあわせて持っているということ。
コレクションの選定にかかわっているのはピエール・チェン氏。
学生時代からプログラミングのアルバイトをして貯めたお金でアート作品を買うほどのファンなんだとか。
その情熱の結果がこの壮大なコレクション。
今では「living with art」「art is accessible」というコンセプトの下、自宅やゲストハウスはもとより、オフィスの中にも作品を展示しているのだそう。
また、ヤゲオ財団が所有する作品の一部は、テートなど、世界的な美術館に寄託されてもいるそうです。
いや~、楽しみ!!
さっそく作品について。
《1.ミューズ》
マン・レイ「ジュリエット」
写真家として有名なマン・レイの絵画作品。
黄色い背景に赤と黒のドレス、紫の布を頭に巻いた女性が踊ってます。
不思議な雰囲気の作品。
2007年12月15日のサザビーズで491,250ユーロ(当時の為替で8,086万円)で落札された作品。
この作品はピエール・チェン氏の香港のバスルームに飾られているのだそう。
なお、東京の別邸のバスルームには中国の画家、サンユウの作品。
「アートとともに生きる」が実践されています。
で、バスルームって大丈夫!?って思ったあなた。
(私もだけど。笑)
当たり前ですが、湿気や水滴などちゃんと大丈夫なところに飾ってあるそうです。
絵を眺めながらの入浴って楽しそうだなぁ。。。
《2.ポップアート》
ロイ・リキテンスタイン「頭部 黄色と黒」
ショートヘアーの女性の頭部が黄色と黒で表現された作品。
リキテンスタインらしい明るさがあります。
アンディ・ウォーホル「自画像」
よく見る自画像。
銀色の髪を逆立てている有名なものです。
リキテンスタインやウォーホルなどのポップアートの有名どころも所有しているっていいなぁ。
ジョン・チェンバレン「カ・ドーロ」
青や金色に塗装された鉄の塊です。
「カ・ドーロ」とは"黄金の館"という意味。
ヴェネツィア、カナル・グランデに面して建つパラッツォ・サンタ・ソフィアの別名でもあります。
青は海、金色は夕日など、そこをイメージしているのかな。
私はこの奇妙な塊がかなり気に入りました。
《3.サンユウ(常玉)》
サンユウ(常玉)は本名 Chang Yu
1901年四川省生まれの画家です。
(1966年没)
日本ではほとんど知られておらず、検索してもヒットするのは中国語か英語のページ。
サンユウはモンパルナスに住んでいた画家で一生中国に帰ることなく、パリを終の棲家としました。
そんな彼の作品が近年、高額で落札されています。
日本円で5億円を越えることも。
絵がなかなか売れず苦しい時期もあったサンユウ。
このニュースをあちらの世界でどう思っているのかなぁ。
サンユウ(常玉)「蓮に白鶴」
大きな蓮の花が咲く池。
飛んでくる白鶴。
太い筆で縦に背景の色をつけています。
屏風のような印象。
水のところを白色で表現していて、この世のものではないような、不思議な印象を与えます。
この人の作品は、他のものを見ても、どことなくもの悲しいという感情を覚えました。
《4.中国の近代美術》
ユン・ジー / ジュ・ユアンジー(朱沅芷)「管理人小屋」
暖色系の温かみのある作品。
白い小屋の後ろにあるのは城かなぁ。
この章は中国の画家の作品になりますが、これがとてもおもしろいものでした。
チェン・チェンボー(陳澄波)「淡水」
2006年10月9日サザビーズ香港で34,840,000香港ドル(当時のレートで5億2260万円)で落札された作品。
作者のチェン・チェンボーは1926年の帝展にも入選したことのある画家。
2.28事件で処刑されなくなりました。
描かれているのは淡水河の河口にある港町。
優しい色彩で伸びやかに描かれています。
水の青、家々の屋根の色、美しい色彩です。
のんびりとした雰囲気とその人生を想うとなんだかぐっときました。
グォ・ボーチュアン(郭柏川)「紫禁城」
堂々たる姿の紫禁城。
赤と緑が美しい作品。
空は青からピンクへ変わっていき時間の流れを感じさせます。
ホワン・ミンチャン(黄銘昌)「向晩1」
なぜ、私はリアリズムに惹かれるのでしょうか。
草原が描かれた作品。
光の道が通り、風吹き抜けていきます。
その様子が目の前で起こっているかのように想像できる。
ホワン・ミンチャン(黄銘昌)「一方心田」
こちらも同じくリアリズムの作品。
夕暮れの水田、水が光の色を反射し、輝いています。
空は青からピンクへグラデーション。
細やかな筆遣いで描かれています。
なぜリアリズムに惹かれるのか。
そっくりに描くなら写真でいいじゃないか。
そうなんだけどさ。
そこに人の息遣いを、ありのままを伝えたいという気持ちを感じるよね。
スー・ウォンシェン(蘇旺伸)「川の桟橋」
斜め上から見下ろす大胆な構図。
おもしろくってその視線がいいな。
ポール・チアン(江賢二)
「春:永遠についての瞑想 01-10」
「夏:島についての夏の夢」
「秋:浄夜 01-11」
「冬:百年寺 01-07」
四季を扱った4枚の作品。
抽象画です。
春はポロックのようで夏はハートマークが飛んでいます。
秋は文字がたくさん入り、冬は黒地に仏様がいっぱい描かれています。
この冬がいい。大晦日の印象。
冬って年末年始を含むので、仏様とか神様について初もうでとかで考える期間があるよね。
なんだかそのことを思い出しました。
リウ・ウェイ「名づけうるものが明確であるというわけではない」
こちらも抽象画。
淡く優しい色彩。
クリーム色をベースにピンク、青、緑、厚めのマティエール。
さて。
ここで次に動くときに大変なことに気づきました。
「あれ!?時間足りない!???」
おまえ、何度目だよ!!ってのは勘弁してください。。。
最初に時間かけすぎた~。
ってわけでここからちょっとペース早めに見ていくことに。。。。。
《5.崇高》
マーク・ロコス「無題」
ロコスはなかなか文章にするのが難しい……
全体的にオレンジ色中央ちょっと上に濃いオレンジ色のラインがあって、下の方は薄いオレンジで。。
としか。。。
杉本博司「最後の晩餐」
レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」が題材。
蝋人形を使って、パンとワインの用意された晩餐が展開されています。
このあたりには「海景」も。
これがすごくすてきでした。
こんなにもいいものだったのか、と驚きの美しさ。
ゲルハルト・リヒター「抽象絵画」
2012年サザビーズのロンドン競売で、エリック・クラプトンが所有していた「アプストラクテス・ビルト(809-4)」が約2132万ポンド(約26億9000万円)で落札されニュースとなりました。
生存する画家の作品としては史上最高額です。
アブストラクト・ペインティングという技法で描かれたもの。
この財団、本当にすごいな。。。
《6.威厳》
ここはザオ・ウーキー特集となっていました。
ブリジストン美術館ぐらいしか見る機会のない、ザオ・ウーキーの作品をこれだけまとめて観れるとは。
色彩も美しく、特に青い色がすごく素敵でした。
《7.リアリティ》
トーマス・シュトゥルート「アルテ・ピナコテーク、自画像」
この章は写真です。
アルテ・ピナコテークはドイツにある国立美術館。
アルブレヒト・デューラーの「自画像」を有することでも知られています。
この作品はそのデューラーの「自画像」見る青いスーツの男が撮られています。
すごく不思議。
自画像を見る人を見る私。
トーマス・シュトゥルート「トカマク型核融合炉(Asdex Upgrade)の内部2、マックス・プランク・プラズマ物理研究所、ガーヒンク」
ドイツ国内、最大規模の核融合実験施設を撮影したもの。
色がとてもいい。
アンドレアス・グルスキーの「カミオカンデ」みたいですね。
宇宙船の中みたいで不思議な空間です。
アンドレアス・グルスキー「V&R」
ヴィクター&ロハフのショーです。
実際撮られたものをデジタル画像処理し、一つの画面に再構築したもの。
モデルのポーズがほぼ一定で規律のあるところや華やかな色彩が面白い。
《8.記憶》
アンゼルム・キーファー「君の金色の髪マルガレーテ」
アンゼルム・キーファーは戦後ドイツを代表する画家。
この作品はパウル・ツェランの「死のフーガ」から着想を得たものだそう。
画面中央には金色の髪。
これは藁でできています。
その背景には太い黒い線。
不穏な影を感じます。
ゲオルク・バゼリッツ「イゴール」
あれ、向き間違えてない??と思ってしまう。。
なぜなら逆さになっているから。
描かれている景色は木々の間を歩く牛。
のどかな景色なのでしょう。
ただそれが逆さになっただけで、まったく雰囲気の違う不安感を与えるのですから驚きです。
ツァイ・グオチャン「葉公好龍」
作者は火薬を用いた作品制作(薬の爆発による絵画制作やパフォーマンス)や、中国文化に由来する物を使ったインスタレーションを多く手がける画家。
これはテート・モダンのための爆発プロジェクトのもので、ミレニアム・ブリッジからテートまで火薬で昇り龍を表現したものを絵画として残したもの。
木製パネルに火薬の跡がとてもおもしろい。
龍も迫力あります。
この「葉公好龍」
日本では馴染みのない言葉ですが、中国ではこども向けの絵本にも出てくるくらい有名な言葉だそう。
読みは「葉公、龍を好む」
葉公は龍が大好き。
家の中を龍の彫刻や絵で飾り付けていました。
それを天に住んでいた龍が聞きつけ、地上へ降り立ち、葉公の家へ。
それを見た葉公はびっくり。
気もそぞろで、あたふたするばかりでした。
というお話から。
「名を好むだけで実を好まないこと」を例える言葉だそう。
なるほど、いつか使えそう。。
《9.実在的状況》
フランシス・ベーコン「教皇のための習作VI」
2013年11月クリスティーズ・ニューヨークで「ルシアン・フロイドの三習作」が142,405,000ドル(当時のレートで142億4050万円)というとんでも価格で落札されたことも記憶に新しい。
そんなベーコンも持っているなんて……
ここまで見てきてお金がすごくあることは分かっていたけど、やっぱりすごい。
ピーター・ドイグ「カヌー・湖」
これ、すごく好き。
緑の中、湖に浮かぶカヌー。
爽やかだな~とおもってよく見たら、カヌーからだらりと手が。
それまでの爽やかさが一転、緑色の川や真っ黒な下方が不気味に見えてきます。
映画『13日の金曜日』の湖にボートを浮かべているシーンを描いているのだとか。
おぉ、その映画見たことない。。。
この作家の作品、他のも見てみたいなー。
《10.新しい美》
ジョン・カリン「叫び」
ロココ調のやさしい色彩で描かれている作品。
内容はやさしくありませんが。
ホセ=マリア・カーノ「WS100 小泉純一郎」
熱したワックスに絵を描く画家。
こんなところでソーリに出会うとは!!
この人の作品はどれもおもしろかった。
マーク・クイン「ミニチュアのヴィーナス」
外にあったものを想像していたため、小さい!!っていうのが最初の感想。
顔はモデルのケイト・モス。
ポーズはヨガのマイスターから作ったもの。
西洋の美であるケイト・モスが東洋の伝統的な美を表現するというなんとも不思議なもの。
マウリツィオ・カテラン「無題」
水色のキャンバスに「Z」の文字が切り込まれているもの。
快傑ゾロをモチーフにしているそうです。
とにかくかっこいい!!
ツェ・スーメイ(ジャン=ルウ・マジュールとのコラボレーション)「名人(川端康成に捧ぐ)」
ルクセンブルグ出身の女性作家。
川端康成の小説『名人』に触発されて作った写真作品です。
碁という文化をどのようにとらえたのか分かりませんが、白と黒と静けさに支配された作品からは、緊張感が漂います。
これも素敵です。
以上になります。
もっと時間に余裕を持てばよかった~。
とてもとても私好みの楽しい展示でした。
今まで知らなかった中国の画家なども面白かった。
これだけのコレクションを一代で集めるのはすごいの一言。
1つ1つの作品が美術館のマスターピースになりうる作品なのです。
この機会を逃したら見れない作品ばかり。
この夏おすすめの展示です!!
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