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毛糸編む季節

2018-11-29 07:00:00 | 編集手帳

11月4日 編集手帳

 

 編み物を完成させるのはどれほど大変か。
作家の長野まゆみさんが説いた一文がある。

図面の通り丁寧に編み目をひろってゆく根気、
手順に従う正確さが欠かせない。
電気回路のようにどこかで断絶していたら失敗だ。
<一ヵ所断線しただけで、
 ぜんぶ点(つ)かなくなった昔のクリスマスツリーの豆電灯を思い出す>と。

子育ての合間に。
介護をしながら。
わずかな時間を見つけつつ、
今日も一心に針を進めていることだろう。
宮城県気仙沼市からセーターやカーディガンを届ける「気仙沼ニッティング」はこれから繁忙期を迎える。
被災地支援として始まった取り組みが5年前、
会社創設へとつながった。
訓練を経て腕前を上げた地元の女性ら70人ほどが編み手を担う。

規格からほんの少しでもはみ出せば編み直しだ。
厳しい検品の後、
手書きのメッセージを添えて発送すると、
購入者からも度々便りが届く。
「友達とは違うし親戚未満? 
 不思議な間柄ですね」。
返信の文面に新たな回路の開通を実感し、
励みにする人も多いそうだ。

<毛糸編み来世も夫(つま)にかく編まん>(山口波津女)。
ぬくもりの恋しい季節が来た。


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