10月23日 国際報道2018
北極圏には豊富な天然資源があるとされ
世界でまだ開発されていない石油や天然ガスの22%が眠っているとされている。
これまで北極圏の開発は
沿岸国のアメリカ、カナダ、ロシア、ノルウェー、デンマークが中心となってきた。
そこへここ数年 新たに参入してきたのが中国である。
今年1月には初めて北極政策白書「氷上のシルクロード」を発表。
中国が掲げる「一帯一路」を北極圏にもあてはめ
資源開発などに積極的に関わっていく方針を打ち出した。
その中国が狙いをつけているのが
国土の大部分が北極圏に属するグリーンランドである。
グリーンランドはデンマーク領だが自治政府がある。
面積は217万㎢
日本の約6倍の面積がある世界最大の島だが
人口はわずか5万6,000ほど。
国土の80%以上が氷におおわれている。
その氷の下には希少資源のレアアースなど豊富な天然資源が眠っていることが確認されていて
中国はグリーンランドへの投資を加速している。
しかしこうした中国の急激な投資の拡大に
北極圏の国々からは懸念の声が上がっている。
10月
北極圏の活用策や課題を議論する国際会議「北極サークル」が
アイスランドのレイキャビクで開かれた。
6回目を迎える今回は
約60か国から各国政府や企業の関係者ら2,000人が参加。
温暖化の影響や経済開発などについて意見を交わした。
そのなかで開かれた中国主催の交流イベント “チャイナ・ナイト”。
中国の伝統舞踊や豪華な中国料理で参加者をもてなした。
ことし「氷上のシルクロード」構想を打ち出したばかりの中国は
参加者を前に
「一帯一路」の成果を強調。
北極圏にも広げたいと意欲を示した。
(中国外務省 高風特別代表)
「『一帯一路』に参加した国との貿易額は5兆ドルを超えました。
『氷上のシルクロード』構想はこれを北極圏にあてはめ
この地域に経済成長と社会的な発展をもたらそうというものです。」
22日には中国がアイスランドに資金を提供して建設した「オーロラ観測所」がオープンした。
中国はこうしたさまざまな分野での投資を北極圏の国々に対して行い
地域での存在感を高めている。
その中国がいま活発な動きを見せているのがデンマーク自治領グリーンランドである。
狙いはグリーンランドに眠る大量の天然資源とみられている。
すでに中国はグリーンランドの3か所でレアアースやウランなどの開発に投資している。
グリーンランド側も中国からの投資に前向きである。
デンマークからの独立を悲願とするグリーンランド。
しかし目立った産業がなく
行政予算の半分をデンマーク政府からの補助金に頼っている。
中国からの投資によって経済的に自立できれば
独立への道が開かれるとの思いが広がっている。
(グリーンランド アン・ロン・バガー外相)
「いま外国投資がたくさん入っています。
投資はグリーンランドがデンマークから経済的に独立する上で助けになります。」
しかしデンマーク側では中国からの投資拡大を懸念する動きが。
今年3月グリーンランド自治政府は島にある3つの空港の建設工事の入札で
最終候補の1つに中国の企業を選んだ。
この決定にデンマーク政府は
グリーンランドの中国への債務が膨らむとして懸念を表明。
自治政府への資金的強を約束して
事実上 中国企業の参入を阻止したのである。
「北極サークル」の会議でも中国の北極圏開発の行方を議論する討論会が開かれ
中国に対する懸念の声が聞かれた。
「中国は現地の学校に中国語や中国文化の授業を設けている。
世界中で目にする野心的な戦略があり
グリーンランドにも影響を与えるかもしれない。」
これに対し討論会に参加した中国の研究者は
中国政府の動きを擁護した。
(中国の研究者)
「中国の影響についての指摘ですが
進め方や役割が異なるだけで影響力はどの国にもあります。
中国は北極圏を含むすべての国をインフラで便利にさせ利益を提供しているのです。」
また「北極サークル」で登壇した中国外務省の高特別代表は
「氷上のシルクロード」では地域の国々と協議し判断を尊重すると強調し
警戒感を和らげようとしている。
(中国外務省 高風特別代表)
「グリーンランドでの問題について話を聞いたことはあるでしょう。
グリーンランドに投資できないなら
中国はほかの投資先をいくらでも見つけられます。
ここの未来を共有したいという中国の活動は止められません。
わかりますか?」